子どもたちが作り上げた劇……!?

こんにちは。現役保育士のはるです。

保育園の発表会というと、保育士が舞台の脚本を作り、配役を決め、子どもたちはその通りに練習して、本番で演じる――そんな「完成された劇」を披露する園が主流でした。私が10年以上前に新卒で勤めた時も、全て保育士に決定権があり子どもたちに教える。発表会の流れはいつもそうでした。観る側としても、がんばった成果を見せる場というイメージが強かったかもしれません。

ところが最近は、「え、子どもたちで配役を決めた?」「小道具も自分たちで作ったの?」という発表会が増えてきています。劇の内容も、一般的な物語とは違うと感じることもあるのでは?

園の取り組み方によっては、「これでいいの?」「もう少しちゃんとさせてくれたらいいのに」と、モヤモヤしてしまう保護者の方もいるかもしれませんし、逆に「年長でここまで……!?」と驚くような発表をしている園もあります。

この数年、保育は一斉保育から「主体性保育」へと変わりつつあります。その方針に沿って、発表会の在り方も大きく変わりつつあるのです。

では、主体性保育って一体なんなのか? そして、発表会がどのように変わっているのか? 保育士の視点から、わかりやすくお伝えしていきます。


そもそも主体性保育とは?

「主体性を大切にしています」「子どもが主役の保育をしています」──

保育園やこども園の説明会などで、こうした言葉を聞く機会が増えてきました。でも実際、「それってどういう保育?」「子どもが好き勝手にしてるってこと?」と疑問に思う方も少なくありません。

発表会を例にしてみると、「配役が決まっていて、衣装もセリフもバッチリ」ではない姿を見ると、昔と違うなあと思われる方もいらっしゃるのではないでしょうか。もちろん、主体性保育を取り入れながら配役を決めて衣装もセリフもばっちりこなすという園もあり、一概には言えません。

ですが、従来の「大人が教え、子どもが従う」保育から、今は「子どもが自分で考え、選び、やってみる」保育へ。子ども自身の内側から育つ力を信じ、その芽を育てる関わりへとシフトしています。


子どもの自分でやってみたいを尊重する

主体性保育とは、「子どもたちが自分で考え、選び、やってみる」ことを大切にする保育の考え方です。

大人が一方的に教えたり、決めたりするのではなく、子どもの「これやってみたい!」という気持ちを尊重し、見守りながら育てていくのが大きな特徴です。以前は発表会で劇をやるとなった時に、保育士がそのクラスにあった物語を選んできて、子どもたちに「これを発表会でやるから練習します」と伝え、配役を決めてセリフを教えて練習する……という流れが一般的でした。

ですが最近は発表会で劇をする際も、そもそもやりたい劇の内容から配役やセリフ、登場人物のアイディアまで、子どもたち同士で出し合うような場面を作ることを意識しています。子どもたちで話し合いをする中で、どんな役が必要なのか、どんな小道具を作らなければならないのか、子どもたちが意見を出し合って進めていきます。もちろん子どもたちだけですべてが解決するわけではないため、要所要所で保育士がサポートしています。


教え込むのではなく「引き出す」「見守る」関わり方

上記で挙げたのは主に幼児クラス(特に年長児)のかかわり方ですが、2歳児や年少クラスでも、劇の在り方は少しずつ変わっています。

保育士が主導ではありますが、劇をただ大人だけで話し合って決めて教え込むのではなく、子どもたちが普段から親しんでいる絵本や、その1年で育てた植物などからヒントを得て、子どもたちが好きなことを大切にしながらひとつの発表を作り上げていきます。

その過程の中で、「みんなは何をやってみたい?」「これはどっちがいいと思う?」など子どもに問いかけ、子どもの意見を引き出していきます。これまでのように「先生が指示して、子どもが従う」のではなく、「子どもの中にある興味や思いを引き出し、寄り添っていく」ように関わっているのです。

幼児クラスでは子どもたちの対話を見守り、時には仲立ちしながら、考えるチャンスを与えたり、話し合いの土台を整える。ときには「ちょっとむずかしいかな?」という場面も、あえてすぐには手を出さず、どうやったらできるかを一緒に考えていく。

乳児クラスでは子どもたちの好きなものや興味関心を引き出し、その世界観にいかに没入できるか考える。「やりたい」という気持ちを育て、形にするまでの過程を丁寧に支えていく保育を大切にしています。


子ども主体の保育は、決して保育士が楽したい保育ではない

大人が作り込んだ完成度の高い劇を目指すことは実は簡単でもあります。

台本も既存のものがありますし、内容がすでに固まっているから小道具や大道具も予測が立てやすく、大人で工夫して作り上げてすぐに終えることができます。劇も子どもにセリフを教え込めばいいので、実は保育士の負担はそこまで重くありません。

一方で子ども自身が企画し、つくりあげた過程そのものを大切に考える主体性保育では、子どもの足並みがそろうまでにまず一苦労。一人が桃太郎がいい!と言って、別の子が金太郎が良いと言ったら両方でてきちゃったなんて話もたまに聞きます。そうなると保育士は大道具や小道具が締め切りまでに間に合うのかな?とスケジュール管理だけでも大変になるんですね。

それでも、衣装が子どもたちの手作りで形がいびつになったり、ストーリーがとんでもない展開になって結局なんだったの!?なんて劇が出来上がったりしても、「自分たちで作った!」という達成感や満足感が子どもたちにはしっかりと残ります。

今まで子どもたちを見てきて、自分たちで作ったという達成感を感じていると、顔つきがちがうなと思うことがありますし、私は発表会で子どもたちを見て毎年号泣しています(笑)。


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発表会の主役はだれなのか


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