デベロッパーのTeam Cherryは8月21日、アクション・アドベンチャーゲーム『Hollow Knight: Silksong』(以下、Silksong)を9月4日に配信すると発表した。本作は長らくリリースを望まれてきた作品であり、告知から2週間足らずの発売となる点にコミュニティは沸き立っていた。一方で、“発売日被り”が突然明らかになったゲーム開発者からは、悲鳴も寄せられている。
『Silksong』は、高評価メトロイドヴァニア『Hollow Knight(ホロウナイト)』の続編だ。本作では前作にも登場したホーネットというキャラクターを主人公とし、シルクと歌に支配された古代のムシ王国を冒険する。
『Silksong』は、もともとは前作『Hollow Knight』向けのDLCとして企画されたものの、規模が大きくなったことで新作として開発されることになり、2019年2月に発表された。当初は2023年前半のリリースが計画されていたが延期され、今年に入るまで配信時期未定の状態が続くことに。そして8月21日、ついに9月4日にリリースされることが発表された。
2週間後のリリースという、半ばサプライズ的な発売日発表には前作『Hollow Knight』ファンを中心に喜びの声も多く寄せられている。一方で一部ゲーム開発者からは“悲鳴”も見られる。
延期続出
Our v1.0 launch was set for Sept 9, but with today’s Silksong news we’ve made the tough call to postpone. A new date is coming soon, thank you all for the love and support ❤️ pic.twitter.com/Lh07iGLHHn
— TALEGAMES (@Talegamesnews) August 21, 2025
たとえば2023年12月6日から早期アクセス配信をおこなっているドット絵メトロイドヴァニア『Faeland』は、正式リリースを9月9日に迎える予定だった。しかし『Silksong』が9月4日にリリースされるという発表を受け延期。『Silksong』とはメトロイドヴァニアというジャンルの被りもあるため、決断に至ったものと思われる。延期後の具体的な日付は今後発表予定とのこと。
🚨GAME DELAY 🚨
due to Silksong (can’t wait to play) launching just a day after CloverPit, we decided to delay our release
our new release date is 26th Sept
we poured our hearts into our little game, so we want to give it the best possible shot. thanks for understanding!! pic.twitter.com/QwKwBrBuFJ
— Panik Arcade 🕹️ making CloverPit 🍒🎰 (@PanikArcade) August 22, 2025
またローグライク・スロットマシンゲームの『CloverPit』開発元Panik Arcadeも、同作の延期を発表した。もともと同作は9月3日のリリースが予定されていたが、Team Cherryの発表により、『CloverPit』の翌日に『Silksong』が発売されることになった。そのため3週間ほど延期し、リリースを9月26日に改める判断を下したようだ。
このように『Silksong』との発売日被りを受けた、延期の決断も散見される。一方で、“延期できない”事例もあるようだ。
避けられない被り
『Splatterbot』の開発を手がけるtanka2d氏は、「RIP. My game is launching the same day as Silksong(安らかに眠れ。自分のゲームは『Silksong』と発売日が被った)」と海外掲示板Redditにて投稿。『Splatterbot』はPC(Steam)/Nintendo Switch向けにリリースされる予定の塗りつぶし対戦アクションだ。プレイヤーはお掃除ロボット風の機械を操作して、相手より広い範囲を塗りつぶすことで勝敗を競う。本作は2024年7月に発表され、今年8月14日に9月4日のリリースを告知していた。
発売日も発表し、後はリリースを控えるのみとなった『Splatterbot』ながら、そのわずか1週間後に『Silksong』の発売日が発表され、あろうことか同日のリリースが確定してしまったわけだ。tanka2d氏によれば、本作のマーケティング展開の都合上、今から延期するのは難しいと説明。“発売日被り”のダメージを最小限に抑える方法はないかと助言を募った。同スレッドにはRedditユーザーからの多くの反応が集まっており、コメントでは“被り”の嘆きを共有したことで、『Splatterbot』がかえって今まで以上に注目されるのではないかとの見方も寄せられた。
なおtanka2d氏は、ソロプレイを主体とした『Silksong』と、マルチ対戦ゲームである『Splatterbot』は直接競合しないだろうとも考えているそうだ。とはいえ発売当日には『Silksong』の方がメディアの注目をすべて攫ってしまうだろうと懸念しているとのこと。ただスレッド内には、同作のお陰で各ストアプラットフォームへのエンゲージメントも高まるという見解があり、同氏もこれをポジティブな側面として受け止めている様子。いずれにせよ発売後のデータを分析し、Redditにてまた共有するとのことだ。スレッド内で寄せられた励ましやアドバイスを受け、気持ちを切り替えた様子もうかがえる。
『Hollow Knight: Silksong』
“被りの恐ろしさ”は『Silksong』以外にも
ちなみに今回の『Silksong』に限らず、かねてより注目作との発売日被りは業界で懸念されてきたトピックだ。たとえば直近では『グランド・セフト・オート6』(以下、GTA6)との発売日が発表される以前には、業界が戦々恐々とする様子も見受けられた(関連記事)。
一方で、大作との発売日被りは、ジャンルの大きく異なるゲームであればむしろメリットであるとの考え方を示す業界人も存在。ソニー・インタラクティブエンタテインメントにてPlayStationのCreators部門の責任者を務めるGreg Rice氏は、『GTA6』の登場によりゲーム機を購入した人が、同じゲーム機向けにリリースされる、“被った”ゲームにも目を向ける可能性があるという見方を示していた。また幅広い客層を抱えるゲーム業界では、大作と異なるジャンルのゲームであれば競合することもなく、成功出来る作品もあるといった意見を述べていた(関連記事)。『Silksong』と『Splatterbot』は先述のとおりジャンルが大きく異なっており、成功の機会があるといえそうだ。
大きく話題となっているゲームとの発売日被りを避けるか、あえて宣伝に活かすかという対応の差は、開発元の意向によるところはあるだろう。たとえばDevolver Digitalはあえて『GTA6』の発売日にあわせて新作を出すと宣言しており、注目を集めている(関連記事)。いずれにせよ今年の9月以降には特に、人気シリーズ続編のリリースが集中しており、被りを避けられる発売タイミングは限られているだろう。『Splatterbot』の発売後の動向も含め、「別ジャンルの注目作との発売時期被り」が売上にどの程度の影響を及ぼすのかは引き続き注目のトピックとなりそうだ。
『Hollow Knight: Silksong』は、PC(Steam/Microsoft Store)/Nintendo Switch 2/Nintendo Switch/PS5/PS4/Xbox Series X|S/Xbox One向けに9月4日配信予定だ。Xbox/PC Game Pass向けにも提供される。
『Splatterbot』はPC(Steam)/Nintendo Switch向けに同日に配信予定。Steamストアページ表記によると日本語にも対応する見込み。