シティビルダー『Beyond These Stars』は宇宙クジラの背中に街を作ります。この特異なシチュエーションのもと、サプライチェーン管理・地形デザイン・都市移動を組み込み、定番要素のオールインワンパッケージにまとめあげました。風変わりな見栄えながらも中身は本格派で、ジャンルファンの期待に応えると請け合います。本稿はメーカー提供のプレビュー版を用いてレビューします。

本作独自のゲーム要素はありませんが、目立った不足や粗はない、完成度の高さが本作の美点です。完成度の秘訣はメーカー前作『Before We Leave』のリワークにあります。前作の欠点に対処しつつ、キーフィーチャー「エコロジー」「惑星入植」「戦闘なし」を強調しました。

本作は前作と世界設定を共有していますが、前作のプレイがなくとも遊べます。前作についてはストーリーモードのオープニングでダイジェストしました。タイトル名のとおり、前作は「惑星から離れる前」、つまり前日譚にあたります。そして本作で「星々の彼方」へ旅立つのです。

レビューを始める前に、オープニング ~ ゲーム序盤の展開を紹介します。宇宙クジラに惑星表面をかじられる災害に見舞われていた人類種ピープは、宇宙クジラを観察して行動パターンを理解し、絶滅の危機を回避しました。ここまでが前作で、本作は宇宙クジラの表面に着陸して生態調査に臨みます。

表面は大気があり、川が流れ、草木が伸び、まるでピープたちを歓迎するかのようでした。しかし、調査キャンプを設営した矢先に、宇宙クジラが超光速で銀河のどこかに移動してしまいました。母星と連絡が取れなくなり、調査隊は未知環境でサバイバルを強いられます。

守るエコロジーから攻めるエコロジーへ

宇宙クジラの背中で街を作る、というシチュエーションこそ極限環境への挑戦ですが、ゲーム開幕は居住に適した温和なエリアで始まります。美しい景観と心地よいBGMがリラックスを招き、ストレスレスにプレイできます。他作品との違いは大気圏=行動範囲が狭いこと。川を伸ばして緑を広げ、灌漑と植林で大気を生み出します。行動範囲の拡大という実利でエコロジーを強調しました。

ゲームの概要はサプライチェーンの管理です(作中表記:資源フロー)。ルールは伝統的なシティビルダーで、道路を敷いて施設を建てると、ピープが資源を運び、施設で働きます。ゲーム開幕は川縁に水ポンプ、緑地にジャガイモ畑、それらの付近に小屋を建てるところから始まります。それから採掘所・火力発電所・製鉄所を建て、材料を加工する産業=サプライチェーンを拡大します。

本作のメインコンテンツ、ストーリーモードはタスク達成とストーリー進展を繰り返し、最後までプレイを導きます。タスクは何を建てればよいか、何を集めればよいかを示します。ストーリーは調査隊の中心にあたる4人の会話で進みます。ゲーム序盤はタスクを頻繁に挟み、新しい施設・資源・ゲーム要素を手ほどきします。ストーリーは調査隊がおかれたシチュエーションを解説し、次に備える心構えを教えてくれます。タスク達成で施設をアンロックすると、ピープを強化するパークポイントが手に入るのも、街が成長する様子を描いており好感です。

ゲーム序盤のテーマはエコロジーです。本作では2種類のゲーム要素となります。ひとつは汚染対策です。産業施設の多くは周囲を汚染し、施設の稼働停止やピープの病気を引き起こします。汚染除去施設を建て、周囲の森林に汚染を吸収させる、対策法の併用が肝となります。ここに、施設隣接ボーナスによる効率化、資源移動の動線確保、ピープの通勤圏を加えた配置パズルを楽しめます。施設の移動に資源コストを要さず、気軽に建て直せるのは有り難いです。

もうひとつのエコロジーは地形デザインです。ゲーム開始から3時間もタスクをこなせば地形デザインをアンロックします。川をせき止めていた地形を掘ると、川が伸びて先の土地へ進めるようになります。水が付近にある肥沃な土壌には草が生え、森林が空気を生み、大気圏=行動範囲が広がるのです。川から離れた資源地を使うなら、川の支流を伸ばすのが最初の一歩となります。

上記のエコロジーを活用して街を広げます。これがピープと宇宙クジラ「キーワ」の共存につながります。ゲーム序盤の終了目標、クジラコミュニケーターの建設でキーワと会話が可能となります。そのとき、ピープたちの街作りを快く感じていると明かしました。カメラを遠景にすると、ピープが住み着いた土地はキーワのウロコがはがれたエリアで、ピープの街がウロコの代わりになっているのがわかります。地主からお墨付きを得たようなものですから、街作りに弾みがつきます。さあ、街を作り直して生産効率を上げましょう。それがゲームクリアを阻む最大の敵、「飽き」に打ち勝つ唯一の手段です。

グレートジャーニーをたどる宇宙クジラとの旅

ゲーム中盤を一言でまとめると「惑星入植編」です。クジラコミュニケーターを建てたあと、キーワにお願いして銀河マップを移動できるようになります。タスクも難しくなり、古代ピープ惑星への入植や、エイリアンが欲しがる遺物の探索に挑戦します。ストーリーもタスクに応じて規模が広がり、作中世界の謎に迫ります。その過程でキーワの背中に建てた街は試練にさらされるのです。

銀河マップのほとんどは超低温エリアで、移動中は時間経過で街の気温が下がります。超低温まで下がりきると食物の成長が止まり、ピープの活動が減少し、病気が治らず命を落としてしまいます。高温恒星も異常気温がトラブルを招きます。ありていに言えば季節の要素です。食料・衣服・薬の備蓄を用意してから移動できるので、季節に対策しやすいです。

