「無双してる」「無双する」という言葉を、いつから日常で使うようになったか覚えているだろうか。筆者は、プレイステーション 2で初めてプレイした「真・三國無双」を通じて、この言葉を知った。このゲームがなければ、「無双」という言葉を日常で使うことも、三国志の世界に触れることもなかったかもしれない。
そんな「無双する」という言葉を人々に体感させ、「三国志」と共に世間に浸透させた革新的なゲーム「真・三國無双」が、2000年8月3日に発売されてから本日で25周年を迎えた。
本作は、数百〜千体の雑兵を一掃するアクションゲームで、プレイヤーは敵陣に乗り込み、迫り来る敵を蹴散らしつつ、全体の戦況を把握しながら自軍を勝利に導いていく。
剣や斧などの様々な武器でコンボをつなげながら敵を倒していく多彩なアクション、戦略性を活かしたリアルタイムシミュレーションの要素、そして魅力的な武将たちが織りなす史実をモデルにした重厚なストーリーが、ゲームを彩った。
発売以降、「一騎当千の爽快感」を売りにして人気を博した本作は、現在ナンバリングタイトル、スピンオフタイトルともに多くの作品が発売されている。
今回は、ゲーム史における「無双」という唯一無二のジャンルを確立した「真・三國無双」の25周年を記念して、本作の魅力を改めて振り返っていく。
【【ω-Force 20th】歴代OP集3『真・三國無双』】
対戦型格闘ゲーム×歴史シミュレーションの融合が生み出した新しいアクションゲームの形
本作は、「一対多数」の一騎当千の爽快アクションを繰り広げるのが特徴のゲームだ。
筆者は、RPGなどじっくり進めるタイプのゲームはどちらかというと苦手。始まったら目の前の敵を「倒せばいい」くらいシンプルな方がよく、それゆえ学生の頃は「バーチャファイター」(セガ)などの一対一の対戦型アクションゲームを好んでプレイしていた。
そんな筆者のゲーム体験に「一対多数」という状況で、かつて感じたことのない快感を植え付けたのが本作だった。
本当にそんな状況になってしまったら袋の鼠にされて一巻の終わりだが、このゲームの中ならプレイヤーは周囲に群がる数多の敵を物ともしない「強者」として立ち回れるのだ。
※ゲーム画像は公式サイトより(以下、同)
そもそも、対戦型格闘ゲーム×歴史シミュレーションの掛け合わせも新鮮だった。
各ステージでやるべきことは明確でありながら、プレイヤーの行動によって戦況も変化するリアルタイムシミュレーション要素が、対戦型ゲームの明快さを残しつつも、これまでになかった「戦場への没入感」を体感させてくれる。自軍を勝利に導いた時の達成感も、爽快感に拍車をかけている要素のひとつでもあった。
簡単だけど時々トリッキー。キャラクターごとの個性的なアクションが面白い!
「真・三國無双」には、23名のプレイアブルキャラクターが登場する。好きな武将や好きなビジュアルのキャラクターを選んだり、キャラクターによって使用する武器も異なるので、使いたい武器から選ぶのも楽しい。
典型的な眉目秀麗のキャラクターが好みの筆者は、本作では呉軍の知将「陸遜(りくそん)」をメインに使用していた。武器も飛燕剣(双剣)でアクションもカッコよくてお気に入りなのだが、陸遜を気持ちよく使うには意外とコツが必要だった。
陸遜(りくそん)
当たり前だが、選択するキャラクターが使用する武器によって攻撃範囲に若干差が出る。
例えば、蜀軍の趙雲や関羽だと長物を使用するのでリーチも長く、チャージ攻撃でも一気に周囲の敵が吹き飛んでくれる。陸遜の場合、長物を扱うキャラクターと比較するとリーチが若干狭く、コンボを繋げるのも少々難しい(※これはあくまでも筆者のプレイ技術での話になるので、もちろん陸遜を使いやすいと感じるプレイヤーもいるだろう)。攻撃の特徴を掴んでいかにして多くの敵を倒していくか、この辺りはプレイヤーの技量が出る、リアルなアクションにこだわった作品ならではの面白さでもあるだろう。
ギリギリまで敵を集めて一気に蹴散らす!「無双乱舞」こそシリーズの最大の醍醐味!
