妻として、母として、ひとりの女性として社会生活を営み、穏やかに微笑んでいる彼女たちの本当の苛立ち、あふれんばかりの悩みとは? 専門家の解説を元に、リアルな事象に切り込んでいく。それが『女たちの事件簿』
2026年の本屋大賞に朝井リョウ氏の『イン・ザ・メガチャーチ』が選ばれたことも記憶に新しい。この本で描かれているのは急成長を続ける日本の推し活市場、そしてストーリーによるファンダムの形成、それにまつわる人間模様だ。
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推し活は若年層を中心に広がり続けているが、実は中高年層にもその市場は大きく広がっている。財務省が公表している広報誌「ファイナンス」2025年11月号の特集によれば、推しの有無を尋ねる調査において、20代女性の66%、男性の53%が「有り」と回答。40代においても女性41%、男性30%という高い数字を記録している。
危機管理コンサルタントの平塚俊樹氏は、この現状を次のように分析する。
「推し活の対象は極めて多様化しており、二次元・三次元のアイドル、漫画、アニメ、YouTuber、VTuber、ゲームキャラクターなど多岐にわたります。特筆すべきは支出の構造です。アニメや漫画に比べ、アイドルの推し活は年間支出額が高くなる傾向にあります。これはコンテンツへの直接的な消費だけでなく、ライブ遠征に伴う交通費や宿泊費といった『間接コスト』が大きく影響していると考えられます」
今回取材したのは、そんな推し活に情熱を注ぐ40代の女性だ。金井菜摘さん(仮名・45歳)は、娘と共に人気アイドルのファンとなり、全国各地のライブへ足を運ぶことを生きがいにしている。
「推しができてから、人生が遥かに楽しくなりました。春から大学生になる娘と一緒に共通の趣味を楽しめるのは、何にも代えがたい思い出です。これからも二人で各地を回りたいと思っています」
先週末も、土日連続でライブに参加した菜摘さん。遠征費を抑えるため、移動には新幹線の自由席を利用することが多いという。
「推し活にはお金がかかりますから、移動費はなるべく節約して自由席を選びます。今回も東京発の始発に近い列車に並んで乗車し、娘と二人で並んで座ることができました。帰りも終電間際ということもあり、凄まじい混雑でした。うちわ、ペンラなど荷物も多かったんですけど、なんとか2人で並んで座れてホッとしていると…」
車内アナウンスでも「自由席は満席」と流れるなか、5歳ほどの少年を連れた母親が乗車してきた。親子は菜摘さんの娘が座る席のすぐ横、通路部分に陣取ったという。
「少年は『疲れた』と連呼していましたが、母親はスマートフォンに夢中で知らんぷり。そのうち、子どもが力尽きたのか、ドスンと床に座って、私の足元に足を放り投げたんです」
困惑したものの、車内の混雑状況を鑑み、菜摘さんは善意で黙認することにした。
「自分たちも疲れていたので、このまま寝てしまおうと思っていたのですが……」
しかし、床に座った少年は徐々に菜摘さんの足元を侵食し、ついに彼女の靴を土足で踏みつけた。菜摘さんはたまらず、穏やかに声をかけたという。
—すみません、ちょっと避けてもらえますか。
—混んでるんだから、しょうがないじゃないですか。
菜摘さんが注意したのを見た母親から返ってきたのは、謝罪ではなく突き放すような言葉。
「まずは『ごめんなさい』でしょ!と思わず言いそうになりました。さらにその母親は、私がイヤホンをしていて聞こえないと思ったのでしょう。小声で信じられない毒づきをしたんです」
—アイドルのライブ帰りのくせに。いい年した大人が、所詮、遊びじゃない…。
「あまりに身勝手な言い分に、苛立ちを通り越して悲しくなりました。せっかくのコンサートの余韻が、最悪な気分で上書きされてしまって……」
平塚氏はこう指摘する。
「推し活で生きる気力が湧いたという話は昨今、よく耳にします。誰かを応援するって、気持ちがいいですよね。誰に迷惑をかけるでもなく、ご自身のライフワークとして推し活を楽しむことを他者に否定される道理はありません」
菜摘さんが肩を落として語る悲劇は、これだけでは終わらなかった。その後、目的地までの約2時間、親子のマナーを欠いた振る舞いに翻弄されることとなる。
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※本記事で使用している写真はイメージです。 【取材協力】危機管理コンサルタント|平塚俊樹氏 【聞き手・文・編集】矢口頼子 PHOTO:Getty Images 【出典】財務省 広報誌「ファイナンス」2025年11月号
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