広尾晃の野球ビジネスモデル考察

広尾 晃

follow
著者フォロー

フォロー中

2026.5.18(月)

ドジャースの大谷翔平と山本由伸(写真:共同通信社)

 ここ2回、MLBで活躍する投手、打者について取り上げてきた。彼らがなぜ活躍できたのか、活躍できなかったのかについて、データを挙げて説明してきた。

 では、今のNPBの選手で、MLBで通用する選手、MLBに行くべき選手はだれなのか?

 何人か候補者を挙げていこう。今回は投手編だ。

成功の条件

 MLBで通用する投手の条件をいくつか挙げていこう。

●球速

 MLBの右腕先発投手のフォーシームの平均球速は94.3マイル(約151.7km/h)とされる。NPBは147km/h前後だから5km/h近い差がある。MLBで投げるためには、少なくとも93マイル(約150km/h)の速球を普通に投げることが求められる。いわゆるフォーシームだけでなく、カットボールやシンカーなどの「速球系」の変化球も93マイル程度の球速は欲しいところだ。

●制球力

 球速があっても、ストライクが取れない投手では、お話にならない。フォーシームや他の球種で安定的にストライクが取れる制球力が求められる。従来、MLBのストライクゾーンは「高め」に厳しく「横(外角)」に広く、NPBは「高め」に甘く「低め」や「横」が比較的狭いとされてきた。NPBから行く投手はストライクゾーンの違いに対応する必要があったが、今季から導入されたABS(Automated Ball-Strike System=ロボット審判)によってルールブック通りのストライクゾーンへの是正が期待されている。

●奪三振力

 ストライクゾーンにボールを投げることができる「制球力」に加えて、空振りを奪う能力が求められる。NPBで「打たせて取る」タイプで活躍してきた投手は、MLBでは通用しないことが多い。MLB打者の打球速度が速いため、打ち取ったはずの打球が安打、本塁打になるケースが多いからだ。バットにボールを当てさせない能力がなければMLBでは厳しい。

●球種

 MLBではデータ解析システム「スタットキャスト」を基幹として様々な試合データが日々蓄積され、30球団で共有されている。好投した投手の球種や投球の傾向は、相手チームに即座に分析され、攻略される。ワンパターンでの投球ではすぐに攻略される。これを考えると、6~7種類の「使える球種」が必要になる。大谷翔平や山本由伸などのエース級の投手は、毎年のように球種の割合を変えているが、新たな球種を身に着けることができる柔軟さも求められる。

●短いローテーションへの対応力

 NPBでは中6日、週1回の先発登板が一般的になっているが、MLBでは中5日、中4日での登板も珍しくない。ルーティンの調整法だけでなく、短いバージョンでの調整に対応できる柔軟性が必要だ。

 ただし、MLBでは球数は100球を大きく超えて投げることはまずない。完投、完封ではなく、6回100球、QS(6回以上投げて自責点3以下、先発投手の最低限の責任)を目指すことが前提となる。

●球数の少なさ

 これはNPB、MLB共通だが、1イニング当たりの球数が多い投手は長いイニングを投げることができない。プロ野球では「1イニング15球以下」が目標とされる。奪三振が多い投手は「打たせて取る投手」よりも球数が嵩む傾向にあるが、1イニング15球は重要な目安になる。

 こうした条件を前提に、今季のNPBの代表的な投手のデータを見ていこう。球速や球種はNPB+が発表したデータによる。

WACOCA: People, Life, Style.