舞い上がる雪煙
日本へのスキー旅行人気はコロナ後、「常軌を逸して」いると語るのは、チャーリー・コーン氏だ。兄弟のジェイク氏とともに、日本へのスキー旅行を専門に扱う旅行社「スノーローカルズ」を経営している。
兄弟が最初に日本を訪れたのは2011年のことだ。ジェイク氏はプロのスキー選手だった。2人は日本各地のスキー場を回り、リフト券と宿泊を無料にしてもらう条件でPR動画を制作した。当時の日本はまだ津波から立ち直る途上にあり、リゾート地は観光客を誘致しようと必死だった。
これがすぐにプロ選手の間で話題になり、2人は旅行社を始めることにした。当初の顧客は車内泊もいとわない熱心なスキーヤーたちだったが、今は高級志向の旅行を中心に扱っていると、コーン氏は話す。
同氏によれば、白馬の魅力は雪質にある。「常にゆかいなパウダースキーが楽しめる」という。
シベリアからの乾いた寒気が日本海上で水蒸気を含み、山を越える時に雪を降らせる。しかも大量の雪だ。年間の降雪量が15メートルに達するスキー場もある。乾いた軽い雪の上を滑るスキーヤーから立ち上り、空中に舞う雪煙は「コールドスモーク」とも呼ばれる。
日本でのスキーは比較的手頃でもある。
「家族のスキー旅行で(米コロラド州の)テルユライドへ行くなら、日本へ飛んでも費用は同じか、もっと安く済むだろう」と、コーン氏は説明する。
欧米のスキー場に比べればあまり混んでもいないが、設備は古いことが多い。外国人に人気のある北海道ニセコのスキー場の最上部にあるリフトは1人乗りで、正方形の座席が「ピザボックス」と呼ばれている。

日本の乾いた軽い雪は世界中からスキーヤーを引きつけており、中にはバックカントリーへ足を踏み入れる人もいる/Sam Peters
欧米からのスキー客は林間のパウダースノーをめざして日本にやって来る。日本のスキー場はこうしたエリアに立ち入り禁止のロープを張っていることが多いが、地元住民らによれば外国人スキー客はそのロープをくぐり抜けてしまう。北海道の留寿都のように、整備されていないバックカントリーでのスキーを許可し始めたケースもあるが、ほとんどのスキー場は禁止しながらも、コースから外れるスキーヤーを積極的に制止はしないという不安定な立場にとどまっている。
だが当局者らによると、今シーズンに北海道のバックカントリーで救助を要請した人の8割超が外国人だった。
白馬バレーの広報担当者は、外国人観光客の増加に伴い、事故件数が増える可能性を「懸念」していると表明。バックカントリーで滑る行為の危険性について積極的に注意喚起を図っていることを明らかにした。
コーン氏は、バックカントリーで滑る技術がないのに入ってしまうスキーヤーに問題があると指摘。この点は米国やアルプスでも同じことで、リスクは付きものだとの見方を示した。
白馬で話を聞くと、罰金の話を聞いたことがあるという旅行者はほとんどいなかった。多くの業者も顧客に対し、新たな規定を進んで伝えようとはしていないようだ。
罰金の導入は観光客に歓迎されていないというメッセージを送ることになり、別の旅行先へ逃げられてしまう恐れもある。丸山氏もこれを否定せず、そういう人たちが別の場所へ行ってしまうとしても、それほど悪いことだとは思わないと述べた。
白馬には騒がしい観光客の若者があふれているというイメージがあるかもしれないが、HHGによると宿泊客のうち25歳未満は22%。最も多い年齢層は36~45歳で、33%を占めるという。
旅行者が増えているとはいえ、八方尾根の夜は静かだ。9時までにはバーのスキー客も部屋に戻ってスキーブーツを脱ぎ、レストランからも少人数のグループが出てきてのんびりと帰途に就いた。おひょっくりの前の列は消え、もう「閉店」の看板が出ていた。
