1人で遊んでいるのに、ふと見知らぬ誰かのことを考えてしまう。
4月22日にリリースされた『Tides of Tomorrow(タイズ オブ トゥモロー)』は、シングルプレイのアドベンチャーでありながら、そんな奇妙な体験をもたらす一作だ。
本作において、他プレイヤーと直接交わることはない。しかし、誰かの残した選択の跡が自分の世界を変え、自分の振る舞いもまた、見知らぬ誰かの明日へと波及していく。
「先に来たのは、どんな人物だったのか」
「自分のこの選択は、誰かの助けになるだろうか」
リアルタイムの交流を排したからこそ、かえって他者の存在を強く意識させられる。そんな独特のプレイフィールを紐解いていこう。

文/しゃれこうべ村田
編集/kawasaki
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※この記事は『Tides of Tomorrow』の魅力をもっと知ってもらいたいTHQ Nordic Japanさんと電ファミ編集部のタイアップ企画です。
目次
水没した世界と、蝕まれていく身体
舞台となるのは、大規模な洪水によって世界が水に沈んだ未来。島のように点在する拠点で人々がかろうじて生活しているという、なかなかに絶望的な世界だ。
3Dマップを探索し、会話を軸に物語を読み進めていく本作だが、この世界がまた雰囲気たっぷりで良い。
街に踏み込めば、どうせ死ぬならと開き直った住民たちが夜通しパーティーを開いており、そこかしこにプラスチックの塊と化した遺体が転がっている。滅亡待ったなしの世界観の掴みは、なかなかのものだ。
この世界には”プラステミア”と呼ばれる病が蔓延しており、罹患者は徐々に肉体がプラスチック化し、最終的にはプラスチックの塊と化してしまう。そしてプレイヤーが操る主人公・タイドウォーカー自身も、この病に冒されたひとりだ。
プラステミアの症状が進んだ人間は、顔や身体の一部が変質していく
完全な治療法はまだ見つかっておらず、”オーゼン”という薬を吸引して症状を一時的に抑えるしかない。ゲームは30分程度で完了するイベントをこなしていくことで進行していくが、イベントをこなすたびに最大HPが削られていく。
生き延びるためにはどうしてもオーゼンが必要──そんな切迫感を、プレイヤーも身をもって味わうことになる。
他プレイヤーの行動が、自分の世界を変える
本作最大の特徴は、自分より先にその地を訪れた他プレイヤーの行動によって、環境が変化する点だ。
先行したプレイヤーが平和的に事態を解決していれば自分も穏便にことを進めやすく、逆に問題を起こしていれば警備が強化されるなど、他プレイヤーの選択によってマップの環境やストーリーの筋書きが変わってしまう。

これがどれほどの影響を及ぼすのか、わかりやすい例を挙げよう。
フォローしたプレイヤーが筋金入りのトラブルメーカーだった場合、新しい街に到着するたびに「またタイドウォーカーが来た……」と住民から白い目で見られることになる。
目的地への道は塞がれ、警備は強化され、スニークミッション中には恨みを持つ住民に大声で警備員を呼ばれる始末。本来ならすんなり進めたはずの場面で、コッソリ抜け道を探し回るハメになるのだ。
身に覚えのない恨みを一身に受けながら「頼むから迷惑かけないでくれ……」と前のプレイヤーに恨み言を呟く。こんな体験は、他のゲームではなかなか味わえない。
フォローするプレイヤー(シード)を選ぶ際には、“協力的”、“トラブルメーカー”などのステータスでプレイの傾向を知ることができる。フォローする相手はマップ移動の度に変更することも可能だが、つねに誰かしらの影響は受けることになる。

いわゆるMMORPGでも、各プレイヤーの行動によってアイテムの市場価格が変動したり、狩場の需要が変わったりすることでプレイ体験が変化することはある。
ただしそういったケースでは、無数のプレイヤーが少しずつ変化を生み出すため、環境の変化を感じてもそれを引き起こした誰かの存在を意識することはあまりないだろう。
一方で本作の場合、ひとりのプレイヤーをフォローするうえに、「○○(フォローしたプレイヤー)は以前この橋を壊してしまった」などのかたちで、先行したプレイヤーのどんな行動がどのように影響を及ぼしたかが明示される。
NPCたちも行く先々でフォローしたプレイヤーの行動について言及する(黄色い文字で示されるのがプレイヤー名)。直接会うことはないが、自分以外のプレイヤーもこの世界に存在するひとりの人間として描かれる
