本記事は『ぽこ あ ポケモン』の具体的な内容に言及しています。
プレイをある程度進めた上でお読みください。
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『ぽこ あ ポケモン』の世界を覆う大災害の爪痕は、日本各地で実際に災害を経験したプレイヤーにとっては辛い記憶と重なる部分も多かったでしょう。カントー地方のモデルである関東地方は、直下の発災は1923年の関東大震災以来大きなものは起こっていませんが、2011年の東日本大震災では千葉県に到達した津波で死者も出しています。もしも同様の災害が関東直下で起きれば、ゲームの中の描写さえ生ぬるい程の被害をもたらすでしょう。カントー各都市のモデルとその近辺で起きた災害を照らし合わせると、あの光景が決して大げさなものではないことが浮かび上がってきます。
最初に復旧を行う「パサパサこうやの街」はもともとはセキチクシティで、その位置は房総半島の南部である館山に相当します。関東大震災では都心同様に市街地の被害は甚大で、約6mの津波も観測されました。人的被害もさることながら、館山ではこのときに高さ2m程の地盤隆起が発生しました。周辺の海岸では固い岩盤が持ち上がっているのを確認することができます。(動画2:40を参照)。内陸に向かって段丘が連なっていることから、館山では大地震の度にこうした隆起が発生しているのが分かります。
『ぽこポケ』においても海側に向けて一番下の黒い岩盤が露出しており、上部の地形の浸食がないことから段階的ではなく一度に持ち上がったのではないでしょうか。そして、それだけの隆起を起こす地震も同時に発生したということです。
クチバシティの位置は現実における千葉市に当たり、東京湾の最奥にあるため津波の大きな被害はあまり記録されていません。しかし房総半島沖を震源とした1703年の元禄地震の際には、隣接する船橋、浦安に2m級が観測されているので、千葉市側にもそれに近い規模の津波が来ていたと推測されます。建物のモデルである横浜では同じ元禄地震で4m、関東大震災では2m級で400人の死者を出しています。外海よりは比較的守られている東京湾でも津波が来るときは来る、それが実情です。
「まっさらな街」があるのは東京湾の入り口にある三浦半島に当たり、ポケモンセンターがあることからトキワシティからマサラタウンにかけてのエリアでしょう。クチバシティに大津波が押し寄せたなら、外海に近いこのエリアは更に大きな被害を受けていたのは間違いありません。
関東大震災では三浦半島はまさに震源域の中程にあり、セキチクやクチバを壊滅させた「カントー大震災」が起こったとしたら、マサラ、トキワの近辺は津波や地盤の変化が直撃しています。跡地はポケモンセンターの残骸だけを残して全て撤去された状態の「まっさらな街」になっていますが、これは甚大な被害故に復旧を諦め、全て更地にして新興住宅地にする予定だった、もしくは跡形もなく海に沈んで流されてしまったと考えられます。いずれにしても他以上に甚大な被害を受けたことは間違いありません。開拓する分には確かに便利ではありますが、かつての主人公が旅立った実家もオーキド博士の研究所も全部無くなってしまったという残酷な事実を突きつけられます。
海辺から離れたニビシティも分厚い火山灰に覆われて、家を建てるにも整地が困難な状態になっています。カントー地方で火山と言えば伊豆大島がモデルのグレン島で、『金・銀』に登場したときには、当時は全島避難を実施した1986年の三原山噴火からあまり時間が経っていないこともあり、噴火の被害を受けて島のほとんどは埋もれた状態になっていました。本作ではそれに匹敵する被害を巨大なスケールで体験するだけあって、改めて自然の力のすごさを見せつけられます。
ニビシティは一般的に群馬県に位置すると言われており、長野県との県境には度々大噴火を起こす浅間山があります。1783年に発生した天明大噴火は江戸の暮らしにも影響を与えた歴史的なもので、このときに山麓部にあった鎌原村は大規模な土砂崩れに巻き込まれました。土砂は高さ7mにも及び、高台にあった観音堂を除いて村全体が土砂の奥深くに埋もれました。日本のポンペイと例えられるように、現在行われている発掘作業で当時そのままの家屋や日用品、死の瞬間そのままに保存された遺骨が出土しています。このときに流れた溶岩流は広大な火山岩の地形になり、鬼押出という黒い岩で出来た奇岩地帯になっています。ニビシティは周囲を覆う「くろいいわ」の厚さから、鎌原を押し潰した天明大噴火に匹敵する、または上回る規模の災害に襲われたと見ていいでしょう。
いつどこで災害が起こってもおかしくない――それはポケモン世界も我々の住む世界も同じです。いつも通りの明日が来る保証はどこにもありません。だからこそ、常に過去から学び、考え、備える。その心構えを忘れないようにしましょう。
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