Valveが2025年11月に発表した新型「Steam Machine」は、2026年前半の発売を見込みつつ、現時点でも価格は未公表のままです。そうした中、レトロエミュレータ環境構築ツール「EmuDeck」の開発元が、自ら手掛けるSteam Machineの対抗馬「Playnix」の販売を開始しました。AMD Radeon RX 9060 XT 16GB(RDNA4、32CU)を搭載したArchベースのLinuxミニPCで、価格は8BitDo製コントローラー込みで$1,139(日本円にして約18万円)。Batch #1はすでに完売し、現在はBatch #2の受注を受け付けています。本稿では、Playnixのハードウェア構成と、Steam Machineとの性能差、そして国内のPCゲーマー・エミュレーション愛好家にとっての実用性を検証します。

3Dプリント筐体にRyzen 5600とRDNA4 32CUを収めた構成

Playnixは、320×247×64mmの3Dプリント筐体を採用したミニPCです。初代PlayStation 5(390×260×104mm)と比較すると体積はおよそ半分で、リビングルームでの設置性を重視したフォームファクタと言えます。小規模メーカーゆえのコスト事情でFDM方式の3Dプリント筐体を採用しており、開発元は「色ムラや側面の軽微な跡が残る場合がある」と明言しています。

主要スペックは、公式サイトの製品データシート(Batch #2)で次のように記載されています。

CPU:AMD Ryzen 5 5600(6コア、3.5GHz、TDP 65W)
GPU:AMD Radeon RX 9060 XT(RDNA4、32 CU、TDP 150W、VRAM 16GB GDDR6)
メモリ:16GB DDR4-3200MT/s デュアルチャネル
ストレージ:512GB NVMe SSD(追加のM.2 NVMeスロットあり)
電源:Flex 600W
冷却:NoctuaおよびThermalrightファン
ネットワーク:Wi-Fi 6E / Bluetooth 5
映像出力:HDMI 2.1、DisplayPort 2.1(いずれも4K 120Hz / 8K 60Hz HDR対応)
その他I/O:USB 3.0×2、USB 2.0×4、USB-C 3.1×1、Gigabit Ethernet
OS:PlaynixOS(Archベースの独自Linuxディストリビューション)
同梱品:本体、4K HDMIケーブル、電源ケーブル、8BitDo Ultimate 2 Wirelessコントローラー

注目点は、デスクトップ向けRadeon RX 9060 XTの16GB版を採用している点です。VRAMが16GBある構成は、エミュレーション用途(特にPS3や高解像度化したレトロタイトル)で有利に働きます。空きM.2スロットを残しており、ストレージ増設の自由度も確保されています。さらに、冷却にNoctua・Thermalrightという自作PC界で高評価の静音ファンを採用している点は、長時間稼働時の動作音にも配慮があることを示しています。映像出力はHDMI 2.1とDisplayPort 2.1の両方を備え、いずれも4K 120HzおよびHDR出力に対応します。

EUを拠点とする企業として、2年間の保証が付帯します。Batch #1は完売しており、現在受注中のBatch #2は、RAM価格などの部材コストに応じて価格が調整されるため、将来のBatchでは価格が変動する可能性がある旨も告知されています。リードタイムは2週間以上を見込むべきです。

Valveの「Steam Machine」との性能差:スペック上は明確な優位

Playnixの位置づけを理解する上で、Valveの新型Steam Machineとの比較は避けて通れません。Valveが2025年11月12日に公開した公式スペックによれば、Steam MachineはセミカスタムAMD Zen 4(6コア12スレッド、最大4.8GHz)と、RDNA3ベースのGPU(28 CU、最大2.45GHz、8GB GDDR6)、16GB DDR5を搭載し、本体サイズは約156×152×162mmの立方体形状です。Digital Foundryなど海外メディアの初報では、GPU性能はおおむねRX 7600クラス、XboxシリーズSとPlayStation 5の中間に位置付けられると評価されています。

