7月22日~24日にかけて、パシフィコ横浜 ノースにて開催のゲーム開発者向けカンファレンス「CEDEC2025」。本稿では23日に行われた「300万本売ったインディーゲームのプロデューサーだけど、もうSteamでは今までのプロデュースでは限界かもしれない ~2000万かけてメディアを作ったワケ~」をレポートする。

本講演はインディーゲームのプロデュースと販売を手掛けてきた「WSS playground」代表の斉藤大地氏と、「ゲームゼミ」主筆で「I.N.T.」の編集長を務めるJini氏が、レッドオーシャン化したSteamの現状や現在のSteamで成功するための課題などについて語った。

斉藤氏が語る成功の理由と、その後のSteamに起きた変化
「大資本の総力戦」となり、従来の攻略法が通用しなくなったSteamでこれからインディーが成功するために欠かせないこととは?【CEDEC2025】の画像
「大資本の総力戦」となり、従来の攻略法が通用しなくなったSteamでこれからインディーが成功するために欠かせないこととは?【CEDEC2025】の画像

「NEEDY GIRL OVERDOSE」や「Touhou Luna Nigts」など28本のインディータイトルを我流でプロデュース。累計300万本以上を販売するという実績を持つ斉藤氏だが、近年Steam市場が成熟してきたため、これまでの自分の攻略法ではもう限界かもしれないという。

まずは自身が実践してきた「Steam攻略法」を紹介。開発者、スタッフが優秀だったことはもちろんだが、そのうえでSteamに早期参入したこと、目立つ要素で露出したことを成功要因に挙げた。

「大資本の総力戦」となり、従来の攻略法が通用しなくなったSteamでこれからインディーが成功するために欠かせないこととは?【CEDEC2025】の画像

ゲームは本来、プロモーションに莫大な予算がかかるが、Steamは無料で強力な露出を提供してくれる。さらに、Steamはストアでもあり、PV数を稼げれば即売上につながるため、斉藤氏はSteamでの露出をどうやって取るか、ずっと考えながらやっていたそうだ。ことにトップ画面での露出は強力で、この枠を取るために運営元のValve社とも交渉を行っていたことを明かした。

トップ下部に表示されるランキングも強力な露出のひとつ。かつては1万本くらい売れればここに掲載され、さらに売り上げを伸ばすことができたという。

「大資本の総力戦」となり、従来の攻略法が通用しなくなったSteamでこれからインディーが成功するために欠かせないこととは?【CEDEC2025】の画像
「大資本の総力戦」となり、従来の攻略法が通用しなくなったSteamでこれからインディーが成功するために欠かせないこととは?【CEDEC2025】の画像

閲覧・購入履歴からおすすめが表示される「ディスカバリーキュー」、システムやジャンルなどの共通点のあるゲームを特集する「テーマフェス」の存在も大きいという。特にテーマフェスはゲームとテーマがかみ合うと、ものすごく売れるそうで、発売日よりも多く売れたこともあったと振り返る。

何より大きいのが、これらがすべて「無料」であることを再度強調。広告費用不要で露出できるので弱者でもエントリー可能で、これがインディーゲーム文化を大きく支えたのだという。そして、この2019~22年頃のSteamの恩恵を享受できたことが成功の最大の理由であると語った。

「大資本の総力戦」となり、従来の攻略法が通用しなくなったSteamでこれからインディーが成功するために欠かせないこととは?【CEDEC2025】の画像
「大資本の総力戦」となり、従来の攻略法が通用しなくなったSteamでこれからインディーが成功するために欠かせないこととは?【CEDEC2025】の画像

いかにユーザーの注目を集めるかという部分で、斉藤氏が取った戦略が「目立つ要素」と「固定ファンor旬のジャンル」の融合だ。氏のプロデュースした作品では「NEEDY GIRL OVERDOSE」がネットカルチャーとドット絵のADV。「ロードス島戦記-ディードリット・イン・ワンダーラビリンス-」が強力なIPとメトロイドヴァニアを組み合わせたもので、いずれもヒット作となっている。

このように、「Steamをメディアと捉え、そこでいかに目立つかが基本戦略だった」と斉藤氏は言う。また、TwitterとYouTubeによるバイラルも大きかったそうだ。これらの戦略がフィットし、2019~22年は10万本以上のヒットが連続したというが、2023年以降にリリースされた「少年期の終り」「BLADE CHIMERA」は思ったほどヒットしなかったそうだ。

「大資本の総力戦」となり、従来の攻略法が通用しなくなったSteamでこれからインディーが成功するために欠かせないこととは?【CEDEC2025】の画像
「大資本の総力戦」となり、従来の攻略法が通用しなくなったSteamでこれからインディーが成功するために欠かせないこととは?【CEDEC2025】の画像
「大資本の総力戦」となり、従来の攻略法が通用しなくなったSteamでこれからインディーが成功するために欠かせないこととは?【CEDEC2025】の画像

最大の要因はSteamでリリースされるゲーム数の増加だ。2022年から24年の間に1か月にリリースされる本数は千本、年間では6千本も増加している。さらに、過去の名作もセールスなどでしっかり売れるため、新作だけではなく、これらの過去作品とも戦わなければならなくなった。

1回ヒットした作品が長期にわたって売れ続けるので、一定のプロモ費用があれば結果を出し続けることが可能という状況にあり、必然的にランキングではフルプライスやF2Pが強くなる。そのため、大手にとってはまだまだSteamの存在は大きく、逆にインディーにとってはかなり不利な状況にあるそうだ。

