デル・テクノロジーズから「Dell 14」の新型モデルが発売されました。同社はPCブランドのリニューアルを進めており、今回レビューをお送りするモデルは従来「Inspiron」ブランドで展開されていたラインナップを引き継ぐ、同社のノートPCの中では標準モデルに位置づけられます。
価格も7万円台とかなり手ごろで、ゲーミングPCやクリエイター向けのワークステーションなどは必要ない、標準的なPCとして買い替えを行う際に有力な候補になるモデルです。
新たに発売されたDell 14は、AMD製のCPU「Ryzen 200」または「Ryzen 300」が搭載されています。今回は「Ryzen 7 250」を搭載する、Dell 14の最小構成モデルをお借りし、最新の標準モデルが、どこまでのパフォーマンスを備えているのかをチェックしていきます。
Dell 14の仕様と外観をチェック
Dell 14はその名の通り、14インチのディスプレイを搭載するノートPCです。バリエーションとして16インチディスプレイを搭載する「Dell 16」も同時に発売されており、自宅やオフィスから持ち出す頻度など、ユースケースで2モデルから標準モデルを選択できます。
今回レビューをお送りするDell 14ですが、搭載CPUはAMD製の「Ryzen 7 250」。Zen 4ベースで8コア、16スレッド、動作クロックは最大5.1GHzと標準モデルながらかなりパワフルです。
メインメモリは16GB、ストレージは512GB。CPUも含め同社の公式サイトではカスタマイズを行い、より上位の「Ryzen AI 300シリーズ」や、32GBのメインメモリといった、高性能の構成を選ぶこともできます。
ディスプレイの解像度は1920×1200ピクセル。従来のノートPCよりも縦に広い16:10のアスペクト比で、情報量の多い資料の閲覧や縦に長いWebサイトの閲覧も快適です。非光沢仕上げ、かつ視野角の広いIPS方式のディスプレイなので、上下左右どこから見ても画面は見やすく、映り込みを気にしてディスプレイの角度や見る向きを試行錯誤しないのでいいのも、使い勝手がいいと感じました。
ボディカラーはシルバー。金属感のある塗装で質感も高くまとまっています。構成によって筐体の素材が異なり、今回レビュー用にお借りしたモデルは樹脂製ですが、樹脂製であることを感じさせない仕上がりは、標準モデルであってもちょっといいノートPCを使っているような満足感が得られそうです。
外部接続端子は充実しています。本体左側面には電源端子(ピンプラグ)、HDMI映像出力、USB Type-A(USB 3.2 Gen 1/5Gbps)、給電や映像出力にも対応するUSB Type-C(USB 3.2 Gen 2/10Gbps)があります。
本体右側面にはセキュリティワイヤーのロックスロット、USB Type-A(USB 3.2 Gen 1/5Gbps)、3.5mmのステレオヘッドフォン・マイクジャック、フルサイズのSDカードスロットがあります。USB Type-A端子が左右に1つずつあるため、特に有線のマウスを繋ぐ際はケーブルの取り回しがしやすい点は高く評価できます。
Webカメラはディスプレイ上部、ベゼル部分にあり、解像度は720pです。カメラの独自機能はありませんが、Windowsスタジオエフェクトの背景ぼかしや自動フレーミングを利用できるため、ビデオ会議の利用が多い人には嬉しい仕様です。

Webカメラはシンプルかつ標準的な性能のものが搭載されています

メーカー独自機能はありませんが、Windowsスタジオエフェクトに対応しているので、Web会議などでの利用であれば不自由することはなさそうです
キーボードはフルサイズのJIS配列で、キーストロークもノートPCとしては十分深め。打鍵間もキーがふにゃっとすることなく心地よくキータイプができます。トラックパッドはクリックボタン一体型の大型タイプで、こちらも操作感は良好です。マウス操作が難しい場面でもストレスなく利用でき、2本指や3本指のジェスチャー操作にも対応しています。

