国立がん研究センターが日本人の教育歴ごとの死因別死亡率の推計を初めてまとめ、「教育歴が短いと死亡率が高い」という傾向が出ました。教育歴と健康には、どのような関係があるのでしょうか。
生活習慣の差が原因か
同センターは、2010年の国勢調査と、10年10月~15年9月の人口動態調査の死亡票に共通して設けられている「性別」「生年・月」「住所(市区町村)」などの5項目が一致するデータを「同一人物」とみなし、30~79歳を対象に死因別死亡率を分析しました。その結果、教育歴が短い群(小学・中学卒業者)は、教育歴が長い群(短大・高専・大学・大学院卒業者)に比べて男性で1.36倍、女性で1.46倍、死亡率が高いことが分かりました。疾患別で差が大きかったのは、男女とも脳 梗塞(こうそく) や脳出血といった「脳血管疾患」、「肺がん」、心筋梗塞などの「虚血性心疾患」、「胃がん」でした。
同センターのがん対策研究所データサイエンス研究部の田中宏和さんは、「教育歴の長さが喫煙や塩分の取り過ぎなど、生活習慣の違いと関連しており、死亡率の差につながっている」と分析しています。
厚生労働省の国民生活基礎調査では、教育歴が短い人は喫煙率が高く、がん検診の受診率も低いことが分かっています。また、厚労省の別の調査では、所得が低い人ほどバランスの良い食生活ができていませんでした。
教育歴が長い方が死亡率が高い疾患も
一方で、教育歴が長い方が死亡率が高いという疾患もありました。女性の「乳がん」です。同研究所の別の研究では、出産経験がない、出産回数が少ない、初産の年齢が高いことなどが、リスク要因として明らかになっています。
田中さんは「教育歴が長い女性の方が、乳がん発症のリスク要因を多く持ち、死亡率が高くなっている可能性があります」と指摘します。同じリスク要因が指摘されている子宮体がんについても、同様の傾向がみられました。
衛生水準や皆保険制度が寄与
今回、日本のデータを初めて出せたことで、国際的な比較ができるようになりました。例えば、オーストラリアの教育歴による死亡率の差は、男性2.2倍、女性1.64倍で、日本より高くなっています。また、がんによる死亡率に限ると、日本は男女とも教育歴による差は1.10倍でしたが、アメリカでは2.29倍でした。
欧米と比べて日本での格差が小さいことについて、田中さんは「安全な水や食料など衛生水準が高いことや、国民皆保険制度により誰でも適切な医療・保健サービスを受けられることが寄与している可能性があります」と分析しています。(読売新聞メディア局 道丸摩耶)
注目ワード
今注目されている話題の記事が読めます。

WACOCA: People, Life, Style.