セガは、「ソニック」や「龍が如く」「ペルソナ」などグローバルで人気の高いゲームシリーズを多数持つゲーム企業だ。しかし、グローバル戦略では後れを取ってきたと、同社代表取締役社長執行役員COOの内海州史氏は言う。2024年から現職で同社を率いる内海氏にセガのグローバルビジネスはどう見えてきたのか。さらにそれをどう推し進めるのか。同氏の考えを聞いた。(聞き手は日経Gaming編集長 平野亜矢)

セガ代表取締役社長執行役員COOの内海州史氏

セガ代表取締役社長執行役員COOの内海州史氏

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 セガは今、グローバル戦略強化のさなかにある。自社が持つIP(知的財産)の価値をグローバルで高めるための「トランスメディア戦略」を打ち出し、2024年に専門部署を設置。ゲーム発の人気IPを、映画やライブ、舞台演劇、グッズなどに拡大展開し、ブランド力向上と多方面からのファン獲得、収益拡大を狙う。

 例えば、米国などで強い人気を誇る「ソニック」シリーズでは、2020年公開の『ソニック・ザ・ムービー』を皮切りに、『ソニック・ザ・ムービー/ソニック VS ナックルズ』(2022年)、『ソニック × シャドウ TOKYO MISSION』(2024年)と3本の映画を公開。4作目を2027年3月から世界各国で順次公開予定だ。

映画『ソニック × シャドウ TOKYO MISSION』(2024年)

映画『ソニック × シャドウ TOKYO MISSION』(2024年)

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 マーチャンダイズにおいては、IP関連グッズを販売するオフィシャルショップ「SEGA STORE」の出店を推進。2025年5月の中国・上海、7月の渋谷、2026年7月の中国・北京に続き、10月には大阪に4店舗目をオープンする。

オフィシャルショップ「SEGA STORE」をグローバルで展開。写真は、2025年7月、渋谷PARCOの6階に「SEGA STORE TOKYO」がオープンしたときの様子(写真/稲垣宗彦)

オフィシャルショップ「SEGA STORE」をグローバルで展開。写真は、2025年7月、渋谷PARCOの6階に「SEGA STORE TOKYO」がオープンしたときの様子(写真/稲垣宗彦)

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 同社を率いるのが、セガ代表取締役社長執行役員COO(最高執行責任者)の内海州史氏だ。

 内海氏はソニー(現ソニーグループ)、ソニー・コンピュータエンタテインメント(現ソニー・インタラクティブエンタテインメント、SIE)などを経て、1996年にセガの米国子会社Sega of Americaに入社。セガを一時離れ、米Disney Interactive Asia、自身が設立した企業キューエンタテインメント、ワーナーミュージック・ジャパン、サイバードなどで経営に携わった後、2020年にセガ取締役CSO(最高戦略責任者)としてセガに復帰し、2024年に現職となった。

 ゲームを起点に映画や音楽のビジネスにも関わり、外側からもセガを見てきた人物。そう捉えると、セガがトランスメディア戦略に注力する意味も見えてくるだろう。

 「ソニック」や「龍が如く」「ペルソナ」など、世界的人気ゲームタイトルを複数持ちながら、「セガはグローバル戦略で後れを取ってきた」と語る内海氏に、セガのゲームビジネスの現在地と今後の展望を聞いた(取材は2026年6月中旬)。

この記事の流れ

時代にそぐわない組織構造を変革
黎明期から海外市場が視野に入っていたゲーム業界
『STRANGER THAN HEAVEN』は国を越えた普遍的な作品
今も虎視眈々と狙うGaaSの商機
「ゲームを遊ばないゲーマー」がトランスメディア戦略の肝
セガがIP戦略をトランスメディアと呼ぶ意味

時代にそぐわない組織構造を変革

――内海社長の就任以降、トランスメディア戦略に代表されるようにグローバル展開に力を入れています。セガは世界的な人気タイトルをすでに複数持っていますが、改めてグローバルを打ち出す理由は?

