グリフィン・ジョンソン氏はTikTokでの発信を機に「スウェイ・ハウス」を設立し、Z世代への圧倒的な影響力を構築した。
単なる広告塔に留まらず、視聴数を売上に変える力を武器に投資家への助言やベンチャー設立を実現した。
飲料ブランドへの初期投資で巨額のリターンを得るなど、SNSの知見を投資戦略に直接活かしている。
2019年2月、グリフィン・ジョンソン氏は大学3年生で、看護を学びながら製鉄工場で働いていた。それから6年後、同氏はベンチャーファンドであるアニマル・キャピタル(Animal Capital)の共同創業者となっている。この歩みはほぼすべて、TikTokとそこで築いた人脈によるものだと同氏は語る。
ジョンソン氏は「学生生活への不満をこぼす」コンテンツでTikTokのフォロワーを増やしたと、Digidayに語っている(執筆時点でTikTokのフォロワーは950万人、インスタグラムでは300万人)。その後、プラットフォーム上で志を同じくする2人のクリエイターと出会い、共同で家を購入。2020年1月、今や悪名高いTikTokコンテンツハウス「スウェイ・ハウス(Sway House)」を立ち上げた。
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TikTokブームと「スウェイ・ハウス」の誕生
「我々の投資は報われた。というのも、その2カ月後に新型コロナウイルスが流行し、TikTokが急成長したからだ」とジョンソン氏は語る。「TikTokのクリエイターエコノミー、すべてがここから始まった」。
スウェイ・ハウスは、いわばTikTok版の学生寮のような存在だった。メンバー数人がダンスのトレンドに乗ったり、面白い音源に合わせて口パク動画を投稿するなどのコンテンツが中心で、近隣住民からは頻繁なフードデリバリーや、朝から響くペイントボール銃の発砲音、「一気飲みの掛け声」などが報告されていた。
キャリア初期(スウェイ・ハウスは2021年2月に正式解散)には、同グループはワーナー・ミュージック(Warner Music)やソニー(Sony)と契約を結んでいる。
「我々が踊る楽曲は何でもビルボードで1位になると、レコード会社側が気づいた」とジョンソン氏は語る。「そこから我々はCPG(消費財)にも展開した。コロナ禍で店舗に人が来られなかったし、TikTok Shopもまだ存在していなかったからだ」。
2020年には、当時5人組だったスウェイ・ハウスがリーボック(Reebok)と150万ドル(約2億2500万円)の契約を締結した。「我々はまだ子どもで、16歳くらいのメンバーもいたが、それぞれ30万ドル(約4500万円)を受け取っていた」。
クリエイターから投資家へ、広がるネットワーク
まだブランド側にとって未開拓だったソーシャルプラットフォーム上で、視聴数を売上に変換する力を証明したことで、スウェイ・ハウスのメンバーは音声SNS、クラブハウス(Clubhouse)の投資家向け限定チャットに招かれるようになった。そこでは、マスク家、マーク・キューバン氏、ベセニー・フランケル氏などの投資家に対し、Z世代に直接訴求する方法について助言を行っていた。
そして、クラブハウスの場が、ジョンソン氏のベンチャーキャピタル企業アニマル・キャピタルの基盤を築くきっかけとなった。同社は2021年に設立されている。
「ブランドは、我々のオーディエンスをどう自然に商品販売へとつなげるかについて、アドバイスを求めてきた」と同氏は語る。「そこで我々は、無料で答えるのはやめようと考え、アニマル・キャピタルを立ち上げた」。
その後、ジョンソン氏はクリエイター兼投資家となり、ソーシャルメディアを重視した炭酸飲料ブランド、ポッピ(Poppi)に初期段階で投資。同ブランドは2025年5月、ペプシコ(PepsiCo)に約20億ドル(約3000億円)で買収された。同氏は初期投資の「約250倍」のリターンを得たと語るが、詳細は明かしていない。
ジョンソン氏は、クリエイターのジョシュ・リチャーズ氏やノア・ベック氏、投資家のディラン・サンズ氏、マーシャル・サンドマン氏とともにアニマル・キャピタルを設立。同社はマーク・ウォールバーグ、ケビン・オレアリー、パリス・ヒルトン、ウサイン・ボルトなどの著名人とも協業してきた。
また、スヌープ・ドッグのプロダクト配置やブランド契約の設計を支援し、ワップ(Whop)やロブロックス(Roblox)にも投資している。なかでも、遺伝子工学およびバイオテクノロジー企業コロッサル・バイオサイエンシズ(Colossal Biosciences)に対し、1億ドル(約150億円)以上を調達したことを、同氏は特に誇りに感じている。
「我々の投資はほぼ3000倍になっている」と同氏は語るが、詳細は明かしていない。
コンテンツ戦略の進化
ジョンソン氏の最新の取り組みは、投資の知見とコンテンツ制作の経験を組み合わせたものだ。現在は競馬に関する認知拡大とエンゲージメント向上に取り組んでいる。
サンドマン氏は競馬業界に関わっており、自身の所有する競走馬についてSNS投稿を行う代わりに、ジョンソン氏に2.5%の持分を提供した。
「ダービーの1週間で約3億インプレッションを獲得した」とジョンソン氏は語る。Digidayに共有した調査によれば、同氏の動画は330万件のエンゲージメントと3500万回の再生を記録した。また、友人の名前にちなんで「サンドマン」と名付けられた競走馬が2025年のアーカンソーダービーで優勝し、同氏は2万ドル(約300万円)を獲得した。
現在、同氏の投稿の多くはサンドマンや馬主としての生活に関する内容となっている。投稿戦略については特に意識していないとしつつ、週に3回ほどコンテンツを発信しているとDigidayに語った。
さらに、アニマル・キャピタルを通じて投資したブレイクアウェイ・ミュージック・フェスティバル(Breakaway Music Festival)とのつながりを活用し、エナジードリンクブランドのセルシウス(Celsius)との長期的な広告契約も継続している。
「TikTokで培ったスキルは、いわば博士号レベルだ。今後の人生すべてに役立つだろう」と同氏は語っている。
[原文:How a ‘TikTok doctorate’ made 26-year-old Griffin Johnson a venture capitalist]
Alyssa Mercante(翻訳・編集:的野裕子)
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