相手の名前(Steamなどのアカウント名)が表示されるうえに、シナリオや進行ルートの変化というプレイ体験に直結する部分への影響が生まれるため、自然と相手から受けた影響を意識することになる。そして他者からの影響を受けるときと同様に、他プレイヤーに影響を与えた場合もその旨がメッセージで表示される。
自分の行動とその結果がつねにセットで示されるため、自分の選択が他者に与える影響も意識せざるを得ない。
イベントをクリアするごとに結果が表示され、フォロー相手の検索に使うシードのコードも発行される
フレンドをフォローして友人の軌跡を追ったり、好きな配信者の記録をフォローしてNPCたちの反応をアフターエピソードのように楽しんだりと、フォローする相手によってまったく異なる体験が生まれるのも本作ならではの楽しみ方だ。
過去を覗き、他者の行動を知る
他プレイヤーの行動による変化をわかりやすく可視化してくれるのが、タイドウォーカーが持つ”タイドウォーク”──”時潮”を介して過去を覗き見る能力だ。
時潮はイベント進行に関する場面で残る足跡のようなもので、アクセスすることで過去の出来事をビジョンとして再生できる。
オレンジ色や紫色で示される、宙に浮いたアメーバのようなものが時潮。タイドウォークを有効化すると可視化され、視点を合わせることで過去を再生できる
この能力、使い道がなかなかに幅広い。
取引に必要なキーワードを会話の場に居合わせたかのように盗み聞いたり、じゃんけんで相手が出そうとしている手を先読みしたり、地味にセコい使い方をする場面も少なくない。フォローするプレイヤーによって同じマップでも状況が変化するとは言ったが、初めて訪れる場所であれば何がどう変わっているかは気づきようがない。
しかしタイドウォークを使えば、過去のタイドウォーカーが橋を壊してしまった瞬間や、塞がれた道でNPCと交渉している姿などを目撃できる。周回することなしに“じつはこうだったかもしれない状況”を覗けるのは、なかなか不思議な感覚だ。
他プレイヤーの姿と行動がビジョンとして可視化されることで、画面の向こうに実在する誰かの存在をよりはっきりと感じられる。
再生された過去は現実に重なるビジョンのようなかたちで表現される。自分の世界では何もない場所にバリケードが見えるなど、他のプレイヤーとの違いを視覚的に確認できる
ジャンケンで相手が出そうとしている手を盗み見るなど、地味にセコい使い方も可能
時潮は基本的にイベントの進行とともに残されていくが、ジェスチャーを取るか、自分の行動を記録するモードを起動することで、能動的に残していくことも可能だ。
指差しのジェスチャーで進むべき方向を示す、あるいは自分が気に入ったNPCに好意を示すジェスチャーを残しておくなど、後続プレイヤーへのメッセージとして活用できる。
なお、イベントで発生する時潮とジェスチャーで残す時潮は色で判別可能なため、能動的に時潮を残すことで極端な混乱を招くようなことはない。
そう多くはないが、イベントの進行中にジェスチャーを使う場面も
細かいつながりという点では、壊れたハシゴを修理すると別のプレイヤーの世界でもハシゴが直った状態になるなど、『DEATH STRANDING』を彷彿とさせるような要素もある。
修理に必要なスクラップもそれなりに貴重なので、基本的には自分のために修理するハシゴだが、その行動が回り回って見知らぬ誰かの助けになる。こういった細かなつながりが積み重なるほど、フォローしている相手への意識は自然と深まっていく。
修理に必要なスクラップ(ゲーム内通貨)はそれなりに貴重。このハシゴも基本的には自分のために修理するが、その行為が回り回って他のプレイヤーのためにもなる他者を理解し、つながりを深める
毎回フォロー相手を変えるのも同じ相手を追い続けるのも自由だが、個人的にオススメしたいのは同じ相手をフォローし続けるプレイだ。
ゲームをある程度進めると、タイドウォークで情報を得るだけでなく、過去のプレイヤーがどんな選択をしたか推測する必要も出てくる。とある場所では、門番が過去のプレイヤーに「未来のタイドウォーカーを騙すために、報酬と引き換えに合言葉を変更するか?」と質問するビジョンが見える。
合言葉が元のままなのか、それとも変更されてしまったのか──その選択だけはビジョンに映らず、自分の判断に委ねられる。信じるか、疑うか。答えのない問いを前に、けっこう悩んでしまう。
それまではビジョンを見れば答えが出ていただけに、自分で判断を求められるとけっこう悩んでしまう
