学習指導要領の改定に向けた議論が進む中、「性教育の歯止め規定」が維持されることが毎日新聞の取材で判明。歯止め規定は「受精に至る過程は取り扱わない(小5理科)」「妊娠の経過は取り扱わない(中1保健体育)」とする現行の指導要領の記述を指す。

SNSの普及で、子供たちが不正確な性的情報にさらされるリスクが高まる今、この規定が時代に逆行していることは自明だ。世界では人権や同意、人間関係を総合的に学ぶ「包括的性教育」が主流で、性被害の抑止にも成果を上げている。日本の性教育が抱える構造的な欠陥を問い直す。

ココがポイント

高校で取り扱う避妊や人工妊娠中絶について扱う授業(略)古賀俊昭都議が「生徒の発達段階を無視した指導で、不適切」などと批判出典:TOKYO MX :TOKYO MX ニュース:東京・足立区の中学校で「性教育」 自民都議が不適切と批判 2018/4/26(木)

授業では、若年層の望まない妊娠が貧困につながる(略)高校1年生の中絶件数は中学までの総数の3倍に跳ね上がる実態を紹介出典:子どもとの日々を支える 東京すくすく 足立区の中学の性教育 避妊や中絶…都議が「不適切」と批判したのは妥当か? 川田篤志、柏崎智子(2018年4月5日付 東京新聞朝刊) 2018/9/12(水)

日本の性教育は(略)しつけやモラルといったかたちをとる。セックスしてはいけないとか、10代で妊娠するのは悪いことといった出典:Yahoo!ニュース オリジナル 特集 日本の性教育はなぜ遅れているのかーー高校生に「人間と性」を教えた元保健体育教員が語る、盛り上がりとバッシング #性のギモン 2022/7/28(木)

「包括的性教育」とは、UNESCO(国際連合教育科学文化機関)が中心となり、2009年に発表した(略)世界標準の性教育出典:SISTERS 包括的性教育とは?海外との比較や日本の現状について紹介 2025/6/30(月)

エキスパートの補足・見解

避妊の授業を不適切と批判する政治家、性教育を保健教育から切り離せない文科省。いったい日本の大人たちは、「人権教育としての性の安全」と「保健の授業としての妊娠と出産」のどちらが、子どもが幸せになるために必要だと考えているのか。中学生になれば自ずと「性への関心」は高まり、ネットや雑誌にあふれるあやまった性に関する情報に子どもたちはアクセスする。ならば余計に、興味本位の知識ではなく、きちんとした情報を子どもたちに与えるべきだ。

そもそも「性、愛、命」の3つは、決して分けて考えることなどできないはずだ。

人を愛するとは? 愛する人を大切にするとは? 人はなぜ、人を愛し、愛されたいのか? 命とは何か? 命はどのように誕生し、育まれるのか? という内容を先生も一緒に考え、議論し、性の問題を「人間のテーマ」であり、「人間をトータルに考える教育」と捉えれば良いだけだ。

性教育をタブー視する人たちは、いったい何を恐れているのか?

いまだしつけから脱していないということか?

自分と他者の心身の尊厳を等しく尊び、誠実な人間関係を築く力を育む「包括的性教育」こそが、子供たちが自由で安全な人生を切り拓くための、真に血の通った人権教育だ。

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