前立腺肥大症は、男性だけにある臓器の前立腺が大きくなり、隣接する尿道を押しつぶし、排尿に問題が起きる病気です。2022年に手術時間が短く、体に負担が少ない治療法が保険適用になりました。従来、手術が難しかった高齢患者の治療の選択肢が増えています。(安藤奈々)
残尿感や頻尿に
前立腺は前立腺液という精液の一部を作る臓器で、 膀胱(ぼうこう) の下の尿道を取り囲む位置にあります。元々はクルミ大ですが、加齢に伴いミカンほどの大きさになります。40~50歳代から膨らみ始め、80歳代では9割の人に肥大がみられます。尿道が押されて狭くなり、残尿感や頻尿、尿漏れなどが出ます。英国のチャールズ国王が1月下旬に治療を受けたことも発表されました。
診断は、患者から自覚症状や生活面での困りごとを聞き取ったうえで、超音波検査などで前立腺の大きさを調べたり、排尿にかかる時間を計ったりして行います。重症度も判定します。
軽症なら薬服用
肥大が進んでいない軽症の場合は、前立腺の張りを緩める薬や男性ホルモンの働きを抑える薬を服用します。症状が進行し薬の治療で改善しない場合は手術を検討します。肥大した前立腺の組織を電気メスやレーザーで削る、切り取るといった方法があります。
22年に二つの新しい手術方法が公的医療保険の対象となりました。一つは「経尿道的前立腺 吊(つ) り上げ術」で、内視鏡を使って尿道から専用の機器を入れ、4~6個の小さな金具と、金具をつなぐ細い糸で前立腺を圧縮して尿道を広げ、留置します。効果を数日で感じられる利点があります。
もう一つは「経尿道的水蒸気治療」で、こちらも内視鏡で尿道から専用の機器を入れます。高温の水蒸気を注入し、前立腺の組織を 壊死(えし) させ前立腺を縮めます。効果が出るまでに約1か月かかりますが、体内に留置する物はありません。
ともに、手術時間は10~15分程度と従来法の1~2時間より短く、出血も少ないため体への負担が小さいのが特徴です。性機能の温存も期待できます。高齢や持病のために従来の手術が難しい患者が主な対象です。肥大がかなり進んだ患者は受けられません。
患者は多くが高齢で様々な病気を抱え、使う薬は増えがちです。東京慈恵会医科大泌尿器科准教授の古田昭さんは「手術を受けられれば前立腺肥大症の治療で使う薬を減らせる可能性がある」と話しています。
都内の男性(71)は約8年前から前立腺肥大症の薬物治療を受けていましたが、23年春に急に尿が出なくなりました。その後、経尿道的前立腺吊り上げ術を受けると、尿を自分で出せるようになり薬の使用もなくなりました。「尿を出し切れる感覚がある。夜、頻繁にトイレに行くこともなくなった」と喜んでいます。
術後は過度な飲酒を控えます。股間に強い刺激が加わらないよう、1か月程度は自転車やバイクに乗ることも避けることが望ましいです。もし退院後に、血尿や高熱が出た場合には早めに受診が必要となります。
日本大板橋病院院長で泌尿器科教授の高橋悟さんは「治療法は多様化している。医師とよく相談し、自分に合う治療法を探してほしい」と話しています。
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