インフルエンザの流行が続き、新型コロナウイルス感染症の患者も増えてきています。冬場は、感染症に限らず呼吸器の病気が悪化しやすいと言います。予防策について、東京慈恵会医科大総合医科学研究センター准教授の藤田雄さんに聞きました。(聞き手・利根川昌紀)
カギを握る「線毛」
――冬場は、一般的に感染症の患者が増えます。それはなぜですか。
冬は空気が乾燥していて、ウイルスが長期間、空気中に浮遊するため、感染が広がりやすくなります。
また、乾燥によってウイルスを排除する働きが低下することも、患者が増える要因です。
気道の表面には、「線毛」と呼ばれる毛が無数にあります。口や鼻からウイルスなどを吸い込むと、気道の粘液がそれらを捕え、線毛の働きによって外の方に送られ、 痰(たん) として口から吐き出されるなどして排除されます。
しかし、空気が乾燥すると、粘液の分泌が少なくなって線毛の働きが悪くなってしまいます。
ウイルスだけでなく細菌も、乾燥している状況だと体内の粘膜に侵入しやすく、免疫力が低下していると感染リスクは高まります。細菌性の肺炎などには注意が必要です。
――感染症以外でも、冬になると進行しやすくなる呼吸器の病気はありますか。
気道に炎症が起こる気管支 喘(ぜん)息(そく) や気管支拡張症、慢性 閉塞(へいそく) 性肺疾患(COPD)は進行しやすくなる傾向があります。線毛などの働きが低下してしまうことで、痰がたまったり、ウイルスや細菌、アレルギー物質を排除しづらくなったりし、これらによって炎症がより強くなってしまいます。
感染症にかかって肺の状態が悪化するケースも
――COPDと言えば、喫煙が原因で発症する病気という印象です。
COPDは長い間、喫煙することで、気管支が炎症を起こしたり肺が破壊されたりする病気ですが、乾燥したり感染症にかかったりして線毛の働きが悪くなると、悪化する恐れがあります。多くの場合、ウイルス感染症が引き金になります。
――間質性肺炎という病気もあります。冬場に肺炎が悪化するのであれば、注意が必要ですか。
間質性肺炎は、肺で酸素と二酸化炭素を交換する肺胞の壁に、炎症や損傷が起こる病気です。気道の状態との直接的な関連はあまりありません。ただ、ちょっとした風邪やインフルエンザ、新型コロナなどに感染すると、一気に肺に炎症が広がります。数日とか1週間くらいの間に肺が急速に悪くなる「急性呼吸窮迫症候群(ARDS)」になると、命に関わります。
そのほか、肺マック症の人も注意が必要です。土や水にいる非結核性抗酸菌(「マイコバクテリウム・アビウム」と「マイコバクテリウム・イントラセルラー」)が原因で、せきや痰などの症状が出る病気ですが、菌の感染がいつまでも続くと、炎症が気管支にも広がります。そうなると、気道で病原体を排除する機能が低下し、インフルエンザや新型コロナといった感染症にかかりやすくなってしまいます。
中高年女性に多い肺マック症
――これらの肺の病気は、年齢や性別によってかかりやすさは異なりますか。
間質性肺炎とCOPDは、高齢になるとかかりやすくなります。また、肺マック症は中高年女性がなりやすいと言われています。一方、気管支喘息は、子どもの頃に発症する人が多いですが、40~60歳代でなる人もいます。
高齢の方は、 誤(ご)嚥(えん) 性肺炎に注意してほしいです。冬場の乾燥によって線毛の働きが低下してしまい、ウイルスや細菌などを排除できないと、命に関わります。



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