同じプレイヤーをフォローし続けていれば、それまでのプレイで相手がどんな選択をしてきたか、どんな傾向を持つ人物かがうっすら見えてくる。「この人はきっとこうするだろう」という感覚を頼りに判断を下し、それが正解だったときの感覚がなんとも言えず気持ちいい。
直接会ったことも、言葉を交わしたこともない相手なのに、一方的に覗き見ることで積み上げた”読み”が当たる瞬間──ある意味で、これが本作の最大の醍醐味かもしれない。
追い詰められるからこそ、重くなる選択
道中で怪我人に出会って回復アイテムを譲る、といったイベントはRPGでもよくあるものだ。そういった場面で必要なアイテムはたいして貴重でもなく、ためらいなく差し出せるのが常だろう。しかし本作はそのあたりの事情がまるで違う。
プラステミアはイベントを進行するごとに最大HPが低下するというかたちで、蝕まれていく主人公を容赦なく表現する。
HPバーのメモリは最大8つなのに対し、一度のイベントで減少するメモリは2個。つまりイベントをこなすたびに体力の1/4が削られていく計算だ。オーゼンを吸引することで最大HPは回復できるものの、1本で回復できるメモリはひとつだけ。
おまけにゲーム内通貨であるスクラップとの交換で購入する際も価格はそれなりに高く、しかも前のプレイヤーが買い占めていれば売り切れていることすらある。
気持ちとしては10本でも20本でも持っておきたいのに、気づけばいつも手持ちが心もとない。じわじわと追い詰められていく感覚は、なかなかに効いてくる。
新しいマップを訪れ、イベントを完了するたびに最大HPが減少する。これがかなりキツい
そのオーゼンが、オンライン要素に絡んでくる。プレイヤー間で共有される寄付ボックスがあり、ギリギリの状況で見つけた寄付ボックスのオーゼンに救われる場面もある。誰かが自分のために残してくれたのだと思うと、じんわりとありがたさが沁みる。
そして、次は自分が譲る側になろう、と善意が巡っていく仕組みだ。
とはいえオーゼンは本当に生命線なので、寄付できるかどうかはプレイヤーの余裕次第。命の危機に瀕しながら「次のプレイヤーのために1本だけ残す」という選択ができるのか──本作はそこを静かに、しかし確実に問いかけてくる。
寄付ボックスにはオーゼンとスクラップの出し入れが可能。オーゼンを取る代わりに気持ちばかりのスクラップを置いていく、などの選択にもプレイヤーの個性が出るだろう
この問いかけは、NPCへの選択にも及ぶ。
物語を通して交流するエイラもプラステミアに苦しんでおり、自分よりも他人を優先して治療するべきという考えを持っているせいもあって症状は深刻だ。
自分に余裕があるときはためらいなく譲れるオーゼンも、最大HPが残り2メモリという崖っぷちの状況では話が変わる。吸っておかないと次のイベントで力尽きてしまうかもしれない。
それでも、目の前で苦しんでいる相手に差し出せるか。そんな極限の問いを、ゲームがさらりと突きつけてくるのだ。
優先するべきは自分の身の余裕か、他人を思いやれる感覚か。ゲームが進み最大HPが削られるほどにオーゼンひとつの価値は大きくなり、決断にも迷いが生じる
ほかのゲームなら、多少身勝手な選択も笑い話で済む。しかし本作では、自分の行動が見知らぬ誰かの世界に影響することをつねに意識させられる。「お天道様が見ている」という感覚とでも言えばいいだろうか。
シングルプレイのゲームでそんな言葉が頭に浮かぶとは思っていなかった。
なお本作では、利己的に生きるか、他者との共存を目指すか、あるいは自然を優先するかという大きな方針の選択もあり、プレイヤーの個性が出やすい。
会話がメインの作品ではあるが、ボートでの海上戦やタイドウォークを使ったバトルなどミニゲーム的な要素も随所に挟まるため、単調になりすぎることはない。
旅のなかでは宗教色の強い団体や洪水に飲まれた世界で暮らす巨大な魚のような生物など、多彩な人物、生き物が登場。誰に肩入れするか悩ましい
基本的には会話がメインだが、場面によってはボートでの海上戦やタイドウォークを使って相手の動きを読むバトルなども。単に物語を楽しむだけのゲームではない
ソロプレイで遊んでいるのに、見知らぬ誰かのことを考えてしまう。直接交わることのない他者の存在を感じ、自分が誰かに与える影響を考えさせる本作のオンライン要素は、シングルプレイとも従来のマルチプレイとも異なる、独特のゲーム体験をもたらしてくれる。
直接つながらないからこそ、他者の存在に想いを馳せる。
そんな奇妙で温かい体験は、本作でしか味わえないものだ。
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