取材&テキスト:平賀哲雄|ライブ写真:小杉歩

 豊作と言われる2026年春アニメの中でも一際異彩を放っている作品と、その物語を音楽で深く色濃く劇的に引き立てているアーティストに注目が集まっている。魔法使いに憧れる少女・ココを主人公としたファンタジー作品『とんがり帽子のアトリエ』と、そのエンディングテーマ「ただ美しい呪い」「夜に浮かぶ」「光り」を担当する謎多き女性シンガーソングライター・Nakamura Hak(ナカムラハク)。

ただ美しい呪いが 無邪気に光りさえ千切る情景を──

 『とんがり帽子のアトリエ』の原作は、白浜鴎による講談社『月刊モーニングtwo』にて連載中の人気マンガで、2018年の「このマンガがすごい!」オトコ編で6位を記録。「マンガ大賞」や「講談社漫画賞」にもノミネートされ、全国書店員が選んだおすすめコミックの一般部門では1位を記録した。また、海外での評価も非常に高く、アメリカ、フランス、韓国、スペインの様々なアワードで幾多数多の賞を受賞してきた。

 そのアニメ版が今年の4月より放送開始されると、あまりに美しい映像のクオリティに加え、魔法使い見習いの女の子たちの奮闘劇というポップな題材ながら、主人公が無邪気さゆえに起こしてしまった残酷な事件をはじめ、人を救う為の魔法がいとも簡単に人を不幸にしてしまう可能性もあるという、リアリティのある設定と衝撃的なストーリーでもって、世界中のアニメファンの中で一気に注目を集めることになった。そして、そのエンディングに流れるNakamura Hakの楽曲たちも物語や登場人物の心情との親和性の高さ、痛みを感じさせるほどの世界観や歌唱表現力でもって絶賛されている。

【TOKYO NODE × maximum10 presents Nakamura Hak - Plugless Live】
▲Nakamura Hak(ライブ写真:小杉歩)

 “中村「 」____無名”=Nakamura Hakは、歌とアコースティックギターのみで録音された数曲をもって、この春にデビューした新人シンガーソングライターだ。リリースした音源はすべて、修正、編集、一切なし。プロフィールには「終わりの手前に、彼女の音楽はある。」と記されている。このコンセプトからして只者ではない空気を漂わせていたが、アニメ『とんがり帽子のアトリエ』のエンディングテーマとして流れてきた「ただ美しい呪い」で、彼女の音楽と歌声を初めて耳にしたときの衝撃は凄まじかった。(※なお、一発録りの無修正・無編集という録音スタイルのため、アニメバージョン音源も、フル尺音源からの切り抜きではなく、それ専用に新たに録音した別音源となっている。)

▲「ただ美しい呪い」Music Video(Anime ver.)

 「ただ美しい呪いが 無邪気に光りさえ千切る情景を ただ愛おしい呪いで すべてを一間に奪って失ってしまうなら 1秒だって、永遠に 君に絶望が滲むのを見たくない」──と、主人公がその無邪気さゆえに最愛の母を石化してしまう絶望的なシーンともシンクロするフレーズ。それをアコースティックギターの音色だけを頼りに、暗闇の中で歌い叫ぶように響かせるその声は、Nakamura Hak自身の中にも潜む愛と絶望を剥き出しで表現してしまっているようにも感じられ、一晩中その衝撃の余韻が消えなかったことを憶えている。

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