かつてスマートフォンとPCの間に第三の市場を切り開くと期待された携帯型PCゲーム機が、突如として価格高騰の嵐に見舞われている。Valveは先日、看板製品である「Steam Deck」OLED版の公式価格を大幅に引き上げ、その値上げ幅は4割を超えた。この一手は消費者の財布に打撃を与えただけでなく、PCゲーム機市場がここ数年かけて築き上げてきた「いつでもどこでも3A級ゲームを」という美しい幻想を直接打ち砕いた。手軽さの代償が高くつきすぎるものとなった今、PCゲーム機のルネサンスは急速に終幕へと向かっているようだ。

OLED版の価格高騰、ユーザーは「裏切り」と反発

ここ数年、PCゲーム機がマニア向け玩具から大衆の視野に入るまでに成長した背景には、Steam Deckが描いた極めて魅力的な構図があった。わずか399ドル(約6万4000円)で、3A級大作をプレイできる携帯デバイスを手に入れられるというものだ。しかしValveが最近、長らく品薄状態だったOLED版Steam Deckの再販売を確認したところ、その価格戦略は劇的に変化していた。

具体的には、512GBのベースモデルは従来の549ドルから789ドル(約12万6000円)へと約43.72%の値上げ。1TBの最上位モデルに至っては649ドルから949ドル(約15万1000円)へと、実に46.23%もの急騰となった。

この価格改定は、ゲーマーコミュニティでたちまち大騒動を引き起こした。海外のゲーム系インフルエンサーからは「Valveにとってここ数年で最悪の失敗になる可能性がある」との直言も飛び出した。AI産業が民生用ストレージ半導体の生産能力を猛烈に圧迫するというマクロ環境下、ハードウェアの値上げはもはや避けられない業界トレンドとなっているが、それでもこれほどの急激な値上げはユーザーの心理的許容範囲をはるかに超えるものだった。

「人民のGabe」と揶揄されるValveにとって、今回の「強硬策」には苦しい事情がある。Steamのゲームセールは通常、デベロッパーが身を切る値引きであり、Valve側の取り分が減るだけだ。しかしSteam Deckのハードウェアコスト上昇は、Valveが自ら負担しなければならない。Steam Deckの累計販売台数が500万台に迫ろうとも、その数字は巨大なサプライチェーンの中では依然として小さく、Valveがスマートフォン大手のように規模でコストを吸収する交渉力を持つには至らない。

業界全体が重圧に、ゲーム機は「贅沢品」に

PCゲーム機業界の絶対的リーダーであるValveでさえ大幅値上げを余儀なくされている以上、他のメーカーの状況は推して知るべしだ。現在、AYANEO Next 2は予約販売を一時停止し、レノボのLegion Go 2は品薄状態が継続、ROG Xbox Allyもこれに追随して200ドルの値上げを実施した。著名テックメディア「The Verge」は「携帯ゲームの黄金時代は終わった」と嘆くほどだ。

市場をさらに不安にさせているのは、Valveが準備中の新ハードウェアにも値上げの影が覆いかぶさっていることだ。Windows Centralの著名アナリスト、Jez Corden氏がポッドキャスト番組で明かしたところによると、極めて信頼できる内部情報筋から得た話として、未発表の新型ミニPC「Steam Machine」は、昨年初めて情報が出た時点ですでに価格が1000ドル(約15万9000円)に設定されていたという。Corden氏はこの価格が512GB版か2TB版かを明言しなかったが、当時PS5デジタル・エディションが499.99ドルで販売されていた状況を考えれば、極めて高価な設定であることは明らかだ。

仮にSteam Deckの約46%という値上げ幅をSteam Machineの最終小売価格に当てはめれば、上位モデルは1450ドル(約23万1000円)に達する可能性がある。Circanaのアナリスト、Mat Piscatella氏が「Eurogamer」に提供した予測でも、業界トレンドに基づき1200ドル(約19万1000円)という数字が示されている。価格が高騰しても、Corden氏は「再入荷後の高額なSteam Deck OLED版は依然として即完売した」と指摘し、これはValveがより少ない生産量で、よりコアなマニア層を狙おうとしている可能性を示唆している。