しかし、キーワの背中から作れる資源だけでは銀河マップの長距離移動に耐えられません。ここで惑星入植の出番となります。羊が住む惑星でウールを得て防寒具を作り、発見した食物で高性能の食事を作るといった調子で、惑星入植が旅の準備に役立ちます。ジャンル従来作で言う第2都市の設立ですが、水が全くない惑星といった極限環境もあり、街作りの腕前を試せるのが刺激的です。

惑星も資源の種類が限られており、惑星が自立できるまでキーワの街から資源の輸送を要します。サプライチェーンに輸送の要素が加わるのです。ワープゲートを発見すると惑星同士の輸送をアンロックします。温和な惑星で食料生産に専念し、食料が育ちにくい惑星へ輸送する、といった適材適所の街づくりが可能となります。

面白いのは、ゲーム中盤でもプレイの軸は生産効率=配置パズルだという点です。序盤のプレイを引き継ぎつつ、新資源や惑星間輸送でサプライチェーンを複雑化し、物事のややこしさを段階的に上げました。終盤は銀河マップの深部探索や高度加工品を要する施設の建設がタスクとなります。キーワの街、惑星の街、その限られた土地を活用するべく、サプライチェーンのために街を作り直しましょう。

「大いなる欲」が満たされたとき

以上で『Beyond These Stars』は街を作り直すゲームですと紹介しました。本作は戦闘要素がなく、誰にも邪魔されず、好きなときに街を作り直すことができます。自分のペースで遊べると言えばフレンドリーなゲームに聞こえますが、そのペースが問題を引き起こします。ゲームの進行が鈍化し、刺激が得づらくなるのです。

キーワの背中で街作りをするゲームの序盤はタスクが簡単で、ストーリーをテンポよく追えます。しかし、ゲーム中盤以降はタスクの達成に大量の資源を要し、生産効率が低いままではストーリーが進まず、ゲームから受け取る刺激が乏しくなります。序盤から生産効率を意識すればよいのですが、初回プレイではゲームの展開を知らず、どこかで街の再開発を要します。資源がたまるのを待つのがつらく、再開発も面倒という立ち往生に陥り、ゲームに飽きてしまうのです。

ゲーム進行の立ち往生は前作にもありました。本作はその立ち往生を部分的に防いでいます。ひとつはタスクです。ゲーム中盤はタスクの種類が増え、達成しやすいタスクを優先すればストーリーの進展の鈍化をある程度防げます。会話イベントでも、わずかな進展を偉大な一歩だともりあげています。

もうひとつはキーワの第2都市設立です。ゲーム序盤から存在感を出していた尾側エリア、赤い人工物が突き刺さった大きな空き地をゲーム終盤にアンロックします。そのころは高次加工品を大量に要する事業に挑んでおり、工場の立地にうってつけです。第1都市を更地に戻す手間を省いた、ちょうどよいタイミングになっています。

上記に挙げた立ち往生への取り組みがあるものの、性能向上版の施設や周囲一体を強化する施設といった手っ取り早い解決策はありません。生産効率を高める手段は街のデザインのみです。立ち往生の状況を打開する手段が「基本から学び直し」という、手厳しいつくりとなりました。

将来の副産物(ゴミ)処理や汚染対策を促す会話はあるが、サプライチェーンの効率化を促す会話はない。

戦闘がなく、効率をとがめず、プレイヤー自らが求める速度で遊べます。誰にも邪魔されたくないプレイヤーは快く思うでしょう。しかし、その優しさはプレイヤーをせかさないことによるトラブルを内包してしまいました。ゲームクリアに必要な生産効率を稼げず、ゲームに飽きるケースを招いています。ストーリーモードを最後までプレイしたいゲーマーは、飽きとの戦いに打ち勝たなければなりません。

総評

『Beyond These Stars』はエコロジーと惑星入植をテーマに、シティビルダーの人気要素を幅広く取り入れました。本作独自の要素は薄いものの、ジャンルのオールインワンパッケージとして高い完成度を誇ります。この、不足がない高品質の手触りと、故郷を探す壮大なSFストーリーが本作ならではのプレイ感だと言えます。しかし、とっかかりはキャッチーなものの、ゲーム中盤以降は人を選ぶ内容です。

初回プレイ時は辛い中だるみをさけられず、それを乗り越える試練が待ち受けます。作中で中だるみを緩和する取り組みはあるものの、根本的な解決は街を再開発するしかありません。やり直しを苦とはせず、住民に容赦せず、スクラップ&ビルドを楽しめる、筋金入りのジャンルファン向けとなっています。

そして、新規ゲームで最初からやり直すと、最序盤から都市の拡張性を考える施設配置パズルにやりごたえを感じるでしょう。もちろん、初回プレイでゲームクリアできる本職のシティビルダーには、ストーリーモードと別にシナリオモードがありますのでご安心ください。サバイバル要素が強い設定や、制限時間内に資源を納品するなど、サプライチェーン管理の限界に挑戦できます。遊び始めるのは易しく、遊び尽くすのは難しい、スパルタンなシティビルダーとして本作を推しましょう。

Game*Spark レビュー 『Beyond These Stars』 PC(Steam / Epic Games Store / XBOX / GOG.com) 2026年10月17日 キャッチーな独自要素はなく初回プレイ時は途中で飽きるものの、生産効率を意識して新規ゲームからやりなおすと真価がわかる、オールインワンパッケージ・シティビルダー。 GOODサプライチェーンと施設配置パズル生存圏を拡張する地形デザイン利便性が高いUI大量のストーリーイベント戦闘なしBAD中盤以降でゲーム進展が鈍化する生産効率の向上をうながす誘導がない本作独自のプレイ体験は薄い

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