2026年3月28日(土)、29日(日)に東京ビッグサイトで開催された「AnimeJapan 2026」。国内外から約15万6,000人が来場し、130を超えるブースや多彩なステージイベントで、アニメ・IP業界の“今”を体感できる2日間となりました。
アニメ!アニメ!では今回、株式会社テレビ朝日 コンテンツ編成局 ビジネスソリューション本部 アニメ・IP推進部 部長の小野 仁さん(以下、小野)にインタビュー。テレビ朝日が描くこれからのアニメ戦略や、地上波・配信・海外を横断する展開について伺いました。
『ドラえもん』『クレヨンしんちゃん』といった国民的作品のDNAを受け継ぎながら、次代に向けて新たなアニメづくりにも挑むテレビ朝日。その“長く愛されるIPを育てる”という想いに迫ります。
『ドラえもん』『クレヨンしんちゃん』の心を受け継いで。“未来の名作”を育てるテレ朝の挑戦
『あかね噺』AnimeJapan 2026
――「AnimeJapan 2026」でのテレビ朝日の出展内容についてご説明いただけますか。
小野 テレビ朝日は、今年の4月以降の放送作品を中心にブースを展開しました。 目玉は、4月放送が始まる『あかね噺』のゾーンですね。 週刊少年ジャンプで連載中の大人気マンガのアニメ化になります。落語を題材にした世界観を再現し、来場者が体感できるようなエリアになっています。ショートアニメ『コウペンちゃん』や、先日初めてのテレビアニメ化を発表させていただいた『しろたん』の展示も好評です。南棟の関連イベント『ファミリーアニメフェスタ』でも、TVerと共同で『ドラえもん』のスペシャルブースを出展していまして、子どもから大人まで楽しめる出展内容になっています。
『あかね噺』AnimeJapan 2026
――テレビ朝日のアニメ放送・制作の特徴について、教えてください。
小野 この数年は「あらゆるターゲットにアニメをお届けしたい」と想いを込めて、放送枠を含めたラインナップの強化を行ってきました。
ご存知の通り、『ドラえもん』は約45年、『クレヨンしんちゃん』は約35年と、二世代、三世代にわたるファンがいるコンテンツとして世界中で愛されていまして、これがテレビ朝日のアニメ事業のベースになっています。こうしたキッズ・ファミリーコンテンツを引き続き活性化していくと共に、2020年から新たなアニメ枠を設けて、ヤングアダルト層に向けた作品の放送制作をスタートしました。現在は全国ネットで3枠の深夜アニメ放送枠を展開しています。そこに、昨年から『コウペンちゃん』のような、ライト層に対してもリーチする『キャラクターアニメ』も手がけるようになりまして、今年度にかけて伸ばしていこうと意気込んでいます。
ひとことで「テレビ朝日のアニメといえばこれだ」と表現するのは難しいのですが、強いて言うならば…テレビ朝日のラインナップはプロデューサーたちで決めています。なので、テレ朝の色は、各プロデューサーたちの色になっています。そのなか、自分も含めて多くのプロデューサーが、先ほども話に出た長寿アニメシリーズを担当してきています。だからこそ、新たに制作するアニメやキャラクターに関しても「長く愛されるIPになってくれるように、一緒になって育てていきたい」という、DNAのようなものがあるのではないかと思っています。テレビ朝日のアニメ作品ラインナップの中に、それを感じてもらえたらうれしく思います。
――多くの長寿シリーズがある一方で、「IMAnimation」枠などでは新作にも意欲的ですが、それは新旧で対比するものではなく、新作から長寿シリーズへ連綿とつながっているということですね。
小野 もちろんそうです。長寿シリーズと、新しく立ち上げた、1クールでひとまず完結するアニメでは、具体的な制作の仕方は大きく違うかもしれませんが、我々は、まず「この作品が、できるだけ長く愛されるにはどうすればいいか」ということを自然と考えますね。もちろん、すべてがその通りにはいきませんが。
長寿シリーズは通年、同じチーム・プロデューサー・制作会社で、家族のような一体感をもって制作しているので、そこが、テレビも映画も温かい作品にできる秘訣かなと思っています。一方で、新作アニメは毎回新しい仲間と新しいチャレンジをしていく作り方になりますし、「ゴールをどう迎えるか」を考えながら作るので、アドレナリンの出し方が違うということを強く感じているところです。 それに、新しいアニメを作り続けるには、プロデューサーをはじめ多くのスタッフが必要になってきます。積極的に採用活動をしていますので、この記事を読んでいる方の中からも、新たにテレ朝グループの仲間として加わってもらえるとありがたいですね。
落語で世界を魅了する 『あかね噺』NYプレミアに込めた、伝統と挑戦のこころ
『あかね噺』渋谷駅周辺
『あかね噺』渋谷駅周辺
――テレビ朝日のアニメ放送・制作において、デジタル配信を意識した取り組みなどはありますか?
