赤い着物

著者:横光 利一 読み手:松岡 初子 時間:15分30秒

村の点燈夫は雨の中を帰っていった。火の点いた献灯の光りの下で、梨の花が雨に打たれていた。

灸は闇の中を眺めていた。点燈夫の雨合羽の襞が遠くへきらと光りながら消えていった。

「今夜はひどい雨になりますよ。お気をおつけ遊ばして。」

灸の母はそう客にいってお辞儀をした。

「そうでしょうね。では、どうもいろいろ。」

客はまた旅へ出ていった。

灸は雨が降ると悲しかった。向うの山が雲の中に隠れてしまう。路の上には水が溜った。河は激しい音を立てて濁り出す。枯木は山の方から流れて来る。

「雨、こんこん降るなよ。

屋根の虫が鳴くぞよ。」

灸は柱に頬をつけて歌を唄い出した・・・

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