塾も夏休みの宿題も、他人と成績を競う競争もない――。21世紀の先進国でありながら、子どもたちが遊びに没頭できるデンマークの教育制度。
今回はデンマーク在住25年のニールセン北村朋子さんの著書『経済力も幸福度も高くなるデンマークのすごい教育』(青春出版社)を一部抜粋してご紹介いたします。
週37時間労働で人生を謳歌する大人たちの姿を通し、なぜ「自分を大切にする教育」が国際競争力の高い社会を生むのか、その源流を探ります。
2001年に私が初めてデンマークを訪れた時に驚いたことのひとつは、子どもや若者たちが楽しそうに遊びに没頭している姿でした。
小さな子どもも、ティーンエージャーも、若者も、塾に行くこともなく、夏休みの宿題に追われることもなく、お稽古ごとで忙しすぎることもなく、自由に、いま持てる時間を最大限に使って、仲間たちや家族と楽しそうに遊びまくっていました。まるで、私が幼かった頃のように。
私も、日本の神奈川県で生まれ、小さな頃から海や山や川で、友達と思う存分遊び、いろんな冒険をして育ちました。そんな光景が、21世紀の、先進国のひとつであるデンマークで見られたことが、本当に嬉しい驚きでした。
そうなんです。デンマークには、生徒同士で成績を争う競争も、受験も、塾も、毎日の大量の宿題も夏休みの宿題もないのです。好きなことをする時間が、たっぷりあります。
これは大人も同じです。仕事や出世競争に明け暮れることなく、フルタイムでも週の労働時間は37時間。残業はなく、有給休暇も年に56週間は取るのが当たり前。家族や友人との時間、趣味の時間、休息の時間もバランスよく取りながら、それぞれが自分の人生を楽しんで生きています。
しかも、デンマークの社会では子どもも大人も存分に人生の時間を謳歌しながら、幸福度だけでなく、国際競争力やSDGsなどでも世界をリードする存在です。
デンマークに暮らしてもうすぐ25年になりますが、デンマーク社会に暮らし、デンマーク人の多様な人生を見ていると、それぞれが自分の価値観を信じて生きている、とつくづく感じます。たとえそれが他の人と違ったとしても、自分を大切にし、他の人もそんな違いを尊重してくれます。
どうしてそんなことができるのだろう? みんな思い思いの人生を生きていても、国としてまとまり、多くの国民が幸せだと感じられるのはなぜなんだろう? と考え続けて、やはり、子どもも大人も5歳児のような好奇心を持っていていいんだと教える「教育」こそが、デンマークの幸せな社会の源なのだ! と確信するようになりました。
子どもや若者が幸せな社会は、総じて大人も幸せなのです。
