サン電子が1985年7月に発売したアーケードゲーム「いっき」が、今月で40周年を迎えた。
本作は主人公の農民、権べ(2Pは田吾)を8方向レバーとカマ(鎌)発射ボタンで操作して敵の忍者を倒しつつ、マップ上にある8枚の小判をすべて取るとステージクリアとなるアクションゲームで、2人同時プレイも可能。敵に捕まる、または手裏剣など敵の武器に当たるとミスとなり、権べのストックがなくなるとゲームオーバーになる。全8ステージで、ステージ8をクリアすると2周目に突入する。
以下、本稿では筆者がゲームセンターで遊んでいた当時の記憶をたどりつつ、本作ならではの面白さをまとめてみた。
驚きと笑い、そして涙をもたらした前代未聞の和風アクションゲーム
筆者が本作を最初に遊んだのは、確か1985年の8月、夏休み期間中に出掛けた親戚宅の近くにあったデパート内のゲームコーナーだった。
筐体がズラッと並び、その多くが宇宙空間を舞台にしたシューティングゲームだった店内にあって、ひと際異彩を放つ純和風のビジュアルはすぐに目に留まった。デモ画面を見ると、お百姓さんがお代官様に土下座する、まるでテレビの時代劇みたいなシーンが流れていたことに驚き、同時に「何をして遊ぶゲームなんだろう?」と興味も抱いた。
さらにデモ画面を見ていたら、ステージ1の途中までプレイする様子が流れ、武器となるカマをその場で振るのではなく、敵の忍者に投げ付けて倒すゲームであることがわかった。「面白そうだな」とは思ったが、同時に「ちょっと難しそうだな……」との印象も受けたので、すぐに100円玉を投入する決断ができなかった。
ところが、である。別のゲームを遊んだ後に本作のデモ画面を再び見たら、今度はお座敷に並んだお侍さんたちが土下座を繰り返し「やってくんさい!」と懇願するアニメーションが流れたので、思わず笑ってしまった。今振り返ると、お侍さんたちの愉快な演出が「じゃあ、試しに遊んでみるか!」と、筆者の財布のヒモを緩める一番のきっかけとなったように思えてならない。
筆者が当時大笑いして、100円玉を入れる決断に至った思い出のデモ画面
本作を初めて遊んだときに「これはスゴい!」と思ったのが、投げたカマが権べの最も近い位置にいる敵の位置に自動で飛んで行くことだった。
てっきり敵のいる方向にレバーを入力して攻撃するのかと思いきや、予想だにしていないホーミング機能が備わっていたので正直びっくりした。敵の忍者の手裏剣や刀、体当たり攻撃をかわしつつ、近付いてきたタイミングでカマを放って倒すのは、なかなかどうして快感だった。
カマは2連射が可能で、近くの敵に向かって自動で飛んで行くアイデアが斬新だった
しかし、敵もさるもの引っかくもの。ホーミングするカマはとても便利だが、同時に多くの忍者が出現した場合は、どの敵に向かってカマが飛ぶのかが全然読めず、怖くて容易に近付けない。後に、カマは権べに最も近い位置の敵を狙うことが判明したが、最初はまったく気付かなかった。
たまに出現する、赤い服を着た忍者は高速で移動するので、ホーミング機能を持ったカマでもなかなか倒せない。4人1組で出現する鉄砲隊は、ずっと囲いの中にいたまま動かないので、最初は単なる背景画像かと思ったら、接近すると一斉に弾を撃つ。のんびりしたBGMとは裏腹に、やはり「難しいゲームだなあ……」と率直に思った記憶がかすかに残っている。
高速で移動する瞬間、体を分身させる赤の忍者
正面から近付くと、一斉に発砲してくる鉄砲隊
忍者や鉄砲隊以外にも、嫌らしい敵が目白押し。不気味な顔の腰元に抱き付かれると、権べはしばらくの間動けなくなってしまう。墓場などに出現するオバケに捕まると移動はできるが、今度はカマが投げられなくなるペナルティを受ける。
