小説から入ったオタクへの第一歩

――3作品を挙げてもらいましたが、時系列順に話を聞かせてください。まず『SEED』ですが、当時の矢野さんは中学生くらいですね。
矢野 はい。ただ、リアルタイムでテレビ放送を見ていたわけではなくて、じつはアニメよりも先に『SEED』の小説から入ったんです。

――それは珍しいですね。
矢野 中学に入って初めてできた友達が、全5巻の小説版を貸してくれたんです。それまで小説ってほとんど読んだことがなかったので「小説かぁ……しかもガンダム?」と思いました。でも、その友達ともっと仲よくなりたかったし、その子が楽しいと思うことを共有したいという一心で読み始めて。今思うと、それが私のオタクへの第一歩でしたね。

――読んでみていかがでしたか?
矢野 面白かったです。ですが、どんな攻撃をしているのかがなかなか想像しにくくて。たとえば「何ミリのバルカン砲が……」みたいに書いてあっても、そもそもバルカン砲がどんなものなのかわからない。ただ、挿絵があったので、それに助けられました。なので、私の場合、キラ(・ヤマト)やアスラン(・ザラ)のビジュアルは、小説のイラストで最初にインプットされました。

――その後、アニメを見たんですね。
矢野 はい、少し経ってから友達の家に遊びに行って、録画してあったものを一緒に一気見したんです。そこで初めて「あ、バルカン砲ってこういう武器だったんだ!」とか、文章を読んで想像するしかなかったいろいろなシーンが絵としてストレートに描かれていて、感動しました。アニメーションの面白さや表現の伝わりやすさに衝撃を受けた作品ですね。それをきっかけに、どんどん他のアニメを見るようになっていきました。

鬱展開に「ぞくぞくした」中学生時代

――『SEED』は戦争の話ですから、キャラクターが死んだり、鬱々とした展開もありますよね。中学生の矢野さんは、そのあたりはどう感じていましたか?
矢野 それがですね、すごくぞくぞくしたんです(笑)。中学生くらいの多感な時期って、そういったドロドロしたものだったり、自分の周りにはない空気感に触れることが、大人に近づいているような気がして。主人公がどんどん不遇になっていく展開も「かわいそうだけど、でもぞくぞくする」と思って楽しんでいました(笑)。

――ちょっとSっ気があるんですか?(笑)
矢野 (笑)。いえいえ、リアルに共感するというよりは、ファンタジーやエンタメとして捉えていたので「ギリギリで生きていってほしいな」という感じで楽しんでいたんだと思います。同じ頃に『ひぐらしのなく頃に』にもハマっていましたから、ちょっとダークな作品にのめり込んでいた時期だったんです。

――好きなキャラクターはいましたか?
矢野 『機動戦士ガンダムSEED DESTINY(以下、DESTINY)』になっちゃいますけど、アウル・ニーダとかシン・アスカのような、やんちゃなキャラが好きでした。でも、特定の誰かが好きというよりは、作品全体が好きで「箱推し」に近い感じでしたね。

――当時、『SEED』のキャラクターを描いたりしましたか?
矢野 描いていましたね。私は小学生の頃からずっと女の子の絵ばかりを描いていたんです。でも、『SEED』にハマったときは男性キャラも描いてみようかなって一時期チャレンジしたんですけど、気づけばラクス・クラインとか、女の子ばかり描くようになっていました。

――『SEED』は好きだけど、男性キャラが好きというわけではないんですね。
矢野 男性キャラで推しはいなかったですね。メカがかっこよかったのと、あとはやっぱり女性キャラが可愛らしくて好きでした。長い髪の子が好きなので、いちばん好きなのはラクスで、あとはマリュー・ラミアスも好きでしたね。ただ、それは大人の恋愛模様とかではなく、「マリュー=三石琴乃さん」というところにすごくハマってしまって、年上のお姉さんとしてかっこいいなと憧れていました。

時を経て再会した『FREEDOM』

――2024年に公開された劇場版『機動戦士ガンダムSEED FREEDOM(以下、FREEDOM)』は見ましたか?
矢野 見ました! しかも、先ほど話した小説を貸してくれたお友達と一緒に見に行ったんですよ。

――それはエモいですね!
矢野 そうですよね。「中学生のときに見ていたアニメの続きが、この歳になって見られるなんて!」って。アニメ業界に入ってからは、なかなか純粋にはアニメを楽しめなくなっていたんですけど、そのときばかりは完全に中学時代に戻った感覚があって、もう最高でした。

――大人になったキラたちを見て、どんなことを感じましたか?
矢野 中学生のときに見ていたキラはすごく子供っぽかったのに、『FREEDOM』のキラは精神的にだいぶ大人になっているじゃないですか。映画を見ているときは中学生の感覚に戻っていたので、そこはちょっとだけ寂しさも感じました。「ひとりだけ先に大人になりやがって」みたいな。

――映画のあとは、お友達と感想を語り合ったり?
矢野 はい。そのままスーパー銭湯のコラボに行きました。ガンダムとコラボしているお湯に浸かりながら語り合って、コラボメニューを食べながら「また鑑賞会しようね」って。今は作品にそこまでハマることがなかなかないので、本当に久しぶりに純粋な「オタ活」ができて、すごく楽しかったです。endmark

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