1990年7月20日にテクモ(現:コーエーテクモゲームス)が発売したファミリーコンピュータ用ソフト「キャプテン翼II スーパーストライカー」が、本日で35周年を迎えた。
本作は、1988年に発売されて人気を博した、高橋陽一のマンガを原作とするシミュレーション形式のサッカーゲーム「キャプテン翼」の続編にあたる。主人公の大空翼君をはじめ、日向小次郎、岬太郎、カール・ハインツ・シュナイダー君など、原作でもおなじみのキャラクターはもちろん、本作オリジナルのキャラクターも多数登場。プレイヤーは、ストーリーに沿って登場する自チームの選手たちを操り、試合を勝ち抜いて各大会に優勝することを目指し、ワールドユース大会で全日本を優勝に導くとエンディングを迎える。
以下、筆者が夢中になって遊んでいた当時の記憶を頼りに、本作の特徴と面白さなどを改めて振り返ってみた。
オリジナルストーリーと、新たに追加された必殺技の数々に狂喜乱舞
今となってはすっかり忘れてしまったが、筆者が本作を知ったきっかけは、おそらく「ファミ通」など専門誌に掲載された新作紹介の記事だったと思う。前作の「キャプテン翼」を気に入っていたこともあり、続編が発売されると知って大いに喜んだ。しかし、当時の筆者はソフトを買うお金を持っていなかったので、本作を初めてプレイしたのは、発売してからしばらく後、おそらく1990年の秋頃に、学校のサークルの後輩から借りたソフトだったと記憶している。
攻撃時は、ボールホルダーを操作してドリブルでボールを運んだり、コマンドを起動するとパス、シュートなどを選択したりする基本ルールは前作とほぼ同じだったので、すぐに慣れることができた。前作では味方の足元にしかパスを出せなかったが、本作では任意の場所にパスが出せるようになり、敵陣の空いたスペースを突く面白さが新たに加わったこともあり、ソフトを借りたその日から夢中になって遊んだ。
翼君の得意技「ドライブシュート」をはじめ、日向君の「タイガーショット」や「ごういんなドリブル」など、選手ごとに個性あふれる必殺技が使える面白さも、そのまま継承されていた。ゲームを進めていくと、やがて「ドライブシュート」を破られた翼君が、新たに「ドライブオーバーヘッド」を編み出したり、コーチのロベルト本郷のアドバイスをもとに、さらに強力なシュート「サイクロン」を開発するなど、「スーパーストライカー」へと成長する姿が描かれていたのも実に楽しかった。
筆者が本作にハマった最大の理由は、前述の新必殺技を編み出すシーンをはじめ、原作には存在しないオリジナルストーリーが展開され、未知なる体験ができたことに尽きる。
最初の舞台は、翼君がプロ選手になる夢を叶えるためにやって来たブラジルで、プレイヤーは翼君が所属するサンパウロFCユースを率いてリオカップ優勝を目指す。プロサッカークラブ(のユース年代)を率いて遊べるだけでもハンパないワクワク感だったのに、大会の途中で「ドライブシュート」を破られた翼君が、前述したように「ドライブオーバーヘッド」を開発したり、決勝のフラメンゴ戦では「ぶんしんドリブル」「ミラージュシュート」を繰り出す、新たなライバルのカルロス君が登場したりするなど、どの試合も楽しくてしかたがなかった。
リオカップに優勝すると、今度は日本国内の全国高校サッカー選手権へと舞台が変わる。プレイヤーが操作するのは南葛高校で、国見学院ほか武蔵医大付属、富良野などと対戦し、決勝では日向君らを擁する東邦学園との対決が待っている。翼君ではなく、その親友の岬君がキャプテンを務める「翼君のいない南葛」を率いるのも新鮮な体験だった。
筆者は両大会の決勝戦で何度も負けまくり、準決勝からの再チャレンジを何度も強いられた。だが前作と同様に、負けても繰り返し遊び続けて選手たちのレベルをアップさせれば、やがて余裕で勝てるようになる親切設計も継承されていたので「ありがたいなあ……」と思ったことを今でもよく覚えている。
俺たちの「全日本」が敵チームに! まさかのサプライズ展開に大感動
高校選手権に優勝すると、プレイヤーが率いるチームは再びサンパウロFCとなり、ジャパンカップに参戦する。ここでは凱旋帰国を果たした翼君が、何と自らが不在の全日本(日本ユース代表)と最終戦で激突する。敵となった全日本は実に手強く、ここでも何度も負かされたが、岬君や石崎君などと対決するまさかの展開には大いに驚くとともに、未知の勝負を存分に楽しむことができた。
