©末永裕樹・馬上鷹将/集英社・「あかね噺」製作委員会

学びの「あかね噺」。第3話、入門を許された朱音は兄弟子の享二から指導を受ける。だが学ぶべき”兄弟子”は彼だけではない。

 

 

あかね噺 第3話「兄弟子」

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1.母に兄弟子を見る

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母の許可も取り付け、晴れて弟子入りを許された朱音。面倒を見てくれるのは阿良川享二という品行方正な兄弟子だが、やらされることは本当に雑用ばかりだ。享二と一緒に会を開く落語家の好意で高座に上がる機会をもらい張り切るも、先日とはお客の反応が違って……?

 

見習いの「あかね噺」。第3話は志ぐま一門の兄弟子たちが登場する回だ。色男のまいけるや本の虫のこぐまなど個性派揃いだが、今回は副題通り、彼らに留まらない”兄弟子”たちの物語であったように思う。最初に注目したいのは兄弟子たちの登場する前──朱音の入門にあたってのやりとりである。

 

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朱音が落語家になるための最初のハードル、それは本来、母である真幸からの許可のはずであった。なにせ彼女には夫・阿良川志ん太が無理やり落語をやめさせられた過去がある。娘まで落語家を目指すと聞けば猛反対するのが自然だし、だから志ぐまも内心冷や汗をかいていたのだが──ことは意外なほどあっけなく進む。真幸は志ぐまが朱音に稽古をつけていたと知っており、進路についても反対しなかったのだ。

 

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真幸は言う。落語家なんてやってほしくないが、言い出したら聞かないのは自分も同様の血筋だからよく分かっている、と。親の反対を押し切って美容師になった彼女はすなわち、朱音にとって生き方の先輩でもあった。そして志ぐまは、彼女が稽古を見守っていてくれ、また志ん太が「志ぐま師匠なら何も心配いらない」と言ってくれていた事実に──自分は弟子一人守ってやれなかったのに──朱音を育てる者としての先輩の姿を見る。この”先輩”を落語界でなんと呼ぶかは明白だろう。そう、兄弟子(・・・)だ。

 

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「不肖 阿良川志ぐま、全身全霊をもってこの娘を立派な落語家に育て上げることを誓います」。志ぐまが席を離れ真幸に向けたお辞儀は、自分ではまだ及びもつかない兄弟子へ自然に抱いた敬意の現れである。朱音自身もまた、この関係性を大いに学ばねばならない。

 

2.見えない兄弟子たち

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入門許可を巡る第3話のやりとりはすなわち、社会的立場を超えた兄弟子の発見である。ならば当然、朱音が学ぶべき”兄弟子”も落語家だけとは限らない。面倒を見てくれる兄弟子・阿良川享二の指示で朱音が働くことになる居酒屋「海」の店主、御来屋も同様だ。

 

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「人にウケたきゃまずは相手を受け入れる」。落語が独りよがりだと指摘された朱音にとって、相手のことを考える必要のある接客業が学びの場所になるのは理に適っている。だが同時に忘れてはいけないのは、彼の接客術が落語仕込みであったことだろう。もちろん、彼は別に落語家だったわけではない。ただかつて見た志ぐまの落語に感銘を受け、同じように客とタイミングを合わせられないか真似てみただけ……けれど自分に足りないものを先んじて学んでいたのなら、それだけで朱音にとって彼は”兄弟子”たり得る。

 

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朱音は落語の”気働き”を接客業で学ぶのだと頭で分かっていてもどこか両者を区別してしまっていたが、本当はそこに壁などありはしなかった。「失敗を笑い話にできるのが落語のいいところでしょ」と励ました彼は素人が本職に落語を語ってしまったと恐縮するが、そんな言葉が出てきたのは御来屋の中に落語の精神が確かに生きている証なのだろう。だから彼の話にぐっと来た朱音もまた、言葉が通じず困っていたお客相手に自然と落語の技能を生かした接客術が出てくる。落語をするんだと意識するのでなく、あくまでも相手の欲するところを考えた結果として現れてくる。”気働き”とはその領域に至って初めて利かせられるものなのだろう。

 

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この第3話、兄弟子として朱音を導いてくれたのは享二だけではない。進むべき道を示してくれる先達、その全てが朱音の”見えない兄弟子”なのだ。

 

感想

以上、あかね噺のアニメ第3話レビューでした。前半と繋げることで深みが出る回だったな、と思います。志ぐま師匠は自身が人情噺みたいな人だなあ。さてさて、落語家への道を歩み始めた朱音の次なる一歩は。

 

 

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