たとえ使いこなすのにコツのいる武器や動きのキャラクターでも、周囲に大量の敵を集めて、無双ゲージも満タンになると、いよいよ本作の真価が発揮される瞬間がくる。
コントローラーの「⚪︎」ボタンを押して発動する「無双乱舞」だ。
「無双乱舞」は、全キャラクター共通して周囲の敵を一気に吹き飛ばすスペシャル攻撃で、発動中はいわば無敵状態になる。
さらに、プレイヤーが瀕死状態になると無双ゲージが溜まる速度が速くなる仕様にもなっている。この仕様を活かして、ボス戦で瀕死になったら全力で逃げ回り、無双ゲージが溜まったら再びボスに突撃して「無双乱舞」してまた逃げる、ということをよくやっていた。特に自分のレベルが上がっていない状態での猛将・呂布戦では、呂布とほぼ鬼ごっこ状態だ。
余談だが、呂布はシリーズが進むにつれて攻撃パターンやモーションが洗練され、より手強く、魅力的なボスキャラクターとして確立された。回を増すごとに圧倒的な強さの演出に磨きがかかっており、おかげでリアルに「猛将」に立ち向かうメンタル(恐怖心)を味わえている。
しかし、どんな敵が相手でも無双乱舞が決まると本当にスカッとする。この「無双乱舞」こそが「真・三國無双」シリーズが持つ唯一無二の楽しさだと考える。
新作が発表される度に派手な演出になっていく「無双乱舞」を見て、「このキャラ使いたい!」と思わせてくれるので、飽きっぽい筆者でも長くシリーズを追い続けられている。
爽快感と没入感に音楽でバフをかける! 開発チーム「ω-Force」による突き抜けた「無双サウンド」
本作を語るのにサウンド面はどうしても外せない。まさに「一騎当千のタクティカルアクション」を、重厚なギターサウンドと、うねるような重めのドラムのグルーブが見事に表現している。
アクションゲームにギターロックサウンドはよくあることだが、本作のサウンドには全体的にしっかりと重さを感じる音が使われていて、妥協を感じない突き抜けたハードロックサウンドだ。
プレイヤーのテンションを掻き立てるのに十分過ぎる華やかさと、アクションゲームらしい疾走感で、珍しくオープニングを飛ばすことなく毎度しっかり堪能していた。限界までテンションを上げて、キャラクター選択をして戦場へ赴く。音楽によって仕上げられたプレイヤーのテンションは、紛れもなくこれから大群を蹴散らしてやろうとする血気盛んな三国志の英雄そのもの。
もちろん戦場で流れるBGMも素晴らしい。アクションゲームのノリを全面に押し出した、戦場に合わせてタイプの異なるかっこいいロックサウンドがプレイヤーを盛り上げる。
そこに攻撃SEや、戦況を表すSEが加わることで、より一層爽快感と没入感が高まっていく。特に戦況が悪化した時のSEが流れると焦る。夢中になっているとついつい戦況を無視して進軍しがちな筆者は、戦況悪化の音が聞こえた時に初めてマップを凝視する。「まずい、反対側が大変な状況のようだが、かなり遠い」と慌てて戦場を走り回る。そして間に合わずに自軍の総大将が倒され、何も守れなかった英雄が爆誕するところまでがわりと毎回ワンセット。
猪突猛進なスタイルでも十分楽しめるが、きちんと戦況を見ながら進軍する方がより本作の世界観を楽しめるだろう。とはいえ、さすがにシリーズを追うごとに多少は戦況を把握しながら進めるようになった。その方がストーリーの流れをより深く味わえることに気づいたのだ。
【【ω-Force 20th】歴代OP集3「真・三國無双」】
話が外れたが、ミリオンヒットとなり、本作が広く認知されるキッカケにもなった「真・三國無双2」(2001年9月20日発売)のオープニングは、無双ファンには一番馴染みのある曲でもあるだろう。まさに「真・三國無双」というシリーズを多くのプレイヤーに強く印象付かせたに違いない。後にシリーズ最強の武将としてプレイヤーに恐れられるキャラクター「呂布」のテーマ曲の原型にもなっている。
【【ω-Force 20th】歴代OP集4『真・三國無双2』】
また、「無双シリーズ」では、メディアミックスの一環として、この特徴的なヘビーロックサウンドを活かしたキャラクターソング集もいくつかリリースされている。
プレイ中に流れる無双サウンドが織りなす世界観の中で、人気キャラクターたちの歌唱を初めて聴いた時は衝撃だった。キャラソンがリリースされるのは日常茶飯事の時代でもあったので特段驚くことでもないのだが、「無双シリーズ」に硬派な印象を抱いていたので、なんだか無双の武将が歌うというイメージが湧きにくかった。
当時購入したアルバムでは、5人のキャラクターが歌唱していたのだが、筆者がシリーズ通して使い続けてきた陸遜(CV. 野島健児さん)が歌う「Crimson Wings」を聴いた時は、曲と歌唱のあまりの解釈一致に深く感動した。
他にもかなり印象深い曲がある。呂布(CV.稲田徹さん)が歌う「KING OF DESTROYER」という曲だ。前述した「真・三國無双2」のオープニングテーマがキャラクターソングとしてアレンジされた楽曲で、あの呂布が「うおぉおぉ!OH!邪魔だあぁぁあ!」と元気よく歌っている。いつ聴いても無条件で持っていかれる曲だ。呂布がすごく可愛い。まだ聴いたことがないファンは是非聴いていただきたい。
【CD「キャラクターソング集 真・三國無双6 王覇・響歌乱舞」】
