引っ越し前日、義父が私たちの荷物に「バケツで水を浴びせた」理由。「俺を悲しませて嬉しいか」ってどういうこと?

「孫が生きがいだったのに」その一言から始まった、義父の止まらない感情の崩壊……。

 今回は、そんな修羅場を味わってしまった女性のエピソードをご紹介しましょう。

◆生まれてくる子どものために、義実家を出ようとしたら

 永田真希さん(仮名・31歳)は、夫の実家で義父と同居し、3人で暮らしていました。特に大きな衝突があったわけではありませんが、妊娠をきっかけに夫婦と子どもだけの生活へと舵を切る決断をすることに。

「妊娠5ヶ月になり落ち着いてきたし、今まで同居しながら貯めてきたお金で夫の通勤に便利な土地に引っ越して、子どもとの時間を増やしたいと思うようになったんです」

 将来的に義父を支える気持ちは変わらない。けれどまずは、新しく生まれる命を中心に、自分たちの家庭の土台を築きたい。それは夫婦で何度も話し合って出した前向きな結論でした。

「義父とはたまに喧嘩もありましたし、合わない部分もありましたが、まぁまぁ円満に暮らしてきました」

 だからこそ、別居を告げれば多少は寂しがるとしても、最終的には理解してくれるだろうと考えていたそう。

◆泣いて崩れ落ちた義父、そのわけは

 ですが夫婦の意思を伝えた瞬間、義父の表情はみるみる崩れ落ち、強い喪失感をむき出しにしました。

「『これから産まれてくる孫の世話をすることが生きがいになると思っていたのに……俺を悲しませることがそんなに嬉しいか?』と義父が泣きだしてしまって驚きました。慌てて私と夫で『いつでも孫に会いに来てくれていいし、孫を連れてこの家にもできるだけ遊びにくるから』とフォローしましたが、いじけてしまったまま機嫌は直りませんでしたね」

 孫の誕生を“自分の生きがい”と表現し、それを奪われた被害者のように涙を流す。そこには祝福よりも「自分の居場所を失う不安」が色濃く感じられたそう。

 その後、義父は被害者のような言葉を繰り返すようになり、話し合いは成り立たず、感情は次第に極端さを増していきました。

「義父は『自分は足手まといの邪魔者だから若いものだけで楽しく暮らせばいい』と言い、聞く耳を持たず塞ぎ込んでしまって」

 慰めれば慰めるほど「ほらやっぱり俺は不要なんだ」と言わんばかりに殻に閉じこもってしまい、理性的で強い人だと思っていた義父の姿はそこにはもうなかったそう。

◆引っ越し前日、義父がとんでもない行動に

「ですが夫が『きっと時間が経てば納得してくれるし、僕たちを応援してくれるよ』と言うので、引っ越しは予定通り決行することにしたんですよ」

 ところが、義実家の張りつめた空気は引っ越し前日に破裂してしまいました。沈黙を保っていた義父が突然取り乱し、まとめられた荷物にバケツで水を浴びせるという衝撃的な行動に出たのです。段ボールはぐしゃりと崩れ、衣類や書類は水浸し。それは言葉ではなく明確な攻撃でした。

「夫が羽交締めにして止めたんですが、義父は『もう二度とこの家に来るな! お前らがどこに行こうと知ったこっちゃない!』とブチ切れて、そのまま家を飛び出してしまったんですよ」

 そして、妊婦の真希さんが水浸しの部屋を片付け、夫は義父を探し回る羽目に。

◆私は冷たい人間でしょうか?

「結局、義父を行きつけのお蕎麦屋で見つけ、夫がなだめて連れて義実家に帰り、その晩はそのまま泊まってあげていました。その後も頻繁に泊まりに行って、なんとか機嫌を直してもらおうとしているんです」

「二度と来るな」と叫んでおきながら、息子がそばにいれば安心した顔を見せる。義父の感情は落ち着かないまま、周囲を巻き込みながら制御を失っていきました。

「もしかしたら義父はもうひとり暮らしは無理なのかもしれない……とまた夫婦で話し合っています。夫の言っていた通りにいずれ納得してくれて、私たちを応援してくれたら嬉しいのですが」

 義父の顔を頻繁に見に行きながら様子を見ているものの、不安感は増すばかりだそう。

「義父のことは心配ですが、自分の家庭も大切にしたいという、2つの思いの間で静かに揺れ続けている状態です。私って冷たい人間でしょうか?」とため息をつく真希さんなのでした。
<文・イラスト/鈴木詩子>

【鈴木詩子】
漫画家。『アックス』や奥様向け実話漫画誌を中心に活動中。好きなプロレスラーは棚橋弘至。著書『女ヒエラルキー底辺少女』(青林工藝舎)が映画化。Twitter:@skippop

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