TVアニメ『ONE PIECE』の放送25周年を記念して2024年10月に放送された『ONE PIECE FAN LETTER』。7月30日にBlu-rayとDVDが発売になるこの作品を、まるごと1冊で紹介する『ONE PIECE magazine 別冊 Focus on “ONE PIECE FAN LETTER”』(集英社)が登場した。これが凄い。ストーリーやキャラクターの紹介と演じたキャストへのインタビューだけでもファンには嬉しい上に、アニメがどのようにして作られているかを制作スタッフの言葉や豊富な図版から学べる1冊だからだ。
TVアニメ『#ONEPIECE』25周年記念作品
「ONE PIECE FAN LETTER」を
1冊まるごと特集!6月4日(水)発売
ONE PIECE magazine 別冊
Focus on 〝ONE PIECE FAN LETTER〟表紙&収録内容を紹介!
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— ONE PIECE.com(ワンピース) (@OPcom_info) May 26, 2025
『ONE PIECE』世界にいる普通の人たちの日常
モンキー・D・ルフィと麦わらの一味による大冒険を描く『ONE PIECE』シリーズにあって、尾田栄一郎の漫画には登場しないエピソードが描かれているのが大崎知仁の『ONE PIECE novel 麦わらストーリーズ』(集英社)だ。普通の人たちの日常が短編の連作として綴られたこの本を元に、『ONE PIECE FAN LETTER』は作られた。
シャボンディ諸島に暮らしていて、麦わらの一味のナミに強い憧れを抱いている少女がナミにファンレターを渡そうとするメインストーリーの中に、同じ海兵になっていながら愚直で出世もままならない兄と、世渡り上手の弟の複雑な関係や、無骨な顔をしながらトニートニー・チョッパーが大好きな海軍本部中佐、ソウルキングことブルックの大ファンという書店のアルバイト女性らの物語を交錯させて、麦わらの一味に様々な思いを抱いている人たちが大勢いることを見せていく。
結果として、麦わらの一味の強い影響力が浮かび上がってくるという味わい深いストーリーを持つこの企画が、どのように決まっていったかがガイドブック『ONE PIECE magazine 別冊 Focus on “ONE PIECE FAN LETTER”』で紹介されている。鍵となったのは、監督で絵コンテや演出、脚本協力も手がけた䂖谷恵、絵コンテと脚本協力、そしてキャラクターデザインも手がけた森佳祐、脚本の豊田百香の3人だ。
ガイドブックの鼎談によれば、東映アニメーションで同期入社だった3人で以前から企画として錬っていたところに、ラインプロデューサーからTVアニメ25周年企画の話が来て本格的に始動したものだという。TVシリーズの新作放送がいったん止まり、「魚人島編」の再編集版が放送されることになって、そこに繋がる話としてシャボンディ諸島が舞台のエピソードがハマると考え、「会に行ける航海士(一日限定)に会いに言ってきた!」を中心にした。
小説では少年だった主人公を少女に変えたのは、恋愛感情抜きの純粋な憧れからファンレターを渡すという目に見える行動に向かう少女を軸にしたストーリーにしたかったから。原作と映像化の間で時に生まれるギャップが問題になることもあるが、この作品では集英社の『ONE PIECE』担当から打開策として示されたもの。良いものにしたいと誰もが考えていることが伺える話だ。
そこから、ガイドブックは「アイディア出し」「箱書き」「脚本」「絵コンテ」といった流れで、ストーリーを詰めていく様子が紹介されている。脚本では、少女がウソップと出会って言葉を交わすシーンで、始めて『ONE PIECE』に関わる豊田がウソップらしさを出せているかを心配したり、何縞も重ねて調整していったりしたことが紹介されていている。
