冬であった。
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KATARI独奏会-聖域-
◆公演日:2022年4月2日(土)
◆チケット抽選受付ページ:https://t.livepocket.jp/e/katari0402
◆最速抽選先行受付期間:2月12日(土)~2月23日(水)23時59分まで
◆会場:神奈川芸術劇場ホール https://www.kaat.jp/access
◆開場 / 開演:17:00 / 18:00
◆チケット料金
台本付きプレミアシート ¥20,000
(※最優先入場、1F客席最前ブロック席を予定しております)
通常シート ¥6,800
◆詳細掲載FANBOX
https://katari.fanbox.cc/posts/3285523
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We are KATARI, the musical artist duo of Shinichiro Kamio and Takehiro Mamiya.
KATARI Twitter https://twitter.com/KATARI0803
KATARI Pixiv FANBOX https://katari.fanbox.cc/
MEMBER SHINICHIRO KAMIO(神尾晋一郎) https://twitter.com/s_kamio113
MEMBER TAKEHIRO MAMIYA 間宮丈祐 https://twitter.com/yupeyupe
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曲名:AS1-S(三十歳/坂口安吾)
編纂:神尾晋一郎
作曲:間宮丈裕/ DJ’TEKINA//SOMETHING a.k.a ゆよゆっぺ
朗読及び歌唱:神尾晋一郎、間宮丈裕
映像:神宮司 https://twitter.com/jgj05
引用元、出典
三十歳 坂口安吾
https://www.aozora.gr.jp/cards/001095/files/42835_27732.html
【詩】
坂口安吾
三十歳
冬であった。
あるいは、冬になろうとするころであった。
私の三十歳の十一月末か十二月の始めごろ。
あのころのことは、殆ど記憶に残っていない。
二十七歳の追憶のところで書いておいたが、私はこのことに就ては、忘れようと努力した長い年月があったのである。
そして、その努力がもはや不要になったのは、あの人の訃報が訪れた時であった。
私は始めてあの人のこと、あのころのことを思いだしてみようとしたが、その時はもう、みんな忘れて、とりとめのない断片だけがあるばかり、今もなお、首尾一貫したものがない。
私たちはすでに肉体以上のものを与え合っていた。
肉体を拒否するイワレは何もない。
肉体から先のものを与え合い、肉体以後の憎しみや蔑みがすぐ始っていたのだ。
当時を追憶して私が思うことは、私はあれほどの狂気のような恋をした。
然し、恋愛とは狂気なものではあるが、純粋なものではない、ということに就てだ。
狂気とか、狂人という、いわば一つを思いつめた世界も、それを純一に思いつめたせいではなく、思いつめ方に複雑で不純な歪みがあり、その歪みが結局、狂気の特質ではないかと私は思ったほどである。
つまり、人間を狂気にするものは、人間の不純さであるかも知れぬ、というワケになろう。
何か私が色魔で、現にあなたをタブラカシつつあるように、私自身に思わせたりしたが、それはつまり私が役者でなかったせいで、あらゆる余裕がなかったせいに外ならない。
然し、それがあなたに与えた打撃は、ひどかったに相違ない。
あなたは、私に、最も大きな辱しめを受け、卑しめられていると思ったであろう。
あなたはすでに大人ではあったが、私のそれが、私が役者でないせいで、余裕のないせいであるということを見破るほどの大人ではなかった。
あなたも、恋の技術家ではなかったのである。
私たちはすでに肉体以上のものを与え合っていた。肉体を拒否するイワレは何もない。
肉体から先のものを与え合い、肉体以後の憎しみや蔑みがすぐ始っていたのだ。
私たちは、慾情的でもあった。
二人の心はあまりに易々と肉体を許し合うに相違なく、それを欲し、それのみを願ってすらいた。
それを見抜き合ってもいた。
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