フルサイズのキーボードと大型のクリックボタン一体型トラックパッドが搭載されています

キーボードはノートPCとしては十分に深いストロークがあり、打鍵感も良好です
付属するACアダプタですが、最近のノートPC向けのACアダプタとしては大きめです。電源ケーブルは取り外し可能で、ACアダプタとの接続部分は3ピンです。Dell 14は付属のACアダプタ以外に、USB Type-C端子での充電にも対応しているので、別途持ち運びにコンパクトな充電器を用意すると使い勝手が大きく改善できそうです。
専用ユーティリティの機能は控えめながら、ツボは抑えてある
筐体の質感も高く、キーボードやトラックパッドの操作感も優秀。あとはメーカー独自の工夫、使い勝手の部分もチェックしていきます。
今回テストしたDell 14に限らず、最近のPCは以前に比べるとメーカー側でプリインストールされている独自ソフトが少なくなっています。その上でメーカー毎の使い勝手の工夫が感じられるのが「専用ユーティリティ」です。PCの様々な設定を、メーカー独自で変更できるソフトで、どのような変更が加えられるか、どんな便利な機能があるかで、使い勝手の良し悪しが判断できます。
Dell 14にプリインストールされたユーティリティ「Dell Optimizer」ですが、設定項目は少な目でした。「電源とバッテリー」の項目ではバッテリー残量に加え、内蔵バッテリーの劣化状態の確認を行うことができます。加えて「温度管理」では、冷却ファンの動作モードを変更することができます。
性能重視か、静音重視か。普段は性能重視の最適化やウルトラパフォーマンスを使用し、新幹線や図書館など周囲に気を配る場面では、静音モードを選ぶといった設定変更を行うことができます。
またディスプレイの色味もカラープロファイル機能で簡単に、視聴したいコンテンツにあわせたものに変更が可能です。 通常時は「オフ」にすることでPC操作に最適化された表示になりますが、視聴コンテンツにあわせた設定に変更したり、ブルーライトカット機能である「ComfortView」への変更を行うことができます。

本機独自の設定変更はDell Optimizerから行えます

動作モードから、性能と動作音、どちらを重視するか選ぶことができます

カラープロファイルでコンテンツに最適化したディスプレイ表示を選ぶこともできます
Dell 14のパフォーマンスをチェック
最後は実際に、Dell 14のパフォーマンスを各種ベンチマークソフトを利用して確認していきます。まずは搭載されているCPU「Ryzen 7 250」の性能を、CINEBENCH R23で確認しました。テスト結果はシングルコアで「1153ポイント」、マルチコアで「8977ポイント」で、ノートPCとしては標準的なスコアです。
ブラウジングやドキュメント作成、画像編集やビデオ会議など、一般的なPC操作を想定したテストをまとめて実施できるPCMark 10を実行しました。こちらの結果は「5133ポイント」で、現在のノートPCの性能としては一般的ですが、買い替え元になるであろう3~5年前のノートPCからすると、だいたい2倍近いスコアです。Dell 14がデルのノートPCの中では標準的なモデルであることを考えると、一般的なPC操作をする限り、まずストレスを感じることなく利用できるでしょう。
そしてDell 14に搭載されている「Ryzen 7 250」ですが、他社CPUに比べると内蔵GPU性能が高いことが売りになっています。Dell 14の性質を考えるとゲームで遊ぶことはメーカーもユーザーもあまり想定していないと思いますが、3D性能をテストできる「3DMark」で、DirectX 11をテストする「Fire Strike」、DirectX 12をテストする「Time Spy」を実行しました。
それぞれスコアは「1753ポイント」「4203ポイント」で、これも5年ほど前のノートPCと比べると倍近いスコアです。もちろん重量級ゲームを快適にに遊べる性能ではないとはいえ、日常利用では画像の多いWebサイトの閲覧や動画視聴において、グラフィック性能が不足することもなさそうです。

新しめのゲームに多いDirectX 12も、従来のノートPCに比べれば2倍近い性能で処理できます

DirectX 11であれば意外と優秀なスコアが出ているので、軽量なゲームであれば遊べなくはなさそうです
最後にノートPCに求められるバッテリー稼働時間を、PCMark 10のバッテリーベンチマークでテストしました。テストシナリオは「Modern Office」で、ドキュメント作成やブラウジングなど、一般的なPC操作でどれだけバッテリーが持つかをテストしています。結果は「9時間29分」と、まるっと1日、充電器なしで利用できそうな稼働時間でした。
もちろん使い方次第なので常に9時間以上バッテリー稼働するとは言えないのですが、大学の授業を何コマが受け続けたり、外回りの営業仕事に持ち出したとしても、ACアダプタの出番はなかなかなさそうです。
Dell 14は「ノートPCの標準」を再定義する、まとまりのいい1台
デル・テクノロジーズから登場した新しい「Dell 14」ですが、同社のノートPCのラインナップの標準モデルであると同時に、市場のノートPCの標準を再定義する、実にまとまりのいい1台です。
7万円台からの価格は高騰化するPC本体の価格からするとかなり安く、悪くいえば「値段なりの性能なのでは」と勘ぐってしまうのですが、実際に試してみると、現在の一般的なPC操作に必要な性能を備えていることがわかります。外観、質感といった面でも価格以上に満足度が得られる出来栄えだと感じました。
先日サポートの終了したWindows 10を搭載するPCからの買い替えや、Windows 11を搭載していてもコロナ禍の頃に導入したPCからの買い替え、どちらであっても「普通に使える、丁度いいノートPC」として、Dell 14はおすすめできる1台です。
