2026年3月15日
“リポート最前線” 過疎地域の関係人口拡大へ、旅行者に短期バイト募る
マッチングサイトを活用
滋賀県
働きながら旅を楽しみたい人をつなぐ――。滋賀県は過疎化が進む県北部地域の活性化をめざし、マッチングサイト「おてつたび」を活用した事業を展開している。北部3市(長浜市、高島市、米原市)の事業者への補助などを通じ、短期アルバイトによる人手不足解消のほか、滋賀県と継続的なつながりを持つ関係人口の拡大が狙いだ。
■事業者→人手不足の解消
利用者→給与+休日観光
「当日会うまでは、どんな人が来るのかソワソワしていましたが、“お手伝い”してくれた2人は真面目な仕事ぶりで、とても助かりました」。今月上旬に実施された県と長浜市が共催した実践報告会で、こう振り返ったのは高島市森林組合の勝野真士さん。昨年9月~10月の約1カ月間、マッチングサイト「おてつたび」を利用して、2人の短期アルバイトを採用した。
受け入れたのは、奈良県に住む20代の男子大学生と九州在住の50代の男性。獣害対策のテープ巻きや測量業務の補助、イベント運営などの仕事を担い、人手が不足する秋季の仕事を支えた。宿泊場所には、職員寮の一室を提供。休みの日は、参加者同士で滋賀県内を観光に回るなど、交流も生まれたという。
これまで地元の求人では人材確保が難しかった一方で、おてつたびを活用した今回は「全国からすぐに応募が集まり、林業に関心のある人材を確保できた」と勝野さんは強調する。参加者の2人からは、「林業に対する『怖い』というイメージが払拭された」など好意的な感想が寄せられた。
マッチングサイト「おてつたび」は、地方での短期アルバイトに関心のある旅行者と人手不足に困る全国の事業者をマッチングする。「株式会社おてつたび」が運営し、現在約9万6000人がユーザーに登録。昨年の新語・流行語大賞にノミネートされ、新たなビジネスモデルとして注目が集まっている。
利用者は、自己紹介やスキルなど簡単な情報を登録後、サイトに掲載されている募集一覧から希望する求人に応募できる。応募後、事業者による選考を通過すると、マッチングが成立する仕組みだ。利用者は、最低賃金以上の給与を得られるほか、休みの日などに地域を自由に観光できる。事業者が宿泊場所を用意するので、宿泊費用は無料(交通費は実費)。
事業者側のメリットとして、繁忙期など一時的に人手が必要な時に全国から人材を呼び込むことができる。また、「おてつたび」を通して地域の魅力を知った人が、その後も継続的に地域に関わる関係人口へと発展することも期待されている。実際に利用後、アルバイト先の地域で起業や二拠点生活、地元住民との結婚につながったケースがある。
■最大7万円、県が運営への手数料補助
滋賀県は昨年から、県北部地域の活性化をめざす「北の近江振興プロジェクト」の一環として、「おてつたび」との連携を開始した。対象地域の事業者がマッチングした際に運営側へ支払う手数料などを、最大7万円まで県が補助する。今年度は、宿泊業や農業、まちづくりなどに携わる県内の6事業者が求人を募集し、全国から10代~60代の15人の参加者が訪れた。
滋賀県は、京都府や大阪府などへのアクセスが良い草津市や守山市などの南部地域はベッドタウンとして人気で、人口は増加傾向にある。一方で、北部地域は人口減少と少子高齢化が顕著で、生活インフラや産業活動の維持が大きな課題だ。人口の「南北格差」の解消へ、県は同プロジェクトを推進し、北部地域で移住と関係人口を新たに計3000人創出することを目標に掲げている。
県北の近江振興事務所の担当者は、おてつたびなどあらゆる施策を活用して「滋賀県を第2のふるさとのように、つながりを持つ人を全国に増やしていきたい」と意気込んでいる。公明党の清水ひとみ、岩崎和也の両県議は、県当局への予算要望で北部振興事業の推進を訴えるなど後押ししてきた。
■ヒト・モノ・カネの好循環を
株式会社おてつたび 永岡里菜代表取締役CEO
地方に次世代に残る未来をつくりたいとの思いで活動してきた。人口減少による課題のしわ寄せは、都市部ではなく地方に真っ先にやってくる。地域の中だけでは、人材確保に限界を感じている事業者は少なくない。地域の外に労働や消費活動を通して応援してくれる人を作ることで、「ヒト・モノ・カネ」を全国に循環させることができる。
実際に地方を旅行した人たちから、その地域の魅力が全国に広がっていく。単なる交流を超えて、地域との深い信頼や、つながりを持つ“顔の見える関係人口”を増やしてもらいたい。(おてつたびホームページはこちらへ)