小野 そうですね。 テレビ朝日ですと、やはりABEMAとのタッグが特徴的かと思います。単純なSVOD ではなく、リニア配信もあるので、比較的地上波放送に近いというか、同じように“特定の時間帯に視聴者を盛り上げる”性質のあるメディアですよね。そのABEMAがパートナーにいるということは本当に心強いですし、多くのIPで色々と相談に乗っていただける大切な相手として、コミュニケーションを重視しています。例えば『あかね噺』はこれから渋谷センター街や渋谷駅周辺でビジュアル掲出をする(~4月5日)のですが、これもABEMAのオフィスが渋谷にあることで大きな取り組みができていますので。
映画『ドラえもん 新・のび太海底鬼岩城』AnimeJapan 2026
――アニメ放送・制作において、アニメ・IPの海外展開を意識した取り組みなどはありますか?
小野 最近はどのIPでも海外展開を意識した取り組みをしています。ビジネス的な取り組みは当然として、何よりも「そのアニメを楽しんでもらえる環境をどう作っていくか」に取り組んでいければと考えています。長寿シリーズは世界中への展開ももう数十年になりますし、特に『ドラえもん』は持続的に海外のファンへ直接的にアプローチするような展開を行ってきています。
3月27日(金)から東京ドリームパークで開催されている展覧会『100%ドラえもん&フレンズ in 東京』は、2024年に香港からスタートして、上海、バンコク、武漢、台北と巡回し、各国・各エリアのファンと一緒に盛り上がった展覧会が、アジアをぐるりと回って日本で凱旋してきた……というものなんです。メディア、特にテレビ局の中で、IPを興行も含めてここまで海外のキッズ・ファミリー層にリーチしながら展開している例はあまりないのではないかと思いますし、テレビ朝日だけではなく、国内の関係者の皆様も、海外各エリアで手伝ってくれたパートナーも含めたこれまでの歴史の賜物です。これを大事にしながら、パートナーのみなさんと新しいチャレンジもできればと考えていますね。
また『あかね噺』は、もともとの日本の伝統芸能である落語をテーマにしたマンガのアニメ化なので、この魅力を海外のファンにも理解してもらえるようにお披露目の舞台を作りたいと考えまして。4月1日にニューヨークで落語家 桂三輝(さんしゃいん)さんの英語での落語パフォーマンスを交えてワールドプレミア上映会を行いました。我々はメディア企業でありますので、作るのはもちろんですが、どんなテーマの作品であっても、観てくれる方のスタイルを大事にしながら届けることをやっていきたいですね。
企業の枠を超え、みんなで世界とつながる日本発アニメIPの“共創型海外展開”を目指して
『コウペンちゃん』 AnimeJapan 2026
――アニメ放送・配信を軸とするIPビジネス業界は今後どのように推移していくと考えていますか?
小野 事業面においては引き続き「海外へアニメ・IPをどう広めていくか?それを国内のクリエイターや事業者へどう還元させていくか?」をさまざまなパートナーと手を組みながら考えていくことがポイントになると考えています。傾向としては、より現地で直接的に事業やコミットメントを増やして、深めていかなければと。
「AnimeJapan 2026」のように、大きなアニメ事業社や、テレビ局、スタジオ、グッズメーカーなど規模の異なる企業が一堂に会し、同じ熱量で業界を盛り上げているのは本当に素晴らしい形です。ただ、海外展開を直接行える企業は限られていると思います。大企業だけでなく中小規模の企業も含め、日本の高い創作力を海外でも共有し続けられる。そんな環境づくりが今後さらに重要だと思います。
また、テレビアニメは、やはり放送と配信のハイブリッド展開が基本線だと思っています。 放送の同時性によるお祭り感みたいなものはやっぱり特有のものだと思いますし、作品を知らない層に対するリーチ力という意味では、地上波に勝るものはないと思います。IPを次のステージへ広げていくためには、放送と配信をどんなバランス・配分でやっていくかが、引き続き重要な役割を持つのではないでしょうか。
ーースピードが求められる時代の中で、テレビ朝日が大切にしている“アニメづくりの根っこ”とは何でしょうか?
