

第14回「日本医師会 赤ひげ大賞」(日本医師会・産経新聞社主催、都道府県医師会協力、太陽生命保険特別協賛)の表彰式を3月5日、都内で開催し、多様な活動を通じて地域住民の健康保持などに尽力してきた5名の赤ひげ大賞受賞者と20名の赤ひげ功労賞受賞者の功績をたたえた。引き続いて行われたレセプションには、秋篠宮皇嗣同妃両殿下がご臨席され、受賞者らとの懇談が行われた。
本賞は、”現代の赤ひげ”とも言うべき、地域の医療現場で長年にわたり、健康を中心に住民の生活を支えている医師にスポットを当てて顕彰することを目的に、平成24年に創設したものである。
第11回より、赤ひげ大賞の選考に地域医療を志す医学生の視点を反映させることとし、今回は選考委員として京都大学と京都府立医科大学、徳島大学の医学生が参加した。
表彰式
表彰式の冒頭、主催者あいさつに立った松本吉郎会長は今回の受賞者について、「いずれもこれまでの受賞者と同様に、地道に、そして献身的に医療に従事されてきた方ばかりだ。医療を超えた患者さんとの信頼関係を築き、地域を守ってこられたことに敬意を表す」と述べ、受賞者に対して祝意を示した。
また、今回の赤ひげ大賞の特徴についても言及。「地域住民を守るために昼夜を問わず働き続けるかかりつけ医を始め、在宅での看取りや緩和ケアに取り組んだり、へき地医療や予防医療、多職種連携、被災者支援といった活動に尽力したりするなど、まさに地域医療の多様性を投影したものとなった」と述べた。50~90代と幅広い世代が受賞したことも特筆すべき点だとした上で、「今後も多様な視点から赤ひげ先生を選んでいきたい」と話した。
更に、わが国の高齢者数がピークに達する2040年に向けては「治す医療」だけでなく、「治し、支える医療」の重要性が高まることにも言及。「患者さんが住み慣れた地域でいつまでも健やかに暮らせるよう、医師は時代と共に変化する医療ニーズに柔軟に応えていく必要がある。日本医師会としても、引き続き本賞を通じてこうした医師の活動を顕彰し、支えることで地域医療の充実に寄与していく」と強調した。
その後、選考委員でもある黒瀨巌常任理事が、選考の経過として、昨年5月1日付で日本医師会より都道府県医師会宛てに推薦依頼文書を発出。その後、選考委員が「候補者推薦書」による事前審査を行い、その結果を基に11月13日の選考会で受賞者を決定した上で、本年1月7日に公表したことを報告した。
今回の選考については、「受賞された先生方は長年にわたり、地域住民の健康確保に親身に取り組んで来られた方々ばかりであり、選考には大変困難を伴ったが、受賞者には本賞にふさわしい方々を選考できたと考えている」と振り返った上で、本賞が各地域の医師の励みとなり、地域医療の更なる充実や後進の育成へとつながることに期待を寄せた。
表彰式では、5名の赤ひげ大賞受賞者の活躍をVTRでそれぞれ紹介した上で、松本会長が表彰状を、近藤哲司産経新聞社代表取締役社長がトロフィー並びに副賞を手渡し、各受賞者から謝辞が述べられた(内容については後掲の「大賞受賞者が喜びを語る」参照)。
続いて、赤ひげ功労賞の表彰に移り、20名の受賞者がスライドで紹介された後、代表して山梨県の長田忠大医師に松本会長から表彰状が授与された。
来賓祝辞では、日独電話首脳会談後に会場へ駆け付けた高市早苗内閣総理大臣が「皆様の受賞は全国で地域医療に携わっている医師の方々の大きな励みとなるものだ」と述べ、受賞者を祝福した。
更に、国民の生命と健康を守ることは重要な安全保障であることや、改正医療法が昨年末に成立したことに触れた上で、「入院だけでなく、外来や在宅医療、介護の連携を含む、新しい地域医療構想を策定し、併せて医師偏在対策を総合的に推進していく」との考えを示した。
