
東映アニメーション<4816>は、本日10月29日、2027年3月期から2031年3月期を対象とする中期経営計画「VISION2030」を発表した。計画は10年先を見据えたグローバル成長の“助走期間”と位置づけられ、2031年3月期に売上高2000億円、営業利益500億円を目指す。2026年3月期は売上高880億円、営業利益260億円を計画しており、かなり意欲的な成長計画だ。さらに10年後には「世界に冠たる東映アニメーションブランド」を確立し、売上5000億円規模の企業基盤構築を視野に入れる。
成長はオーガニックな事業拡大を軸としつつ、M&Aなどのインオーガニック施策にも積極的に取り組む方針だ。
■4つの成長戦略エンジン
中計の柱は「スタジオ」「IP」「地域」「顧客接点」の4領域に整理している。
【スタジオ:世界水準の製作体制を構築】
グローバル規模での製作体制強化を進め、2031年までに製作力を約1.5倍に拡充。国内外に複数の新拠点を設け、数百人規模の人材を採用する。また、オリジナル作品の創出とデジタル領域の再編を推進し、世界が認める「次世代アニメーション拠点」として技術力と育成体制を磨き上げる。
【IP:収益源泉の世界強化】
「全世界IP化」「成長・育成IP戦略」「国内・海外創出」「ライブラリ活用」を軸に、5年間で約700億円を投資。うち300億円をグローバルIP、175億円を成長・育成IPに充てる。新規IP創出数は海外25本、国内15本と、過去5年間の約3倍を計画。北米・中国・欧州など主要市場を中心に、インドや中東、アフリカなど新興地域への展開も進める。
【地域:海外展開の加速】
海外売上比率60%、現地化率30%を目指し、10年で「第二・第三の収益柱」を育成する。約200億円を投じて東南アジア・南アジア・中東など6地域に新規進出し、現地スタッフを約300名規模に拡大。中東ではドバイ拠点の開設を計画し、サウジアラビアの「Qiddiya」では世界初の『ドラゴンボール』テーマパーク建設も進行中だ。
【顧客接点:国内基盤を強化し、海外展開を拡大】
国内でのEC・イベント事業を再構築し、収益性の高い事業モデルへと転換するほか、海外ではパーク事業、ストア、越境EC、次世代メディア展開に挑む。約190億円を投資し、国内外での接点拡大とブランド価値向上を目指す。
■財務戦略:健全性と投資・還元のバランスを確保
自己資本比率70%以上、ROE15%以上を維持しつつ、株主還元にも注力。配当性向40%以上、総還元性向50%を目標とする。
中計期間で約2750億円の営業キャッシュ・フローを見込み、そのうち株主還元に770億円、人材・作品・スタジオ拡充に1090億円、海外・顧客開発に390億円、M&Aなどに500億円を充当する。2000億円規模の戦略投資(スタジオ開発240億円、IP・作品700億円、海外200億円、顧客開発190億円ほか)は「世界挑戦の第一歩」と位置づけられている。
■事業基盤と人材戦略
「挑戦と共創」を生む組織づくりを掲げ、採用・報酬制度の強化やガバナンス体制の整備を進める。また、グローバル展開における環境配慮や雇用創出にも注力し、特に中東の新産業分野での人材育成や社会貢献を目指す。
■KPIと数値目標
中計の主要KPIは以下の通り。
・売上高:2000億円
・営業利益:500億円
・ROE:15%以上
・総還元性向:50%目途(配当性向40%以上)
・自己資本比率:70%以上
・戦略投資:2000億円(うちインオーガニック500億円)
売上高2000億円の内訳は以下の通り。
【事業別】
・版権事業:980億円
・映像製作・販売:700億円
・商品販売:270億円
・その他:50億円
東映アニメーションはこの中期経営計画を通じ、「世界に冠たるアニメーションブランド」として持続的に成長する企業像を打ち立てる考えだ。
