
もし義母から「厳しすぎる母親だ」と言われたら、あなたならどうしますか?
今回は、しつけの価値観の違いではなく“話し合えない家族”に苦しんだ女性のエピソードをご紹介しましょう。
◆当たり前に子どもの健康を考えているのに
田辺美佳さん(仮名・35歳)は、義母が息子の純くん(仮名・4歳)を過度に甘やかすことに、長い間悩まされてきました。
「純はよく『ごはん食べたくない』とグズるのですが、それは好物のカップラーメンを食べたいだけで、しばらく放っておけば諦めて用意された食事を食べ始めるんですよ」
美佳さんは決して厳しすぎるしつけをしているつもりはありませんでした。成長期の子どもに必要な栄養、食事のリズム、そして空腹になれば食卓のごはんを食べるという基本的な習慣……いわば食育として当然守るべきラインを、大切にしていたそう。
ところが純くんは、母親でなく義母に「食べたい」と訴えれば簡単にカップラーメンが出てくることに気づき、次第に頻繁に“義母への泣き落とし”をするようになります。
◆「あなたが厳しすぎるのよ」自分だけが悪者に
「何度かは多めに見ていたのですが、義母に泣いて頼めば何でも食べられると思われてしまったら大変なので、ある日『ばあばがいいって言ってもダメ! ちゃんとごはん食べなさい』って言ったら、義母まで『好きなもの食べさせてあげればいいじゃない』と怒ってしまい息子と結託。私だけが悪者にされてしまったんですよね」
美佳さんは純くんの健康や将来を思って言っているだけでした。しかし義母は「孫に好かれたい」という気持ちを優先し、お菓子やココアなどの甘い飲み物も際限なく与え、母親としての方針を否定する行動を繰り返していったそう。
それでも美佳さんは、感情的にならず「純のためにも、何とか歩み寄れないか」と何度も話し合いを試みました。
「ですが義母は聞く耳を持たず『あなたが厳しすぎるから純くんが可哀想なのよ』『うちにいる時くらい好きなもの食べさせてあげたっていいでしょ』と、私のしつけ方をただただ否定するばかりでしたね」
◆話し合いすらできない……静かに孤立して
話し合いは成立せず、育児方針はそのたびに踏みにじられていきました。やがて純くんも、義母の前では美佳さんの言葉をまったく聞かなくなり、「ばあばがいいって言ったもん!」と泣けば欲しいものが手に入る環境ができあがってしまいます。
そんなある日の夕方、仕事から帰宅した美佳さんは、義母が純くんに夕飯前に大盛りのカップラーメンとチョコレートドリンクを与えている場面を目撃してしまいました。
「私が唖然としていると『純くん、お腹すいていたからついね〜』と悪びれもせず義母は笑っていました。その瞬間、私は怒りよりも胸の奥がストンと冷たくなるような絶望を感じたんですよね」
案の定、夕飯時になると純くんはひと口も食べず、野菜を見るなり泣き出して「ばあばがいい! ママのごはんいらない!」と叫んだそう。
「仕事から帰ってきた夫に状況を説明しても『まあまあ、母さんの気持ちもわかるし、そんなに怒ることでもないだろ?』と、スマホの画面を見ながら関心なさそうに答えられて……あぁこの家では私の言葉は誰にも届かないんだってやっと気がついたんですよ」
義母だけでなく、夫もまた話し合おうとせず、母親としての美佳さんの判断は軽視されてしまい……育児方針は何度も崩され、家庭の中で美佳さんは静かに孤立していったのです。
◆美佳さんが下した決断とは
そしてある夜中、眠っている純くんの寝顔を見つめながら、美佳さんは静かに荷物をまとめたそう。
「このままこの家にいたら、純の成長に悪い影響を与えるし、そして私自身も壊れてしまうと思ったんです」
翌朝早く、夫と義母が起きる前にタクシーを呼び、純くんを抱いて家を出ました。
「実家に到着すると、母親が心配そうに迎えてくれて『よく決断したね……しんどかったでしょう』と抱きしめられた瞬間、私はようやく声をあげて泣くことができました」
この問題の本質は、カップラーメンを食べさせたかどうかではありません。母親としての当然の判断と意思を、義母も夫も尊重せず、話し合いすら拒み続けたこと……それこそが、美佳さんを家から追い出す結果を招いてしまいました。あなたの声は、いまの家庭でちゃんと大切にされていますか?
<文・イラスト/鈴木詩子>
【鈴木詩子】
漫画家。『アックス』や奥様向け実話漫画誌を中心に活動中。好きなプロレスラーは棚橋弘至。著書『女ヒエラルキー底辺少女』(青林工藝舎)が映画化。Twitter:@skippop

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