「攻めの予防医療」の具体化にも言及した上で、健康寿命の延伸を図ることで、国民が元気に活躍し、社会保障制度を含めた社会の担い手となるように取り組んでいく姿勢を強調。「本日受賞された皆様のような取り組みが全国に広がり、国民一人一人が幸せを実感できる社会が創出されていくことを期待している。そのために私も力を尽くしていく」と訴えた。
閉会のあいさつで近藤産経新聞社社長は、団塊の世代が全て75歳以上の後期高齢者となる一方で、出生数は過去最少を更新するなど未曽有の時代にあるとし、「地域住民の命と暮らしを守るかかりつけ医の存在は日本にとってなくてはならないものであり、その重要性は以前にも増して高まっている」と指摘。今回の受賞者は「地域医療の模範となる方ばかりだ」と述べ、受賞者の志や実績に対して敬意を表した。
レセプション
引き続き行われたレセプションは、約200名の出席者による万雷の拍手の下、松本会長と近藤産経新聞社社長の先導により、秋篠宮皇嗣同妃両殿下をお迎えして開会となった。
来賓祝辞で上野賢一郎厚生労働大臣は「治す医療」から「治し、支える医療」の実現に向け、今年度からかかりつけ医機能報告制度が開始されたとし、「今回、受賞された皆様や関係者の皆様の協力を賜りつつ、本制度に基づく取り組みが各地域で円滑に推進されるように努めていく」と述べた。
選考委員も務めた羽毛田信吾恩賜財団母子愛育会会長による乾杯のあいさつの後、秋篠宮皇嗣同妃両殿下は受賞者や選考委員、医学生らのテーブルを回り、受賞者のこれまでの活動を労いつつ、その話に耳を傾けられた。
各テーブルでの懇談後、嘉悦の拍手が会場に響きわたる中、再び松本会長らの先導により、ご退場された。
歓談を挟み、本事業に特別協賛している太陽生命保険の田村泰朗代表取締役社長によるあいさつの後、「医学生から赤ひげ先生への質問」コーナーが行われた。大賞受賞者の他、京都大学と京都府立医科大学、徳島大学の医学生が登壇し、地域医療を志す医学生からのさまざまな質問に対して、各受賞者は医師としての原動力や日々の診療で心掛けていることなどについて語った。
大賞受賞者が喜びを語る
体調不良のため欠席となった福島県の木村守和医師はビデオメッセージを寄せた。
その中で、発生から15年となる東日本大震災と福島第一原子力発電所事故に言及し、「大震災後の厳しい状況を何とかしたいとの思いで、医師会や地域包括ケアの活動に取り組んできた。地域のさまざまな場所で頑張っている方々と共に歩んできたと思っている」と述懐。現在、ALS(筋萎縮性側索硬化症)が徐々に進行していることにも触れた上で、「これまでの生き方を忘れずに、自分ができることをやっていきたい」と前を向いた。
埼玉県の林正医師は、産婦人科を開設して数年後に第2次ベビーブームが到来した当時について、「外来が終わって家に帰ってもすぐに分娩のために呼び戻される日常だった」と振り返った。
その後、ラオス国の内乱によって避難してきた難民の健康管理や、妊娠中の難民の分娩、産前産後の健診を無償で行ったことなどにも触れ、「時代の趨勢(すうせい)とは早いものだが、各年代の女性の一生のパートナーとして向き合い、今後とも患者さんにとって敷居の低い診療所として頑張っていきたい」と力を込めた。
新潟県の川室優医師は、代々受け継いできた「仁寿」という理念の下、これまで障害者に対する偏見・差別を解消していくために、親子のパンづくり教室などの行事を開いたことを振り返った上で、「偏見・差別の解消は、これからもまだまだ大事なことだ」と訴えた。
