TikTok Shopは単なる販売網ではなく、ライブ配信などを活用しブランド全体の売上を底上げする強力なマーケティングチャネルだ
プラットフォームの独自ルールに従い高評価を得ることが、アルゴリズムによる優先的な露出と優れた消費者体験の提供に直結する
現在は手頃な価格帯の商品が中心だが、今後は平均購入額が上昇し、より多くの高級ブランドも参入していくことが予想される
フレグランスブランド、スニフ(Snif)の共同創業者でCEOを務めるブライアン・エドワーズ氏にとって、TikTok Shopヘの参入は単なる選択肢ではなく、必然だった。
「TikTok Shopを活用しなければ、取り残されることになる」とエドワーズ氏は指摘し、「私にとってTikTok Shopは、低コストで多くのリターンを得る、ネット上に残る最後の絶好の機会だ。10年前のFacebookをほうふつとさせる」と付け加えた。エドワーズ氏は2025年、スニフによるTikTok Shop参入を実現した人物だ。
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TikTok Shopでの展開から約9カ月後の3月10日、スニフは1日の過去最高売上を記録した──メガインフルエンサーのミケイラ・ノゲイラ氏が、スニフと共同開発の香水「オンリー・サンシャイン(Only Sunshine)」宣伝のために実施した、4時間のライブ配信のおかげだ。スニフによると、同ライブ配信ではユニーク視聴者数100万人超を数え、売上高が40万ドル(約6390万円)を超えた。結果、スニフはTikTokでトップのフレグランスブランドになり、TikTok Shopでの順位が635ランク急上昇した結果、世界全体で96位のブランドとなった。
フォロワー数1700万人を誇るノゲイラ氏とのライブ配信は、同プラットフォームにおける成功の極みだろう。しかし、TikTok Shopで成功を収めたフレグランスブランドはスニフだけではない。eコマース分析会社のチャーム・アイオー(Charm.io)のデータによれば、TikTok Shopにおける2025年のフレグランス製品売上は1億6200万ドル(約258億円)を超えた。
視覚以上の物語性がカギ。クリエイターとの協業が生む価値
「2年以上前、オンラインだと香りを直接確認できないフレグランスが売れるかどうか、確信を持てなかった。しかし完全に可能だと判明した。なぜならフレグランスは視覚的な変化以上に、物語性が重要だからだ」と、TikTok Shop美容部門ゼネラルマネージャーを務めるアジェイ・サルペカル氏は説明する。同氏によれば、フレグランス関連コンテンツ視聴者の60%を男性が占める一方、TikTok Shopでフレグランスを購入する人の75%は女性。また同プラットフォームにおけるフレグランスユーザーのうち、ライブ配信を通じて購入した経験を持つ人は76%に及ぶことから、ライブ配信はフレグランス製品にとって、成長中のチャンネルだとサルペカル氏は指摘した。
サルペカル氏は、「各ブランドが新作フレグランス発表の場として、TikTok Shopを利用する傾向が強まっている」とし、「スニフと(インフルエンサーの)ミケイラ氏によるコラボレーションのような、明確な形であれ、クリエイターのライブ配信やショート動画に集まるユーザーのコメントから着想を得たものであれ、フレグランスの技術革新・香り・特徴の多くは、クリエイターとの共同作業から生まれる。各ブランドが注目するのはその点だ」と付け加えた。
ライブ配信を通じた買い物は、中国などの市場ではすでに定着した手法だが、北米の多くの消費者にとってはなじみが薄い。しかしサルペカル氏によると、TikTokは四半期ごとに実施する「TikTok Shop Beauty Besties」のようなプログラムを通じて、ライブ配信とショートコンテンツ双方を作成可能なクリエイターと、ブランド側との橋渡しを後押ししている。
「四半期に1度、トップブランドと将来性のあるクリエイターを集め、特定のキャンペーンで取り上げる予定の商品や新製品について、マッチングを行っている」とサルペカル氏は言う。「こうした機会を通じ、クリエイターとブランド側とのあいだに関係性が生まれ、ショート動画であれライブ配信であれ、魅力的なコンテンツに結実する」。
販売チャネルではなくマーケティングの要として活用
スニフCEOのエドワーズ氏によると、TikTok Shopにおける同社の活動は収益性が高く、同プラットフォーム上の業務を統括するマネジャーを自社内に置くほどである。ただ同氏はプラットフォームの価値について、単なる販売促進の原動力にとどまらないと語る。
