胃腸薬・ドンペリドンなどに「重篤な不整脈」のリスク? 厚労省が添文改訂を複数通知

「胃もたれや吐き気などで、胃腸薬を使ったことがある」という人は少なくありません。厚生労働省は2026年8月25日、身近な胃腸薬であるドンペリドン(吐き気止めなどに使われる胃腸薬の成分)やメトクロプラミドをはじめ、葛根湯やオランザピンなど、多数の医薬品について添付文書(医薬品の効能・用法・副作用などの情報を記載した公的文書)の「使用上の注意」を改訂するよう通知しました。今回の改訂について、中路先生に伺いました。

監修医師:
中路 幸之助(医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター)
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1991年兵庫医科大学卒業。医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター所属。米国内科学会上席会員 日本内科学会総合内科専門医。日本消化器内視鏡学会学術評議員・指導医・専門医。日本消化器病学会本部評議員・指導医・専門医。
編集部
厚生労働省が発表した内容を教えてください。
中路先生
厚生労働省は2026年8月25日、多数の医薬品について、添付文書の「使用上の注意」を改訂するよう通知しました。ドンペリドンとメトクロプラミドでは、重篤な不整脈・突然死のリスクを「重大な副作用」に追加し、長期漫然使用(症状が改善しないまま、必要以上に使用を続けること)を避けるよう求めています。
葛根湯(医療用・一般用とも)では、新規重大副作用として多形紅斑(皮膚に赤い斑点状の発疹ができる症状)が追加されました。
抗精神病薬であり、がん化学療法における制吐薬にも用いられるオランザピンは、がん治療を目的とした糖尿病患者さんへの投与が禁忌(使用してはいけないとされる状態)から条件付き可能に変更されました。ニボルマブなどの免疫チェックポイント阻害剤(がんが免疫の攻撃から逃れる仕組みを妨げ、免疫の力でがんを攻撃しやすくする薬)では、ぶどう膜炎や食道炎などが追加されています。
ミトタン、イボシデニブ、エンコラフェニブでは、CYP3A4誘導薬(肝臓で薬を分解する酵素CYP3A4の働きを強める薬)との相互作用により禁忌薬が大幅に拡大されました。ほか、アセトアミノフェン配合剤や複数の抗HIV薬も改訂対象となっています。
編集部
添付文書の「使用上の注意」が改訂された理由について教えてください。
中路先生
改訂理由は薬剤ごとに異なりますが、共通して「国内外で集積した副作用症例や疫学調査の結果、新たなリスクが確認されたため」という点が基本です。
ドンペリドンとメトクロプラミドは、レセプト情報データベース(NDB;医療機関からの診療報酬明細をまとめた国のデータベース)を用いた疫学調査で、致死性不整脈や心臓突然死のリスク増加が示唆されたことが根拠です。葛根湯は、多形紅斑の副作用症例が集積したことによります。
オランザピンは、血糖モニタリング体制の整備により安全に使用できると判断されたためです。免疫チェックポイント阻害剤は、市販後に報告された副作用症例の蓄積が理由です。ミトタンなどは、新薬の承認に伴いCYP3A4誘導作用による相互作用が判明したためです。
編集部
厚生労働省が発表した内容への受け止めを教えてください。
中路先生
意外に感じられるかもしれませんが、胃腸薬が心臓に影響することは知られています。これらの薬は胃腸の動きを整えるだけでなく、心臓の電気的なリズムにもわずかに作用するため、まれに危険な不整脈のきっかけになることがあるのです。胃薬であっても、体全体に働く薬だという点は知っておいてほしいところです。
ただし、今回の根拠になったのは実際の診療データを解析した研究であり、示されたのは「関連がありそうだ」という段階にとどまります。強い吐き気が続く背景に別の病気が隠れていることもありますから、薬の影響だけを切り分けて評価するのは簡単ではありません。過度に怖がって必要な治療をためらってしまうほうが、かえって不利益になることもあります。
特に気をつけていただきたいのは、高齢の人、腎臓の働きが落ちている人、心臓の病気や不整脈をお持ちの人、ほかにも複数の薬を飲んでいる人です。リスクは誰にでも同じようにあるわけではなく、こうした条件が重なったときに高まります。
そのうえで一番見直したいのは、いつから飲んでいるのか分からなくなっている胃腸薬です。本来は症状があるときだけ使う薬なのに、処方がそのまま続いていたり、以前もらって残っていた薬を自己判断で飲み続けていたりすることが、決して少なくありません。症状が落ち着いているのであれば、まだ続ける必要があるのか、主治医や薬剤師に一度確認してみてください。反対に、飲んでいる間に動悸や脈が飛ぶ、めまい、気が遠くなるような感覚があれば、様子を見ずにかかりつけ医に相談してもらいたいと思います。
編集部まとめ
今回の改訂は、身近な胃腸薬であるドンペリドン・メトクロプラミドだけでなく、葛根湯やオランザピン、免疫チェックポイント阻害剤など、多数の医薬品が対象となりました。いずれも国内外で集積した副作用症例や疫学調査の結果を踏まえたものです。動悸や脈の乱れなど気になる症状があれば、自己判断せず早めに医療機関を受診しましょう。


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