しかも、困ったことに腰元とオバケは、どういうわけかカマを当てても倒せない。オバケはマップ上にあるお地蔵様に触れば引き離せるが、腰元に抱き付かれた場合は振りほどく手段がなく(※2人同時プレイ時はパートナーが救出することが可能)、その間に忍者が接近すると心臓に悪いことこの上ない。当時は腰元が出現するたびに「アッチに行け、このい○りや○介!!」などと画面に向かってよく叫んでいたように記憶している。
何度か本作を遊んでみて、筆者が最も理不尽だと思ったのが、ミスした後のリスタートの場面だった。本作は、ミスをした地点からゲームが再開されるが、リスタート時の無敵時間がかなり短い。なので、運が悪いと手裏剣や刀の連続攻撃から逃げる前に当たり判定が復活し、権べが連続でやられてしまう。連続ミスをくらい、貴重なお小遣いをあっという間に溶かされたときは泣きたくなるほど悔しかったのも、今なお忘れられない思い出だ。
パワーアップと得点稼ぎも面白いが、ここにもワナが……
各ステージのマップ上には、小判以外にもいろいろなアイテムが出現する。巻物系のアイテムは、権べがパワーアップする効果があり、特に一定時間移動スピードがアップする青色の巻物と、分身して無敵になる赤色の巻物がありがたかった(※ただし、白色の巻物はボーナス得点が入るだけでパワーアップの効果はない)。
また緑色の巻物を取ると、権べの装備がカマから竹ヤリに変わる。竹ヤリは正面(上方向)しか攻撃できず、カマに比べてリーチがかなり短くなるが、移動スピードがアップする効果もあったので、敵の攻撃から逃げるときにはとても便利だった記憶がある。
なお、後に発売されたファミコン版では、竹ヤリを装備すると逆に敵が倒しにくくなり、勢い余って自ら敵に体当たりするミスを誘発しやすいこともあり、後にクソゲーの烙印を押された感がある。だが、ことアーケード版に関しては、筆者はそのような悪い印象をまったく持たなかったことを、この機会に書き留めておく。
緑色の巻物を取ると、権べが竹ヤリを装備する
写真の赤色の巻物は、権べが分身して一定時間無敵になる効果がある
得点稼ぎなどの要素も、なかなかどうして面白かった。
たまに出現する千両箱は、取ると5000点のボーナス得点がもらえるが、腰元と同様にしばらくの間動けなくなるため、敵にやられるリスクが伴う。いつだったのかは忘れてしまったが、権べが千両箱を取って喜んでいる間にやられてガックリしたことも何度かあったように記憶している。
ステージ2などに出現する鍵を拾い、牢屋から捕虜のお百姓さんを救出すると1UPするのもありがたく、オニギリを取ったうえでステージをクリアすると、仙人が投げたオニギリをキャッチして遊ぶボーナスゲームが遊べるのも何だかおかしかった。ごくまれに出現するお代官様は、カマで倒すことはできないが、捕まえると即ステージクリアとなり、1万点の高得点が加算される最高のボーナスキャラクター。無理してお代官様を追い掛けるあまり、忍者などの敵に何度もやられて痛い目に遭ったが、捕まえたときはすこぶる快感だった。
2010年には、本作をアレンジしたPS3用ソフト「いっき おんらいん」が、2023年にはPC(Steam)用の「いっき団結」が配信され、特に80年代を知るオールドファンを驚かせたが、元祖「いっき」もハムスターの「アーケードアーカイブス」の1タイトルとして、Nintendo SwitchとPS4向けに現在も配信しているので手軽に遊ぶことができる。
今も昔も、類似作品はおそらくないであろう、世にも珍しい百姓一揆アクションならではの妙味を、この機会にぜひ体験していただきたい。
□Switch版「アーケード アーカイブス いっき」のストアページ
□PS4版「アーケード アーカイブス いっき」のストアページ
【【いっき おんらいん】公式トレーラー映像】
※2022年11月28日11時に販売終了
【公式いっき団結プロモーションMovie】
※Switch版も2024年4月18日に発売
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