講演者
琉信ハウジング
城間泰 社長
「顧客満足の前に従業員の満足」
健康経営の実施 心身の安定維持
離職率は、会社の健康状態を見るバロメーターだと言われる。離職率を下げるために私が出した答えは「顧客満足の前に従業員の満足」というものだった。顧客をないがしろにするということではないが、私は社員がずっとここで働きたい、働くことが楽しいと感じられるような、そんな会社でなければ良いサービスは提供できないと考える。そのために三つの戦略を導入し、離職率は現在2%まで下がった。
まずは「健康経営」。これは社員の健康を会社の経営上の最重要課題として捉え、改善に取り組むというものだ。体制としては、役員、総務部門、それから各支店などの各所に「健康作り担当者」を配置し、定期的に会議を開催している。具体的な施策は、まず健康診断の再検査受診率を100%にするようフォローすること。それと毎月1回、スマートフォンなどで簡単に回答できるアンケートを実施。このアンケートでは、仕事に対する満足度、社内の人間関係、健康状態の3点について質問し、問題があるようなら面談で個別に対応する。また社員全員にスマートウォッチを配布し、1日の歩数や睡眠状況などを日々確認してもらう。ほかには、年3回のウオーキング大会やスポーツ大会、スポーツジムなどに通う人向けの運動促進手当の支給、セミナーやコミュニケーションイベントの開催など、日常生活で健康を意識できる環境づくりを心がけている。
どんなに優秀な社員でも、心と体の両方が元気でないと十分なパフォーマンスを発揮できない。社員が健康な状態を維持できれば生産性が上がり、組織の活性化にもつながる。
会場は満席となるほど関心の高いセミナーだった
カスハラ対策 録音・指針の導入
次に、カスタマーハラスメント(以下、カスハラ)への対応。カスハラは社員の心をむしばみ、離職の大きな原因になる。重要なのは、カスハラへの対応を社員一人に任せないこと。理不尽なクレームの対応を一人でしていると、社員が孤立してしまいかねない。離職者にヒアリングしたところ、クレーム対応やカスハラ対応に疲弊しているという理由が複数名から聞かれた。現場の管理職からの要望もあったため、本格的に対応することにした。
対策としてまず導入したのが、電話応対時の録音システム。それからカスハラ対応の指針やマニュアルの整備なども進め、社員研修を実施した。さらにスマホを使って簡単にカスハラの報告ができるシステムを導入し、報告者の上司だけでなく役員にも情報共有している。当社では、カスハラの事案が発生したらすぐに対策委員会を立ち上げて、方針について話し合い、対応を明確にして現場にも伝える。当社と合わないと判断したケースでは、管理解約をお願いしたこともあった。カスハラには毅然(きぜん)とした態度で対応し、会社として許さない。そのような方針で社員を守っている。
土日を定休日に 生産性向上に寄与
3つ目は、土日定休の導入。不動産業界では土日は稼ぎ時と言われるが、当社では社員の生活と満足度を優先に考え、業界の常識に挑戦した形だ。近年、土日は家族と過ごす時間や自分の時間にしたいという社員が増えており、働き方に対する価値感が変化している。実際、土日よりも平日のほうが忙しくなるため、土日に出勤して平日に振り替えで休むより、平日に集中して勤務するほうが、生産性の向上という観点から見ても良い。2025年5月から土日休日の完全週休2日制に移行したが、現在のところ問題はなく、もっと早く導入しておけば良かったと思う。
こういった取り組みにより離職率が下がり、人が辞めない会社、人材に選ばれる会社になっている実感がある。当社の取り組みをそのまま導入することはできないかもしれないが、一歩踏み出して変えていけば、必ず効果が出てくる。一歩踏み出すことをためらわないでほしい。
(2026年4月13日16面に掲載)
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