【自宅でエディター私物/#10/ERIK HOGLUNDのキャンドルホルダー/編集吉崎】在宅勤務を続けるUOMOの編集者たち。愛用する私物を自宅から紹介!ーー 「呼吸する色の不思議を見ていたら『火よ』と貴方は教えてくれる」とは、歌人の穂村 弘による短歌。歌集『ラインマーカーズ』に収蔵されている。刊行は2003年。集英社に入社してちょうど1年経ったくらいだろうか。入社時は少女コミック誌志望だったがあいにく配属されることはなかった。そんな自分も今や40歳。その間、穂村さんとも仕事で何度かご一緒させていただく機会に恵まれた。今の世の状況含め、人生は何が起こるかわからない。

エリック・ホグラン(1932~1998)はスウェーデンを代表するガラス作家。BODA社(ガラス工房)にデザイナーとして入った後に数多くの作品を残した。三枚目の写真の灰皿(自分はマッチの燃えさし入れにしてる)のように、動物や女性の顔などのプリミティブなモチーフをデザインに取り入れたオブジェやボトルも有名だが、キャンドルホルダーも代表作のひとつ。表参道にある「エレファント」(@elephant_tokyo)で存在を知ったが、吹きガラスの技法により成形された玉ねぎのようなフォルムに目を奪われた。かわいい。

キャンドルホルダーにはもちろんキャンドルが必要だ。家の中で火を灯す、なんて習慣は持ち合わせていなかったが、その柔らかで味わい深い静かな余韻に驚く(ロウソク自体はなんてことない無印良品のものなのに)。冒頭の歌に触れた当時、それが何か密やかでロマンチックな暖かさの立ちのぼる恋人たちの情景を詠んだものであろうことは推察されたが、いまひとつ実感としてピンとこなかった。自分にとって身近な「火」とは、小さい頃に郷里で行われていた「どんと焼き」のかがり火以外なく、それも、参加したら焼いた芋と餅が食えるという意味合いのものでしかなかったから。そこへ「呼吸する色の不思議」って言われても……。でも今ならわかる。当時この機微がわかっていたら少女マンガへ配属されていただろうか? ただそうしたらこうしてエリック・ホグランのキャンドルホルダーに出会うことはなく、「呼吸する色の不思議」もわからないままだったかも。本当に人生って何が起こるかわからない。不思議だ。

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