新年度がスタートし、社会保障の制度が変わりました。社会全体で子育てを応援するための保険料徴収が始まります。高齢者の就労を後押しする年金の見直しもあります。ポイントを紹介します。(糸魚川千尋、野島正徳)
保険料 全世代と企業が負担
上乗せ徴収
徴収が始まるのは「子ども・子育て支援金」で、子育てにかかる費用の一部を、全世代の国民と企業が負担する仕組みだ。少子化が深刻化する中、希望する人が子どもを持ち、安心して子育てできる環境を作る狙いがある。
支援金は、公的医療保険の保険料に上乗せする形で徴収される。負担額は、国民健康保険や後期高齢者医療制度など加入する医療保険の種類や年収によって異なる。
健康保険組合など、会社員や公務員らが入る「被用者保険」の場合、被保険者1人あたりの平均は月500円で、年収が多い人ほど高い。年収400万円で384円、800万円で767円、1000万円で959円となる。4月分が、5月の給与から天引きされる。保険料は労使折半で負担するため、企業も従業員と同額を納める。
「誰でも通園」
支援金の使い道は、▽児童手当の拡充▽妊産婦に計10万円の給付▽夫婦で育児休業を取得した場合に手取りを10割相当に引き上げる給付――など子育て世帯の金銭的な負担を軽減するための事業費だ。児童手当は親の所得制限が撤廃された上、支給期間が18歳になった年度末までに延びている。
親が就労していなくても保育所などを時間単位で利用できる「こども誰でも通園制度」の運営費にも使われる。2025年度は自治体が任意で取り組んでいたため、利用できる自治体が限られたが、4月から全国で利用できる。対象は、生後6か月~3歳未満で保育所などに通っていない未就園児。
栃木県栃木市の認定こども園「さくら」で、次男(1)を預けていた関口理恵さん(34)は「同世代の子と遊ばせることで、子どもの社会性が身についた」と喜ぶ。
政府は23年に決定した「こども未来戦略」の加速化プランに、こうした施策を盛り込んだ。若年人口が急激に減少する30年代に入るまでが、少子化傾向を反転できる「ラストチャンス」だとし、28年度までに約3・6兆円の財源を確保する。支援金で一部を賄う計画で、26年度は約6000億円を集める。支援金を段階的に引き上げ、28年度は約1兆円を集める。
一方、政府は、薬代などの「薬価」の引き下げや、医療費が高額になった場合に患者の自己負担を抑える「高額療養費制度」の見直しなどを通じて、医療保険などの保険料負担を軽減したいとする。
在職老齢年金 見直し恩恵20万人
65歳以上で厚生年金を受け取りながら働く人は、給与と年金の合計額が一定額(基準額)を超えると年金が減額される。「在職老齢年金」という仕組みによるものだ。シニアの働く意欲を損なわないよう基準額が今月引き上げられ、年金を全額受け取れる人が増える。
具体的には、賞与を含めた給与の月額と、基礎年金を除く厚生年金(報酬比例部分)の月額の合計が基準額を超えた場合、超過した分の半額の年金が支給されない。基準額は51万円だったが、65万円に改正された。
例えば、給与45万円と厚生年金10万円の計55万円の人は、これまでは基準額(51万円)を4万円超えていたため、年金は半額の2万円が減額された。実際の収入は53万円だった。
今月からは、基準額(65万円)を超えないため、年金は本来の10万円のままで、実際の収入も55万円になる。減額を心配せずにより多く働けるようになった。6月15日に振り込まれる「4、5月分」の年金から適用される。
厚生労働省によると、65歳以上で働く年金受給者は約308万人(2022年度末時点)。このうち約50万人が減額の対象だった。今回の改正で約20万人が対象から外れ、全額を受給できる。
(2026年4月4日付の読売新聞朝刊に掲載された記事です)




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