さらに同大会には、「GSGK(グレートスーパーゴールキーパー)」こと若林君が所属する旧西ドイツのクラブ、ハンブルガーSVも参戦しており、前作では不可能だった若林君との対決が実現したのも嬉しくてしかたがなかった。
「翼君がいない全日本」が翼君、およびプレイヤーの敵として立ちはだかるストーリーにもシビれた
ハンブルガーSV戦では、あの若林君が敵として登場する
最後に戦う大会は、ユース年代の世界一を決めるワールドユース。ここでは、前作のフランス国際Jr.ユースと同様に全日本を率いて、アジア予選を経て世界の強豪チームが集まるグループリーグと決勝トーナメントを戦い抜く。本戦では、リベンジに燃えるピエール君などがいるフランス、フェルナンデス君などを擁するイタリアなど、前作にも登場したチームおよびキャラクターと再び相まみえる。
前作では、決勝戦の相手がシュナイダー君らを擁する西ドイツだったが、本作では準決勝でぶつかる。決勝戦の相手は、翼君の武者修行先でもあるブラジルで、カルロス君をはじめ以前に対戦したザガロ君、サンタマリア君、トニーニョ君など、必殺シュートの使い手がズラリとそろい、「最終戦にふさわしい強敵だなあ」と率直に思った。
だが、驚くのはまだ早かった。後半開始時に、翼君のコーチ役であるロベルト本郷が「上には上がいる」と絶賛するコインブラ君が新たに登場。コインブラ君は、ひとたびボールを持つととんでもない速さでドリブルし、ゴールに近付くと若林君や若島津君でもなかなか止められない、途中でボールが消える「マッハシュート」を放つ、そのインパクトは凄まじかった。
序盤に登場したカルロス君が、再びライバルとして立ちはだかるストーリーなのかと思いきや、さらに上回る実力を持った、言わば真のラスボスが出現する演出に狂喜し、同時にさんざん苦しめられた思い出も今なお忘れ難い。
前作と同様に、本作でも各選手の必殺シュートや、日向君や次藤君の必殺技「ごういんなドリブル」を止められなかった相手選手は、リアルのサッカーでは絶対にあり得ない勢いで体が吹っ飛ばされてしまう。ゴールが決まるとボールがネットを突き破ったり、シュートがクロスバーに当たると時折ボールが破裂したりするなどの派手な演出が、本作に引き続き登場したのもとても嬉しかった。
あくまで筆者の私見だが、試合中のBGMも前作以上に素晴らしかった。ブラジル戦、フラメンゴ戦など重要な試合で相手チームがボールを持つと、その試合専用のBGMが流れる演出も本作に継承されており、特に筆者のお気に入りだった東邦学園のBGMは、前作からサブメロディが少し変わってさらにカッコよくなり、大いに感動したことも忘れられない思い出だ。
試合中のBGM以外にも、ミーティング中のBGMが最後のブラジル戦だけ特別な曲に変わる演出や、コインブラ君ほか重要人物の登場シーンで流れる曲など、遊んでいてワクワク感が高まる曲ばかりであったことも忘れられない思い出だ。
前作に隠されていた、キックオフ前に何もボタンを押さないでしばらく放っておくと、実況アナのチャーリーが独り言をしゃべり出す裏技は本作にも用意されている。しかも、本作では独り言のバリエーションが複数あり、しゃべっている間は専用BGMをわざわざ流すこだわりぶりで、本編とは関係ないお笑いの場面でもまたまたうならされた。
選手が豪快に吹っ飛ぶ、ネットが破れる、ボールが破裂するなど、シリーズ名物の演出は何回見ても楽しい
キックオフさせずにしばらく放置すると、実況アナのチャーリーが妙なセリフをしゃべり出す裏技も本シリーズの定番だ
本作、および初代「キャプテン翼」は、どちらも長らく移植されなかったが、2018年に任天堂から発売された復刻ハード「任天堂クラシックミニ ファミリーコンピュータ 週刊少年ジャンプ創刊50周年記念バージョン」に収録され、久々に日の目を見る機会に恵まれたことは、自称本シリーズの大ファンである筆者としては実に喜ばしい出来事だった。
また、セガが2022年に発売した「メガドライブミニ2」には、1994年に発売されたメガCD版「キャプテン翼」が収録されているので、ファミコン版しか知らなかったという人は、ぜひこの機会にメガCD版もプレイしていただきたい。
(C)高橋陽一/集英社 (C)コーエーテクモゲームス