運営20年目を迎えたグリーのモバイルゲーム『踊り子クリノッペ』は、15年目から売り上げがV字回復したという。長期運営しているゲームタイトルは、どう売り上げの減衰やマンネリを乗り越えればよいのか。ゲーム開発者カンファレンス「CEDEC2026」で同社の担当者が再成長プロジェクトの成果を講演した。

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 グリーが運営する『踊り子クリノッペ』は、2007年7月にサービスを開始したモバイルゲーム。飼い主が世話をして、衣装やアイテムを着せ替える育成シミュレーションだ。2026年にサービス開始から20年目に入った。

 同作はサービス開始15年目から売り上げがV字回復したという。2026年7月に横浜で開かれた開発者カンファレンス「CEDEC2026」で、「20年続く長寿タイトルが、15年目にして売上を伸ばせた理由」と題した講演で、長寿タイトルが陥る売り上げの減衰フェーズからどう再成長にこぎつけたのかを同社のプロジェクトチームが紹介した。

 登壇者はグリーのGREE事業本部 クリノッペグループ プロデューサー兼シニアマネージャーの倉又澄氏、同シニアアーティストの春日千晶氏、同ARTマネージャーの松本夏海氏。3人が『クリノッペ』の運営に加わった際、勘や経験則で運営されており、コンセプトが不明確なデザインが多かったり、類似アイテムが多くマンネリ感が強かったりなどの課題があったという。そこでヒットの再現性を高めるために、プロジェクトチームを立ち上げた。

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「モチーフ係数」で勘や経験頼みから脱却

 同社では着せ替え要素があるゲームなどを「モチーフ系ゲーム」と区分している。イベントのテーマやデザインなど、どのようなモチーフに基づいて制作するかが売り上げに直結するタイプのゲームだからという。

 『踊り子クリノッペ』では、まず過去のイベントの売り上げデータから、「モチーフ係数」と呼ぶ指標を作成した。「実施時期や連動施策といった外部要因を除去し、モチーフそのものが持つ純粋な力を数値化した」(春日氏)

売り上げなどからイベントの「強さ」を指標化

売り上げなどからイベントの「強さ」を指標化

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 その上で例えば過去のイベント画像のテーマカラーを色ごとに分類してモチーフ係数を比較。すると、クリノッペでは紫や青などの寒色系の係数が高く、ベージュやカラフルな色だと係数が低い傾向が見て取れたという。「クリノッペのカラーは明るい黄色なので、補色関係にある寒色系が好まれているのではないかと考えた」(春日氏)

 同様に桜やクリスマス、シンデレラやかぐや姫などのテーマについても調べた。するとクリノッペにおいては、ハロウィンやクリスマスなどの季節テーマ、またはシンデレラなどの童話のテーマの係数が高いことが分かった。逆に押し花であったり、ファンタジーの森といったような抽象的なテーマの係数は低かった。

 こうした具合にモチーフ係数が高いイベントで売れ行きに影響する要素として、「テーマ」「動物」「カラー」「トーン」「明瞭性」「その他」の6項目にまとめた評価表を作成した。各評価項目についても、具体的な係数を調整しながら決めていった。

モチーフ係数を6つの要素で構成

モチーフ係数を6つの要素で構成

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6種類の評価項目の係数を調整

6種類の評価項目の係数を調整

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 これにより、新しいイベントを展開する際、事前に予測値を入れておくことで、モチーフ係数の見込み値や売り上げ予測など、勝算を立てやすくなった。さらにイベント後には振り返りを実施し、事前の見込みと実績との差異を確認。差があった場合は対策を考えて次回以降に生かすといった改善も可能になったという。

新しいイベント実施時にモチーフ係数を予測

新しいイベント実施時にモチーフ係数を予測

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振り返りで実績と予測の差を推測し、次回以降のイベントに活用

振り返りで実績と予測の差を推測し、次回以降のイベントに活用

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インフレとマンネリへの対抗策

 講演ではイベントの係数化に加えて、マンネリへの対応方法なども説明した。長寿タイトルは似たようなモチーフのアイテムやキャラクターが登場するため、マンネリ化が発生しやすく、キャラクターやアイテムのクオリティーを高めなければならないというインフレが発生しがちになる。

 このインフレとマンネリへとの対策として、プロジェクトメンバーは3つの対抗策を講じた。まず1つ目はモチーフの掛け合わせ。20年近く運営を続けていると、毎年のように同じテーマを実施する。特にハロウィンやクリスマスのような季節テーマは、過去に何回実施していても、季節需要が高いため実施しないわけにはいかない。

 そこで、例えばクリスマスのテーマに、人気キャラクターである猫を掛け合わせて新規性を打ち出すといった施策を実施した。例えば、サンタクロースのアイテムをたくさん持っている顧客に対しても、サンタクロースの格好をした猫のデザインは見たことがなく、新しいという印象を与えることができる。これにより、「似たようなモチーフへの既視感が払拭され、購買意欲を再燃させることができた」(松本氏)という。

定番テーマに人気キャラを掛け合わせる

定番テーマに人気キャラを掛け合わせる

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 ただし、何でも掛け合わせればいいというものではない。例えば、ハロウィンと黒猫の画像はポピュラーな組み合わせだが、ハロウィンと柴犬の組み合わせはなじみがない。こうした場合は、「モチーフ係数の明瞭性が低い」状態として低い係数を付ける。季節モチーフとキャラクターの相性を見極めることが重要になるという。

 また、ガラケー時代の社内システムを刷新し、描画密度の向上やグラデーションツール、透過機能など、新しい描画方法を実装。髪の毛のツヤや光の表現など、従来よりも繊細な表現のアイテムを制作できるようにした。

 さらにクリノッペを着せ替えるためのアイテムのカテゴリーを追加。洋服、かぶり物、ペイントなどに加えて、デコレーションやヘッドアクセサリー、背中アクセサリーといった新しいカテゴリーを付けることで組み合わせの幅を広げた。

キャラクターの着せ替えアイテムのカテゴリーを追加

キャラクターの着せ替えアイテムのカテゴリーを追加

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