【デジタルFW取材】「ディオール」が2020-2021年秋冬オートクチュール・コレクションで見せたのは森を舞台にした完璧なるファンタジーでした。物語の案内役は、トランクを担いだ2人のポーターです。彼らは森の中で妖精に出会うと、中から小さなトルソーを取り出しプレゼントしてゆきます。トルソーが着ているのは、サイズこそ小さいものの完璧に作られたオートクチュールドレス。受け取った妖精たちは喜び、そして……。どうぞ後は映像で見てください!

パリで見てきた「ディオール」のオートクチュールのショーは、それこそファンタジーの世界でした。ロダン美術館の会場に到着し(時にはレースの仮面を着用したりしながら)、席に着き、ショーを見て会場を出る。その一連の時間は、子どものころに絵本を読んでその世界に没入した時間に似ていました。「ディオール」のオートクチュールは大人のファンタジーなのです。イタリア人映画監督マッテオ・ガローネ(Matteo Garrone)による映像美の世界は、自宅にいながら「ディオール」ファンタジーに没入できるという意味でショーに代わる役割を立派に果たしたと思います。

それができるのは、小さな人形用の服を仕立てるアトリエの技があるからなのですが。今回のコレクションの起点は第2次世界大戦中にフランスで行われた、人形に服を着せた展覧会からヒントを得たそうです。戦時中という困難な中でも人々に夢を提供しようとしたその試みに、自分たちのオートクチュールの仕事を重ねるマリア・グラツィア・キウリ(Maria Grazia Chiuri)の姿勢に共感します。

ただ、見ていて途中から気になったのが、妖精役のモデルが全員白人であるという点。ダイバーシティーを重んじる「ディオール」のショーにはいつもさまざまな人種のモデルが登場しますが、今回は違いました。神話の世界をモチーフにしており、忠実に表現しているのでしょうし、当然メゾン内での議論を経ての選択でしょうが、無意識に見ていても「違和感」に覚えるのが今の時代です。

「ディオール」が公開したショートフィルムとルックは @wwd_jp のプロフィールのリンクから

3〜4枚目、PHOTOS : LESLIE MOQUIN / COURTESY OF DIOR (c) FAIRCHILD PUBLISHING, LLC
5〜6枚目、PHOTOS : DOMINIQUE MAITRE / WWD (c) FAIRCHILD PUBLISHING, LLC

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