
南渕明宏昭和医科大教授(C)日刊ゲンダイ
【医療のミカタ 医療のフシギ】#52
「毎日新聞」を愛読しています。
先日、小学校の授業で、昔話についてみんなでいろいろな角度から考察して意見を出し合う「STEAM教育」をやっている、という記事を目にしました。
あの大臣の文部科学省が推進しているようで、ホームページによると、STEAMとはサイエンス、テクノロジー、エンジニアリング、アート、マスマティックス(数学)という視点から、目の前の出来事を解釈して、課題を見つけ、解決し、新しい価値を創造する、というものだそうです。
まあ、しかし、どうせ政府の事業です。2年以内に水蒸気(STEAM)のように消えてしまうことでしょう。
せっかくですから、文科省はどうしてこういうことを言い出したのか、早速、STEAMで解明してみましょう。
文部科学省の奸僚の考えることですから、目的は天下り先の確保。これが原点かもしれません(サイエンス)。
テクノロジーとしては、叙勲をエサに「わきまえた」御用学者チームの編成。
随意契約の丸投げでのスマホのアプリ開発はエンジニアリング。
アートとしては、成功例をでっちあげてナラティブな感動的ストーリーで宣伝する。
最後の数学ですが、これは夫婦別姓の小学生へのアンケート調査で炸裂した、回答の選択肢を狭めて都合のいい回答だけを採用する得意のPバリュー・ハッキング炸裂、というところでしょうか。
それにしてもオトナの日常は理不尽で満たされています。目の前の理不尽を「見て見ぬふり」「考えてはいけない」ことと職場で強いられている人がほとんどでしょう。生活を支えるため、仕方がないのです。
理学療法士のAさんは、とあるリハビリ病院を3カ月で退職しました。理事長兼院長が職員の休憩室にお菓子の差し入れをしたのですが、翌日、職員全員にAさんの人間性を罵倒するメッセージがLINEで届いたそうです。
その病院では理事長の差し入れに対して即座にお礼のメッセージを送らなければならない、というルールがあったのです。それを知らなかったAさんは理事長にとって非礼、常識知らず、人でなしだったのです。
しかし、Aさんが退職を決めたのは、「こんな理事長の下では働けない」という理由ではありません。そういった非常識が常識としてまかり通っている医療界に幻滅したからです。
医療人たるもの、世間知らずで了見の狭い医者がたくさんいることはよく知っています。このリハビリ病院でも、理事長から自分を中傷罵倒するメッセージが上司や同僚に送られても、次の日から何事もなかったように皆は働いているのです。
では、STEAMでこの事案を分析してみましょう。
まずサイエンスとして、まあこの程度の幼稚な病院理事長は日本中、そこかしこにいます。この病院の理事長はその一サンプルにすぎません。
次にテクノロジーですが、やはり経営者の権力で従業員を徹底支配するやり方でしょう。小さなミスでも激しく叱責する恐怖政治です。
エンジニアリングとしては職員全員をLINEで管理している点でしょう。
アートは理事長が描いた地獄絵でしょう。
最後の数学は、それでも病院の経営は安定、というところでしょうか。
なるほどSTEAMは素晴らしい! 目の前の出来事を分析、解明できるじゃないですか! 文部科学大臣と知人女性との議員会館での会合についても、皆さんでSTEAMやってみましょう!
(南渕明宏/昭和医科大教授)
