
レビュー&テキスト:松澤健
Super Audio Cart 2 製品概要
レトロ・ゲームのサウンドを収録したソフト音源。1970〜2000年代にかけてのゲーム機、サウンド・チップから厳選した19種類をサンプリングし、6,000を超えるサウンド・ソースを収録。バージョン1からUIが刷新され、サウンド・ソース・ブラウザーにより音源の検索が容易になっている。

各レイヤーのゲーム機イラストを押すと、サウンド・ソース・ブラウザーの画面が表示される。その中のIFL(Impact Factory Library)は、PCM系サウンドを再現したサンプル音源ライブラリーだ
音色のレイヤーは最大4つで、それぞれを個別に制御可能。レイヤーごとにアルペジエイターやステップ・シーケンサーを搭載し、40種類以上のエフェクトをかけることもできる。さらに、独自のモジュレーション・システムMODRIXにより、LFOやエンベロープ・ジェネレーター、MIDIノート、ベロシティ、X/Yパッドなどの制御信号を各パラメーターへ柔軟に割り当てられる。なお、すべてのサウンドは再作成されたもので、ロイヤリティフリーで使用可能だ。

エフェクト画面。各レイヤーには40種類以上のエフェクトをかけることができる

MODRIXシステムの画面。MODRIXは、LFOやエンベロープ、MIDIノート、ベロシティ、X/Yパッドといった制御信号を、各パラメーターに割り当てられるモジュレーション・マトリクスだ
ゲーム好きがニヤリとするネーミング
一昔前のゲーム音楽の特徴は、音色そのものにもあると思う。例えば1990年代初頭のPCMサウンドは、単音“ド〜”という音を聴くだけでそれと分かるほど、音色自体がアイコン化されている。これは、ほかの音楽ジャンルではなかなか見られない特徴ではないだろうか。
このSuper Audio Cart 2はそんなゲーム音源らしさを凝縮したマルチソフトウェア音源である。前作のバージョン1では、NES、GEN、SNESなどのゲーム機のサウンドを収録していたが、本作ではPS(PSX名義)、N64、GBAが追加された。UIも大きく刷新され、特にサウンド・ソース・ブラウザーにより、音色の選択がより分かりやすく容易になった。
試しにその中にある“Recreation”というタグを選択すると、特定のゲームで使われたかのような音色がずらりと並び、音色名も“Shinra Piano FFVII”などニヤリとするものだ。Recreationにひも付けられていない音色でも、例えば“DOOooz“はN64のローンチ・タイトルのメイン・テーマで使われたメロディ音色にそっくりだ。本ソフトのサウンドはすべて独自制作のため、権利的にもクリーンな状態で使用できる。
MIDI鍵盤で生演奏するのも楽しい
本ソフトのPCM系サウンドは、当時のゲーム音楽制作と全く同じプロセスで再サンプリングされているとのことだ。その質感を味わうために、“IFL(Impact Factory Library)”を選択してみよう。これを選ぶと、同一のサンプル・セットを元に各コンソール向けに制作されたサウンド・セットが大量に表示される。例えば“Acoustic Grand Piano”を見てみると、GBA/N64/PSX/SNESの4種類が並んでおり、それぞれの音源の特徴が非常によく再現されている。GBAはかすれた音が混ざる印象で、N64はやや硬質、PSXは1990年代らしいリアル風、SNESは独特のプレーンな音色だ。思わず“これこれ!”と膝を打ってしまった。これらのサウンドに優劣はなく、あるのは個性のみである。
もちろん、エフェクトやアルペジエイター、フィルター、細かなルーティングやモジュレーションといった要素も充実しており、自分なりの音作りを突き詰めることができる。
本製品はDTM初心者にもお薦めしたい。マルチ音源として一通りの音色がそろっているうえ、エフェクトで過度に加工しなくても、素のままで味わいのある音色が得られるため、作曲やアレンジに注力できる。当時っぽさを出すためには同時発音数を抑えるとよい。MIDIキーボードを併用して、手弾きによるライブ・パフォーマンスを楽しむのも面白いだろう。
松澤健
【Profile】マツケん名義で2007年からYouTubeに動画を投稿。会社員の傍ら、ゲーム実機音源楽団(NES BANDなど)のリーダーとしてのライブ活動、駅メロの制作など多岐に活動中。
IMPACT SOUNDWORKS Super Audio Cart 2
31,218円(為替レートによって変動)
REQUIREMENTS
⚫OS:Mac/Windows
⚫容量:約20GB
⚫共通:INTEL Core i5/Apple Silicon以上、4GBのRAM(6GB以上を推奨)、64ビット専用、AAX/AU/VST3プラグイン・フォーマットまたはスタンドアローンで動作、NATIVE INSTRUMENTS Kontakt Playerバージョン7.10.7以上に読み込んで使用
