手数料収入とユーザー基盤で稼ぐ独自ビジネスモデル、オンデバイスAIへ注力

小久保 重信

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2026.4.7(火)

パリのアップルストアに並べられた「iPhone 17 Pro」(3月27日、写真:REX/アフロ)

 生成AIブームに沸くテクノロジー業界において、米アップルの特異な立ち位置が浮き彫りになっている。

 同社は自前のAI戦略で出遅れが指摘されながらも、アプリ配信サービス「App Store(アップストア)」を介した手数料収入によって、2026年のAI関連売上高が10億ドル(約1600億円)を突破する見通しだ。

プラットフォームがもたらす実利

 3月中旬に公表された米調査会社アップマジック(AppMagic)の分析によると、2025年に生成AIアプリがアップルに支払った手数料は9億ドル(1440億円)近くに達した。

 その4分の3を米オープンAIの「Chat(チャット)GPT」が占めた。他社のサービスが普及するほど、プラットフォームを握るアップルに「通行料」が入る構造が鮮明となっている。

 同社のAI関連収入は2025年8月単月で、過去最高の1億ドル超を記録した。足元ではダウンロード件数の落ち着きも見られるが、年間10億ドルの大台到達は確実視されている。

 これは、デバイス販売の伸び悩みを補うサービス事業の重要な成長源である。

巨額投資を避ける「冷徹な賭け」

 特筆すべきは、競合他社との投資規模の圧倒的な差だ。

 米アマゾン・ドット・コムや米マイクロソフトなど「ハイパースケーラー(巨大クラウド事業者)」4社が、今年計7000億ドル(約110兆円)のAIインフラ投資を計画する一方、アップルの投資額は140億ドル(約2兆2300億円)にとどまる。

 この対照的な数字は、同社がAIの将来を冷静に見極めていることを意味すると、米ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)は報じている。

 アップルは、膨大な資金を投じてクラウド上の巨大モデルを構築する競争には参加していない。

 それに代えて、自社設計の「M5」チップと25億台に達したアクティブデバイス(稼働端末)の演算能力を、個々の端末で完結させる「オンデバイス型」基盤として活用する。

 M5チップは「混合エキスパート(MoE:Mixture of Experts)」技術により、オフラインでも高度な処理を可能にする。

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