小野 特別なことではありませんが、よりプロデューサーの情熱が大事になっているのではないでしょうか。アニメに限らず、メディア環境が劇的に変化していて、その中であらゆる種類のエンタメの消費スピードも劇的に速くなっています。そんな中でアニメというエンタメを選んでもらい、戦略的・持続的に事業として、どのように成立させていくのか考える…本当に難しい課題だと感じています。
アニメ制作過程ではコストや時間といった制限などを含めて、放送するまでには様々な困難があります。これらの困難に立ち向かうには、熱量がとても大事です。情熱を持ちながら、大胆に、でもいつも謙虚に。クリエイターやスタジオ、そして委員会の皆様と一緒に乗り越えて、作品を紡いでいくことが、変わらず大事だと思います。
今も昔も「情熱」を持ってなどは相変わらずですが、多様化の時代にアニメのプロデューサーは考えなくちゃいけないことが何倍も昔より増えていて、これをしっかり全うするのは、生半可な気持ちではできません。これは、「テレビ朝日はそれができている」というよりも、「そうなりたい」という思いも込めてというところですね。
長寿シリーズの想いを次世代に託す。テレ朝アニメが描く継承と進化
『天幕のジャードゥーガル』 『コウペンちゃん』AnimeJapan 2026
――その中で、テレビ朝日が描く2026年以降のアニメ放送・配信戦略とは?
小野 まずはキッズ・ファミリー向けアニメの更なる成長です。ドラえもん・クレヨンしんちゃんは先人たちから受け継いだバトンを未来へしっかり続けていく。という強い想いがあります。これがテレビ朝日のアニメ事業のベースだと思っております。もちろんさらに成長させたうえで、世界的にもまだ届けられていないエリアがありますし。
そして、『あかね噺』はもちろん、『天幕のジャードゥーガル』といった作品をどんどん提供してまいります。新作深夜アニメ枠のテレ朝の進出は、先ほど申し上げたとおり2020年以降と業界の中ではかなり後発となっているなか、可能な限りIPを増やしていきたいと思っています。
テレビシリーズだけではなく、映画や配信専用コンテンツ、グローバル用コンテンツ、ショートアニメ、SNS動画など環境にあわせて様々な形態でアニメを展開していきたいと思っております。
そのためにも、これまで以上にパートナーの皆様、クリエイターの皆様との輪を広げて、一緒にチャレンジしていきたいですね。
――最後に読者へ向けてメッセージをいただけますか
小野 少しでも面白いものを皆様にお届けできるよう、アニメが大好きなスタッフ一同、頑張っております。今後も、彩り豊かなラインナップをご用意しております。楽しみにしてください。
【インタビュイープロフィール】
株式会社テレビ朝日 ビジネスソリューション本部
コンテンツ編成局 アニメ・IP推進部 部長 小野 仁さん
■TVアニメ『あかね噺』

<スタッフ>
原作:末永裕樹・馬上鷹将(集英社「週刊少年ジャンプ」連載)
監督:渡辺 歩
副監督:播摩 優
シリーズ構成:土屋理敬
キャラクターデザイン・総作画監督:田中紀衣
サブキャラクターデザイン・総作画監督:新田靖成
総作画監督:香川 久
衣装デザイン:島沢ノリコ
プロップデザイン:岩永悦宜
美術設定:多田周平
美術:纓田拓海
色彩設計:合田沙織
撮影監督:中村雄太
編集:廣瀬清志
音響監督:小沼則義
音楽:井筒昭雄
落語監修:林家木久彦
アニメーション制作:ゼクシズ
<キャスト>
桜咲朱音:永瀬アンナ
練磨家からし:江口拓也
高良木ひかる:高橋李依
阿良川魁生:塩野瑛久
阿良川志ん太(桜咲徹):福山 潤
阿良川まいける:島崎信長(崎は「たつさき」)
阿良川こぐま:小林千晃
阿良川享二:阿座上洋平
阿良川ぐりこ:山下誠一郎
阿良川志ぐま:てらそままさき
阿良川一生:大塚明夫
<主題歌>
オープニング主題歌:桑田佳祐「人誑し / ひとたらし」(タイシタレーベル / ビクターエンタテインメント)
エンディング主題歌:桑田佳祐「AKANE On My Mind~饅頭こわい」(タイシタレーベル / ビクターエンタテインメント)
『あかね噺』 (C)末永裕樹・馬上鷹将/集英社・「あかね噺」製作委員会
『映画ドラえもん 新・のび太海底鬼岩城』 (C)藤子プロ・小学館・テレビ朝日・シンエイ・ADK 2026
『天幕のジャードゥーガル』 (C)トマトスープ(秋田書店)/天幕のジャードゥーガル製作委員会
『コウペンちゃん』 (C)るるてあ/TVアニメ『コウペンちゃん』製作委員会
『しろたん』 (C) CREATIVE YOKO/TVアニメ『しろたん』製作委員会

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