地域における福祉サービスについては「質も量も足りない。就労支援を更に充実させるために頑張っていきたい」と話すとともに、「まあるいこころで共ににっこり」をスローガンに掲げ、患者と向き合いながら心が通う治療家として医療を続けていく姿勢を強調した。
大阪府の出水明医師は、自宅で療養したいという患者の思いに応えるため、平成8年に開業して以降、在宅医療を巡るさまざまな課題に気付き、介護保険の対象とならない40歳未満のがん患者への介護支援や在宅緩和ケア、医療・介護連携の仕組みづくりに取り組んできたとした。
また、地域で在宅医療に取り組む医療機関が連携して互いに支え合う仕組み「岸和田在宅ケア24」を創設した経緯などにも言及し、「これまでの経験を生かしながら、今後も地域医療に貢献できるように努めていく」と意気込んだ。
徳島県の前川裕子医師は、東日本大震災の発生当時について、「『今行かなければ後悔する』との衝動に突き動かされ、被災地へ飛び込んだ。岩手県立宮古病院の循環器内科の再建と、仮設住宅の巡回に明け暮れる日々を送った」と振り返り、現在は被災地での12年間を経て、故郷の徳島県三好市で、準無医地区の診療にも携わっているとした。
座右の銘は「置かれた場所で咲きなさい」。この言葉と共に、「これからも地域を愛し、一人でも多くの『ほっとした』という笑顔に出会えるよう精進したい」と誓った。
なお、大賞受賞者の功績や当日の模様などをまとめた小冊子『日本医師会 赤ひげ大賞 かかりつけ医たちの奮闘』は、『日医雑誌』5月号に同梱予定となっている。
「赤ひげ大賞」受賞者(5名)
順列は北から
受賞者の年齢は令和8年3月5日現在
「赤ひげ功労賞」受賞者(20名)
順列は北から・敬称略
杉山 茂(すぎやま しげる)(69歳)
(北海道・杉山クリニック 医院長)
小野瀬好良(おのせ よしなが)(74歳)
(茨城県・小野瀬医院 理事長)
尾形直三郎(おがた なおさぶろう)(81歳)
(栃木県・尾形クリニック 会長)
星野 仁夫(ほしの きみお)(70歳)
(群馬県・星野医院 院長)
松永 平太(まつなが へいた)(65歳)
(千葉県・松永醫院 理事長・院長)
中里 厚(なかさと ひろし)(84歳)
(東京都・中里医院 名誉院長)
森島 昭(もりしま あきら)(83歳)
(神奈川県・森島小児科内科クリニック 院長)
井村 優(いむら まさる)(83歳)
(石川県・井村内科・腎透析クリニック 名誉院長)
萩野 正樹(はぎの まさき)(64歳)
(福井県・南越前町国民健康保険今庄診療所 所長)
長田 忠大(おさだ ただひろ)(53歳)
(山梨県・長田在宅クリニック 院長)
林 悦三(はやし えつぞう)(86歳)
(静岡県・はやし耳鼻咽喉科医院 院長)
坂倉 究(さかくら きわむ)(78歳)
(三重県・坂倉ペインクリニック 在宅診療所 院長)
伊勢村卓司(いせむら たくじ)(83歳)
(京都府・伊勢村医院 院長)
大下 智彦(おおした ともひこ)(65歳)
(広島県・大下クリニック 理事長・院長)
安本 忠道(やすもと ただみち)(81歳)
(山口県・安本医院 院長)
岡本 啓一(おかもと けいいち)(68歳)
(高知県・菊地産婦人科医院 院長)
小野 辰也(おの たつや)(79歳)
(佐賀県・小野医院 理事長)
山下 昌洋(やました まさひろ)(93歳)
(熊本県・山下内科医院 理事長・院長)
吉田 史郎(よしだ ふみお)(73歳)
(大分県・吉田医院 理事長・院長)
森 明人(もり あきと)(69歳)
(鹿児島県・森産婦人科 理事長)