梶裕貴さん 経験がすべて生かせる「声」の道 Runway(1)

少年、英雄、王、ときには人ではない存在まで――。『進撃の巨人』の主人公エレン・イェーガーをはじめとする様々なキャラクターに「声」という命を吹き込んできた。演じたキャラクターたちは世代や国境を越え、多くの人の記憶に刻まれている。

声優を目指したのは、中学生のとき。きっかけは「声優は何を頑張っても全て自分の力になる」という言葉だった。いつ、誰が語った言葉かは忘れてしまったが、心に深く刺さったという。幼いころの夢は、サッカー選手や学者、漫画家などいろいろ。声優なら、様々な興味や経験を、役を演じる力に変えられると考えた。

2004年、19歳でデビューした。だが、プロになったからといって、仕事が約束されることはなかった。「現場に行きたくても、そのチャンスがない」。オーディションに落ちる日々が続いた。

転機が訪れたのは07年。アニメ『Over Drive』で、初主演をつかんだ。その直前には、別作品の主演オーディションで最後の2人まで残りながら落選。それだけに「誰かが見て、聞いてくれているのだと安心した」と、声優としての自信につながった。

08年からの『イナズマイレブン』では、人気キャラクター・不動明王役だけでなく、多くの役を兼務。先輩声優たちの芝居を間近で聞き、学びを深めた。そして13年、『進撃の巨人』のエレン役へ。それまでとは異なる人物像に挑み、役者としての幅を広げた。作品は世界的な人気を集め、声優としての名も広がった。

いまは、音声AI(人工知能)を活用したプロジェクト「そよぎフラクタル」に取り組む。AIによる声の無断利用が問題となる中、最新技術を遠ざけるのではなく、自らが主体となって活用する道を探る。「声」を使った新たな可能性を、切り開こうとしている。 

(佐藤克哉)

サムネ梶裕貴さん 経験がすべて生かせる「声」の道

梶裕貴(かじ・ゆうき)

 1985年生まれ。2004年に声優デビュー。代表作に『進撃の巨人』のエレン・イェーガー役や、『僕のヒーローアカデミア』の轟焦凍役など。自身の声をもとにした「そよぎフラクタル」を展開する。

Runway 未来へ飛び立つ君たちへ

Runway見出し

中高生時代は未来への「滑走路」。各界の「花道」をゆく人が4週連続で登場し、エールを送ります。

(朝日中高生新聞2026年9月27日号)

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