「プラスサム」から「ゼロサム」へ、手軽さは価格の壁に勝てず

なぜPCゲーム機が値上げされると、その黄金時代は突然終わってしまうのか。根本的な理由は、Steam DeckやLegion Go 2に代表されるPCゲーム機が、ゲーマーのエコシステムにおいて常に家庭用ゲーム機やPCの「補完的役割」を担ってきたに過ぎず、代替品ではない点にある。PCゲーム機購入者の大多数は、すでにPCか家庭用ゲーム機を所有しており、ゲーム機の購入は消費のアップグレードやプレイシーンの拡張という意味合いが強い。

PCゲーム機の爆発的普及には、強い時代背景があった。スマートフォンの性能向上に伴い、2015年頃からモバイルゲームは重度化し、ARPG、MOBA、FPSといったタイトルが大量に登場したことで、タッチ操作という「ガラスをこする」ような操作感は、次第にハードコアゲーマーの要求を満たせなくなっていった。その後、「原神」「逆水寒モバイル」「Delta Force」といったクロスプラットフォームゲームの登場が、多様なハードウェアでゲームを体験したいという欲求をさらに刺激した。モバイルゲームの繁栄が「いつでもどこでもゲームをする」習慣を育み、PCゲーム機の普及に向けた心理的基盤を築いたと言える。

同時に、AMDが携帯PC向けに設計した「AMD Ryzen Z1」プロセッサを投入したことで、PCゲーム機の性能面での最後の弱点が解消され、ついに3A級大作を快適に動作させられるようになった。Steam Deckの成功方程式はこうして確立された。極めて低いハードルで、ほぼ全てのゲームを動作させられる携帯デバイスをユーザーに提供するというものだ。

しかし、Steam Deckの実売価格が399ドルから789ドルへと跳ね上がった時、状況は質的に変化した。ユーザーはPCゲーム機と他のデバイスとの間で、改めて厳しい選択を迫られることになる。家庭用ゲーム機が値上げに踏み切れるのは、ソニー、マイクロソフト、任天堂が数十年にわたる歴史的慣性を持ち、据え置き機ユーザーが「ソファに寝転んでテレビに向かってゲームをする」という固定観念を形成しており、閉鎖的なエコシステムがユーザーの移行コストを押し上げているからだ。例えばXGPが以前大幅値上げした際も、契約者数は伸び悩んだだけで、減少には転じなかった。

しかしPCゲーム機には、そうした代替不可能性はない。その中核的な売りは「手軽さ」であり、ユーザーが手軽さに対して支払ってもよいと考える金額には上限がある。一度価格がその閾値を超えれば、PCゲーム機は二つの致命的な問いに直面せざるを得なくなる。「すでにPCを持っているなら、なぜこれも買うのか? PCを持っていないなら、なぜ素直にPCを買わないのか?」

高額な価格設定は、ユーザーのPCゲーム機に対する姿勢を、気楽な「プラスサムゲーム」から容赦ない「ゼロサムゲーム」へと変えてしまう。気軽にセカンドデバイスとして購入できない価格帯に達した時、ユーザーは容易に「消費のダウングレード」を選択できる。デスクトップではPCや家庭用ゲーム機で従来の大作を楽しみ、モバイルではスマホゲームに回帰すればいいのだ。いつでもどこでも3Aゲームをプレイするという体験は、3万円で実現するのと7万円で実現するのとでは、全く異なる消費判断となる。一度価格が一線を越えれば、PCゲーム機が「最初の一台」としてPCやスマホに汎用性で劣り、性能では家庭用ゲーム機に及ばないという欠点が露呈してしまう。

手軽さというアドバンテージが値上げの波に飲み込まれた時、PCゲーム機の黄金時代もまた、自然とその終わりを迎えたのである。

WACOCA: People, Life, Style.