「当社はTikTok Shopを販売チャネルではなく、マーケティングチャネルと位置付けている」とエドワーズ氏は語り、「収益も生むが、本当の価値は、もっとも重要な美容小売であるアルタ・ビューティー(Ulta Beauty)をはじめ、当社のあらゆる販売チャネル全体を底上げしてくれる点にある」と付け加えた。
しかし同プラットフォームで活動するには、TikTokのルールに従う必要がある。エドワーズ氏によると、具体的には、ブランドの認知向上を狙って、毎月何千個もの無料サンプルをクリエイターに配ったり、割引や販売促進のキャンペーンに参加したりすることなどが挙げられる。また企画費用は、ブランド側が捻出する場合もあれば、TikTok側が直接取り仕切る場合もある。TikTokの評価システムは、投稿傾向などの要素に基づき、コンテンツクリエイターを5段階でランク付けし、また注文処理の状況などに基づきTikTok Shopのストアフロントも評価する。こうした仕組みによって、ルールに従う者を優遇し、そうでない者を冷遇することが可能となる。
「発送に遅れが生じればスコアは減点され、アルゴリズムによる推奨順位が落ち、販売促進の選定対象としても優先順位が下がってしまう」とエドワーズ氏は語る。「だからこそ我々にとってこれは、完璧に態勢を整えて、優れた消費者体験を提供するために万全を期すよう促す動機付けとなっている。ストアフロントの順位が上がれば、より優先的に扱ってもらえる」と付け加えた。
アルゴリズムの評価を高めUGCの創出を加速させる
このような格付けが、消費者と売り手の双方のあいだに信頼と透明性をもたらすのが、エドワーズ氏の考えだ。またTikTok Shopの仕組みは、かつて長い時間を要したソーシャルコンテンツ制作の手間を省く効果がある。
「従来のコンテンツ制作の在り方を思い出してほしい。顧客がスニフを訪れ、自らお金を払って商品を買う。当社は製品を発送し、顧客がTikTokで我々に関するコンテンツを作ってくれるよう期待して待つものだった」とエドワーズ氏は語る。「(TikTok Shopを用いる)現在、彼らがブランドに関するコンテンツを作る可能性を高めることができる。なぜなら彼らは非常に意欲の高い、コンテンツクリエイター気質を持つ視聴者だからだ。結果的に一連の動きを加速させ、効果を何倍にも増幅させられる」。
フレグランスは美容分野においてもっとも高額なカテゴリーのひとつだが、TikTok Shopを席巻中のフラー(Phlur)、ラッタファ(Lattafa)、オクチャ(Oakcha)などのフレグランスブランドの多くが提供するのは、100ドル(約1万6000円)未満の商品だ。しかしTikTok Shopのサルペカル氏は、将来的に高級ブランドや有名ブランドが、より多く参入するだろうと自信を見せる。
「新しいプラットフォームにおいて、初期の急激な成長は、手頃な価格帯で起きるのが一般的だ。しかし我々が目の当たりにしているのは、より多くのブランドや消費者がこの場でフレグランスを売り買いすることに慣れるにつれ、平均購入額は四半期を追うごとに上昇し続ける状況だ」とサルペカル氏は語る。「いずれより多くの一流ブランドが新規参入し、最終的に高級フレグランスもTikTok Shopに参入すると確信している」。
大手小売も注目 プラットフォームとしての今後の可能性
もちろん、TikTokが運営を継続できればの話だ。米国におけるTikTokの先行き不透明な立場は、同プラットフォームに依存する大勢のコンテンツクリエイターに不安を与えた。Facebookの全盛期を知る者にとっては明らかだが、ソーシャルメディアのプラットフォームは決して盤石な存在ではない。それでもスニフのエドワーズ氏は、今後もTikTok Shopが定着し続けると確信している。そう考えるのは同氏だけではない。2026年3月にはスニフの主要小売パートナーであるアルタ・ビューティーが、同プラットフォームへの参入を表明し、TikTok側も独自物流拠点の設立計画を明らかにした。
「社会や米国文化において、TikTokがこれほど浸透している以上、当社はこれが消え去ることはないとの確信に基づき事業を展開していく」と、エドワーズ氏は語った。
[原文:Beauty Briefing: How fragrance is winning on TikTok Shop]
Emily Jensen(翻訳:竹内杭/ガリレオ、編集:京岡栄作)
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