「大資本の総力戦」となり、従来の攻略法が通用しなくなったSteamでこれからインディーが成功するために欠かせないこととは?【CEDEC2025】の画像
「大資本の総力戦」となり、従来の攻略法が通用しなくなったSteamでこれからインディーが成功するために欠かせないこととは?【CEDEC2025】の画像

つまり、今のSteamは予算、ブランド、集団制作がものをいう「資本の総力戦」というべき時代になっているわけだ。加えて、斉藤氏の手法も一般的になり、もはや「目立つ」だけで露出を獲得するのは難しくなっている。

こうした状況を打破する手段を探るべく、斉藤氏は気鋭のゲーム批評家・Jini氏とともに世界のスタジオへの取材を敢行。さまざまなインディークリエイターにインタビューを行ったそうで、そこで得た成果をJini氏が紹介していった。

「大資本の総力戦」となり、従来の攻略法が通用しなくなったSteamでこれからインディーが成功するために欠かせないこととは?【CEDEC2025】の画像
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Jini氏が取材の中で得たインディーで生き残るための3つの要素
「大資本の総力戦」となり、従来の攻略法が通用しなくなったSteamでこれからインディーが成功するために欠かせないこととは?【CEDEC2025】の画像

Jini氏らが取材を通して得ようとしたのが「インディーゲームの成功者はどんな武器を持っているのか」ということ。そして、過当競争状態にあるSteamで成功している会社が武器にしているのが「コミュニティ」、「デモ」、「Agency」の3つであることがわかったという。

「コミュニティ」の成功事例として紹介されたのが、インディー開発会社・Massive Monsterが手掛ける「Cult of the Lamb」。子羊がカルト教団を率いるというブラックなローグライクアクションゲームで日本でも高い人気を誇っているのだが、本作はDiscordに14万人規模のコミュニティを持っているのが強みだという。

この巨大なコミュニティを通じて常にゲームの動向が拡散されていくため、多くのユーザーが次回作やDLCにもついてきてくれるという状況が生まれている。さらに、地元ベースのリアルコミュニティも存在しており、オンラインとリアルの両方に強力なコミュニティを持っていることが成功の大きな要因になっているとのことだ。

「大資本の総力戦」となり、従来の攻略法が通用しなくなったSteamでこれからインディーが成功するために欠かせないこととは?【CEDEC2025】の画像
「大資本の総力戦」となり、従来の攻略法が通用しなくなったSteamでこれからインディーが成功するために欠かせないこととは?【CEDEC2025】の画像

次に、ドイツのGrizzly Gamesが手掛けたミニマルなストラテジーゲーム「Thronefall」を「デモ」の事例として紹介。このゲームがヒットした理由のひとつが、SteamNextフェスでのDemo版がValve社から表彰されたことだと述べた。

SteamNextフェスはSteamでリリース予定のさまざまなDemo版を体験できるというもの。大企業はDemo版に消極的なところが多いことからインディーが目立ちやすいそうで、ここで注目されるとウィッシュリストを増やす、コミュニティに入ってもらうなどのメリットを得られる。そのため、これからのインディーゲーム開発においてDemo版は欠かせないものになるとのことだ。

「大資本の総力戦」となり、従来の攻略法が通用しなくなったSteamでこれからインディーが成功するために欠かせないこととは?【CEDEC2025】の画像
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3つめの「Agency」の事例は、2023年のゲーム・オブ・ザ・イヤーに輝いたLarian Studioの「バルダーズ・ゲート3」。本作も独立資本で開発されたインディーゲームで、インディーの中でもっとも成功したゲームのひとつとされている。

開発会社Larian Studioは世界の7か所に拠点を持ち、しかもすべての拠点が同等の機能を持つなど、インディーながら圧倒的な開発体制を持つ。そんなLarian Studioが重視しているのが「Agency」だ。日本語では「行為主体性」というべきもので、ディレクターは開発者それぞれが持つ「Agency」を信じているのだという。

そうすることで開発者ひとりひとりが「これは自分のゲームだ」と思うことができるようになる。おのずとディレクターのビジョンがスタッフたちに宿り、集合無意識のように理想のゲームが見えてくると考えているそうだ。

実際「バルダーズ・ゲート3」は、そうしたLarian Studioの理想が反映されたゲームになっている。言うなれば、ここは200人のインディーゲーム開発者が集まっている会社というわけだ。

「大資本の総力戦」となり、従来の攻略法が通用しなくなったSteamでこれからインディーが成功するために欠かせないこととは?【CEDEC2025】の画像
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これからインディーで生き残ろうとするなら「コミュニティを育てよう」「デモを作ろう」「チームならAgencyを尊重しよう」という3つの考えが必要というJini氏。これらの論を踏まえたうえで斉藤氏はプロデューサーとして世界が求める「ユニーク」を、個人の作家と、この国の中に発見したいという考えを披露し、今回の講演を締めくくった。

「大資本の総力戦」となり、従来の攻略法が通用しなくなったSteamでこれからインディーが成功するために欠かせないこととは?【CEDEC2025】の画像
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なお、CEDEC 2025は8月4日午前10時までタイムシフト配信が行われている。本稿はあくまでダイジェストというべきもので、より詳細な内容を知りたい方は下記の公式サイトをチェックしてみてほしい。

CEDEC2025公式サイト
https://cedec.cesa.or.jp/2025/

※画面は開発中のものです。

本コンテンツは、掲載するECサイトやメーカー等から収益を得ている場合があります。

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