妻として、母として、ひとりの女性として社会生活を営み、穏やかに微笑んでいる彼女たちの本当の苛立ち、あふれんばかりの悩みとは? 専門家の解説を元に、リアルな事象に切り込んでいく。それが『女たちの事件簿』
厚生労働省が令和4年に公表した「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル」によれば、顧客からの著しい迷惑行為を経験した従業員のうち、コンビニ・スーパーなどの小売業は特に発生頻度が高い業種のひとつとして挙げられている。問題は、行為をおこなった当事者が「ハラスメントである」と認識していないケースが大多数を占める点だという。
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近藤美希さん(仮名・20歳)は、都内の住宅街にあるコンビニでアルバイトをしている。時間が有り余っているのか、1日に何度も顔を見せる高齢の常連客も珍しくないと話す。
「朝から『今日は何を食べた』だの『大谷さんが打った』だの、家族に話すような内容をレジで話していかれる方も非常に多いです。温厚な方ならニコニコとお聞きしますが、残念ながらそういう方ばかりではないんですよね……」
おしゃべりの相手をすることも業務のうちと割り切っている美希さんだが、先日「これって昭和の常識?」と思うようなトラブルを目にする。
70代後半の常連客Aさんは1000円札を手に、毎朝500mlのビール2本とタバコを1箱買いにやってくる。ほぼ皆勤の常連で、普段はプライベートブランド(PB)のビールを選んでいくそうだ。
「1000円出して小銭でお釣りが出る感じです。毎朝、その繰り返しでした」
ところがその日、Aさんは珍しくいつもより高い銘柄のビールを手にレジへやってきたという。
ー今日は知り合いが来るからよ。
「お客さんにはいいものを出したいんだな」と微笑ましく思った美希さんだったが、レジに金額が表示された瞬間、とんでもない言葉を耳にする。
ー122円、おまけしてくれんか?
いつも通り手には1000円札を握りしめており、それで足りない分の「122円」を値引きしろと要求。あまりの衝撃に固まってしまった美希さんを不思議そうに覗き込み、Aさんはさらに続けた。
ー俺、常連なんだし、それくらいどうにかなるやろ?
常連であることが値引きの根拠になる、という論理だ。
「全然よくないし!と思いましたが、顔には出さず『申し訳ありませんが、おまけすることはできかねます』と答えたんです。そうしたら……」
ー常連にこんな態度するなんて! 俺が毎日いくら使っていると思ってんだよ。少しくらいいいじゃないか。
引かないAさんを見かねた他のスタッフが店長を呼び出してくれたが、怒りは収まらない。
店長にも丁重に断られると、「クレームを入れてやる! もう二度と来ない!!!」と捨て台詞を吐いて店を出たという。
「これって昭和の常識なんですかね?スタッフはみんな心の中で『来ないでくれて結構! むしろありがとう』と思ったはずです」
危機管理コンサルタントの平塚俊樹氏は、こう助言します。「これは、昭和という、特定の世代への批判ではなく、かつての日本で重宝された『人情味のあるやり取り』と、デジタル化・マニュアル化が進んだ現代のシステムとの間に生じている、いわば構造的なミスマッチといえます」
しかし、美希さんが呆れ果てて、笑ってしまうようなトラブルはこれで終わりではなかった。コンビニには次なる「自己都合全開」の客が現れる。
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※本記事で使用している写真はイメージです。
【取材協力】危機管理コンサルタント|平塚俊樹氏 【聞き手・文・編集】
矢口頼子 PHOTO:Getty Images【出典】厚生労働省が令和4年に公表した「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル」
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