時事雑感(2026年5月号)



嶌峰 義清

イスラエルと米国によるイランへの空爆開始と、これに対抗したイランによるホルムズ海峡の封鎖、そしてそれが1ヶ月以上も続く事態を、昨年末の段階で誰が予想し得ただろうか。“一寸先は闇”で、先行きのことは誰にも分からないが、先々を予想して動くマーケットの関係者は、常に様々なリスクを想定する。そのいくつかのシナリオのうち、イランへの空爆が行われるリスクは数%の確率で予想されていたかもしれない。一方ホルムズ海峡が封鎖され、世界の原油供給が20%近くも減少する事態が生じる確率は更に低かっただろう。よって、それをメインシナリオとした投資家はいなかったのではないか。

このように、実現する確率が極めて低いと考えられるリスクを、市場では「テールリスク」と呼ぶ。それが現実のものとなった場合、市場は混乱に陥る。最近の例で言えば、ロシアのウクライナ侵攻(2022年)や新型コロナウイルス(2020年)がそれに当たる。金融市場から生じたものでいえば、リーマンショック(2008年)が有名だ。いずれも市場は大きく揺れ動き、大抵の場合は株価の急落を伴う。その嵐の中に踏み入れば、次に生じる事態を予測することさえ困難だ。市場は乱高下し、場合によっては一方的な暴落が繰り返し訪れる。

しかし、何年か後に振り返ってみれば、市場はやがて嵐を抜け出し、株価はテールリスク発生前の水準を超える。したがって、投資家は嵐に見舞われてもスタンスを崩さず、狼狽しないことが賢明だと言われる。特に、長期投資の観点から投資信託などを積立型で運用している投資家にこれが当てはまる。嵐は一部の銘柄や一時期には大きなダメージを与えるものの、長い目で見れば経済全体は成長していくと考えられるためだ。逆に、銘柄を絞り、短期投資を行う投資家には一攫千金のチャンスと同時に、多くを失うリスクもある。どちらを選ぶかは、運用目的や金銭的な余裕をみて投資家自身が判断すべきだ。

(嶌峰 義清)



嶌峰 義清

WACOCA: People, Life, Style.