2018年3月17日には、コーエーテクモゲームスの開発チーム「ω-Force」(オメガフォース)の生誕20周年を記念し、同チームが手掛けた「真・三國無双」や「戦国無双」、「討鬼伝」のサウンドが生で堪能できるライブイベントも開催された。
キャラクターソングやドラマCDだけじゃない。2.5次元舞台や実写映画など多種多様なメディアミックス展開される「真・三國無双」シリーズ
25年に渡り積み上げられてきた本作のキャラクターや世界観は、メディア展開によりあらゆる形で表現の幅を広げていった。
2021年に公開された実写映画「Dynasty Warriors」は、三国志の荒々しい戦乱を舞台に、ゲームさながらの派手なアクションシーンとキャラクターが再現され、戦闘演出の完成度の高さに感嘆したファンや、逆に作品自体の外連味を楽しむファンもいたりと様々だったが、結果的に「真・三國無双」の世界的認知を広めた。原作ゲームファンとしてはどちらかというと後者だったが、それはそれとして楽しめる作品だった。
【実写 − 劉備・関羽・張飛の無双乱舞 | 真・三國無双 | Netflix Japan】
2021年10月22日に公開された香港・中国・日本の合作映画。監督のロイ・チョウ、脚本のトー・チーロンによって、後漢末期の動乱の時代を舞台に、曹操、劉備、関羽、張飛、呂布などの武将たちの活躍が描かれた
また、「真・三國無双」20周年を記念して、2020年8月に上演された「舞台 真・三國無双〜赤壁の戦い IF〜」(原作・監修:コーエーテクモゲームス)では、ゲーム本編の「赤壁の戦い」のIF(もしも)物語が描かれた。
ゲームや映画などの映像とは異なった視覚体験と、演劇という生ものでしか体感できないリアル、ゲーム本編では見ることのできない貴重なストーリーというところが、原作ゲームファンにはたまらなく熱い。当時舞台に出演していたキャストも、ジャニーズJr.からイケメン2.5次元俳優という、本作の魅力でもあるキャラクタービジュアルを最大限に再現した錚々たるキャストで上演されていたことから、2.5次元化への力の入れようが伺える。
2020年8月20日〜8月24日にかけて「日本青年館ホール」にて上演された。孫権役に稲葉光(ジャニーズJr.)さん、諸葛亮役に室龍太さん、劉備役に中村誠治郎さん、趙雲役に大隅勇太さん、郭嘉役に丘山晴己さん、周瑜役に健人さん、陸遜役に輝山立さんetc……と人気キャストが揃い踏みだった。また、構成・演出・振付には西田大輔氏、殺陣振付に西田大輔氏・六本木康弘氏と、2.5次元舞台の華やかなアクションに相応しい布陣で届けられた
歴史ファンタジーが題材となると、表現の幅がかなり広く、メディアミックスとしては色々な方向性があり、実際に多岐に渡っている。そんな中でも筆者的としてはぜひ、実際に目の前で生の無双の世界を体験できる2.5次元舞台を引き続き展開していただきたいと切に願っている。
「真・三國無双」が生んだ「真・三國無双2」はシリーズ原点にして頂点
「無双シリーズ」も最初から今のスタイルだったわけではない。シリーズのベースとなっている前作「三國無双」では、1対1の3D対戦型格闘ゲームだった。
発売当時、本作でガラッと一新されたゲーム仕様に衝撃を受けたプレイヤーもいたのではないだろうか。
そして「真・三國無双」で見出した本シリーズの方向性はそのままに「真・三國無双2」(2001年9月20日発売)で大幅なグラフィックの向上や中断機能の追加、2人同時プレイ、フルボイスなど、全体的にアップデートされた結果、発売から1年で117万本というミリオンヒットを叩き出し、以降続くシリーズの根幹が完全に完成した作品となった。
【真・三國無双2】
その後、本作が築いたブランドを証明するかの如く「真・ガンダム無双」(2013年12月19日発売)や「ゼルダ無双」(2014年8月14日発売)など、本作と人気タイトルがコラボしたスピンオフ作品も続々と発売され、今や無双シリーズは一つの文化としてゲーム業界に浸透している。
【真・ガンダム無双】
【ゼルダ無双】
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現在発売されているシリーズ最新作「真・三國無双 ORIGINS」(2025年1月17日発売)では、プレイヤー自身が主人公となって黄巾の乱から赤壁の戦いまでを体験するストーリーになっていて、ここでまたひとつ、シリーズとしても新しい展開を見せてきた。
【真・三國無双 ORIGINS】
後続のシリーズもプレイしていると、「真・三國無双」「真・三國無双2」で作られた土台がしっかりと受け継がれていることがわかる。まさに原点にして頂点とも言えるシリーズだろう。
こうした目覚ましい進化から、制作チームである「ω-Force」が本物のアクション体験を常に追求しながら作品を作り続けていることが感じられる。まだまだ「一騎当千の爽快感」を様々な形で届けてくれるに違いない。
これからも、お気に入りのキャラクターで「無双乱舞」して日々のストレスを発散させていこうと思う。25周年、心よりお祝い申し上げます。
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