内海州史社長(以下、内海) セガはもともとアーケードゲームの開発とあわせ、コンソール(家庭用ゲーム機)を開発、販売していた会社です。それもあって、コンシューマー向けビジネスの中心はコンソールで、ゲーム開発もまずは国内向け、その後グローバルに展開するのが基本的なやり方でした。

 以前のセガは、国内から海外へという文化が強くありました。コンソール中心、あるいは日本市場に軸が寄りすぎていた点を見直し、PC向けも含めてグローバルで同時にビジネスを展開していくスタイルに変革しようとしているのがこの数年の大きな流れです。

――その変革はマーケティングやパブリッシングにおいてですか。

内海 私がセガに戻って最初に管轄したのが開発部門だったこともあり、当初は開発スタジオとしてグローバルに対応していく流れをつくりました。タイトルをリリースするときは、PC向けも含めグローバルで同時に展開していこうということです。

 その後、パブリッシングも管理するようになり、パブリッシングの体制にも手を入れました。当時、セガにはパブリッシングに関わる組織が3つありました。PC向けタイトルを専門に扱う欧州担当、コンソールゲームを扱う日本・アジア担当と米国・欧州担当です。2024年にそれらを2つに整理し、2026年に1つにまとめました。

 開発スタジオもパブリッシングの担当部署も、今はそれぞれがグローバルに向けたビジネスをしています。もっとも、他社を見れば早いところは10年も前からその体制を構築していました。

 セガは米国でもよく知られるゲーム企業ですし、海外で事業をしてきた歴史も財産もあります。しかしどういうわけか組織的には時代にそぐわない、後れを取ってきた部分があったのです。それを数年かけて修正してきたというところです。

黎明期から海外市場が視野に入っていたゲーム業界

――日本のメーカーであっても、ビジネスの軸はグローバルベースで考えるということですね。実際、ゲーム業界はどの国・地域の企業でもグローバルを前提としているケースがほとんどです。「日本のコンテンツを世界へ」という発想で動きがちな他のエンタメと異なる点だと思います。

内海 他のエンタメとは出自が違う点が大きいですね。音楽にしても映像作品にしても、日本におけるエンターテインメントの多くは長い間、テレビを中心としたビジネスモデルだったと思うのですよ。

 一方、ビデオゲームについて言えば、任天堂やSIE、かつてはセガもそこに連なっていましたが、何十年も前から日本の(ゲーム機の)プラットフォーム上でマーケットが構築されていました。さらに言えば、コンソール機登場以前はアーケードゲームで日本企業が海外市場を切り開いてきました。つまり、ビデオゲーム黎明(れいめい)期から国内の各メーカーは、グローバル展開を当然のこととして実践してきたわけです。

 その過程では、もちろん辛酸もなめています。国ごとの流通事情や在庫管理で苦労したり、プラットフォームの不振でソフト市場が広がらなかったり、マイクロソフトという海外のプラットフォーマーが成長してきたり、PCゲーム市場が拡大したり……。セガに関しては、プラットフォーマーとしての役割を終え、サードパーティーと言われる立場へと移りました。

 こうした状況の激変や苦境を、セガを含む大手ゲーム会社は経験してきているのです。ですからグローバルで事業をすること自体はゲームメーカーにとって新しい話ではありません。過去の経験を踏まえた上で、最新の状況にどう対応していくかですね。

――テレビやラジオといった電波を使うメディアは、国内向けになります。そこで主につくられてきたコンテンツとゲームでは背景が異なるということですね。

内海 私はセガを離れていた時期、レコード会社(ワーナーミュージック・ジャパン)にもいましたが、一部を除き、日本の音楽業界の視線の先にあるのはテレビやラジオでした。日本のアニメ作品が世界的にヒットし、その主題歌が世界的に売れるケースが増えて、ようやく海外を意識し始めたようなところがあります。

 もっとも、アニメ作品は国内向けにつくっていたからこそ独自性が生まれ、それが海外で評価されているのですから、ゲームとはやはり歴史や文化がまったく異なりますね。

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