EmuDeck開発者のRodrigo Sedano氏は、自身のPatreon投稿でSteam MachineのGPUを「カットダウン版のRadeon 7600 non XT相当」と表現し、自ら実機テストした経験から「RX 9060 XTは7600の約1.5倍の性能を持つ」と述べています。複数の独立したベンチマーク集計サイト(bestvaluegpu.com、technical.city、PCBench.net等)によれば、RX 9060 XT 16GBはRX 7600に対して、合成ベンチで約37〜52%、実ゲームの平均フレームレートで約19〜23%上回るとされており、Sedano氏の「約1.5倍」主張は最大ケース寄りながらも概ね妥当な範囲です。加えて、Steam Machineの28CUはRX 7600の32CUより少ないため、Playnixとの実効性能差はさらに広がる可能性があります。

また、VRAMの差(Playnix 16GB/Steam Machine 8GB)は、モダンなAAAタイトルやエミュレーションの4K化において明確なアドバンテージとなります。映像出力面でも、Playnixは4K 120Hz対応のHDMI 2.1と DisplayPort 2.1を備える一方、Steam Machineは開発者向け資料によるとHDMIフォーラムの仕様上の理由からフルスペックのHDMI 2.1ではなくDisplayPortでの4K 120Hz出力を推奨する設計となっており、接続するテレビを選ぶ点に留意が必要です。

一方で、Steam MachineはValveが直接手掛けるハードウェアであり、Steam Controllerが付属すること、SteamOSとの深い統合が前提であることなど、エコシステムとしての完成度ではなお優位性を持ちます。Playnixは小規模な独立開発者プロジェクトという性格上、長期的なソフトウェア更新体制は未知数という見方が必要です。

日本のエミュレーション・Linuxゲーミング層に刺さる一台

Playnixはスペインからの全世界発送を謳っていますが、日本への配送可否や関税、技適の取り扱いについては購入前に個別確認が必要です。特に同梱の8BitDo Ultimate 2 Wirelessコントローラーは、国内販売版個体であれば技適取得済みですが、スペイン発送版がどの仕向地向けかは公式に明示されていません。本体内蔵のWi-Fi 6E / Bluetoothモジュールについても、同様の確認が購入前のチェックポイントとなります。

それでも、Playnixには国内ユーザーにとって明確な魅力があります。EmuDeckという、Steam Deck上で事実上の標準的地位を築いたエミュレーション構築ツールの開発元が、自らハードウェアまで仕上げた製品である点です。PlaynixOS上ではEmuDeck環境が最適化された状態で動作することが期待でき、Linuxに不慣れなユーザーでも、据え置き型のエミュレーション機として即座に運用できる完成度が見込めます。自作派にとっても、Ryzen 5 5600とRX 9060 XT 16GBの組み合わせで同等構成を組む選択肢は十分あり得ますが、Playnixの$1,139という価格には、3Dプリント筐体、専用OSのチューニング、コントローラー、HDMI・電源ケーブル、そして2年保証までが含まれています。

結論として、Playnixは「Steam Machineの正式発売を待てない」「Linuxベースのリビングゲーミングを手間なく始めたい」「将来的にGPUやストレージを差し替えて延命したい」という3つの条件に当てはまるPCゲーマー・レトロゲーマーにとって、有力な候補となるはずです。国内への直接発送の可否と技適の確認を個別に済ませられる方、そして「完成品としての動作保証と専用OSの最適化」に$1,139を投じる価値を見出せる方にとって、うってつけの一台と言えます。Batch #2の在庫は限定的であり、Batch #3以降は部材コストで価格が上振れする可能性もあるため、購入を検討しているならば早めの判断が求められます。

出典:Notebookcheck、Playnix公式(製品ページ)

参考:EmuDeck(Patreon投稿)、Tom’s Hardware、Engadget、GameSpot、Wikipedia(Steam Machine)、XiaomiToday、bestvaluegpu.com、Technical City、PCBench、Dimensions.com、Wikipedia(PlayStation 5)

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