@落語#天下一#優木まおみ「天下一品騒動記」「まおみマレーシア行」
「天下一品騒動記」
……あたしゃね、昔から「味は記憶だ」って言ってんの。つまり、うまいかまずいかなんてぇのは、舌よりも、脳みそと心で決めるもんで。ところが最近はどうだい、「記憶よりインスタ映え」ってね、ラーメン一杯にライト当てて写真撮ってんのに、スープの味は聞いちゃいねぇ。
あたしゃね、久々にあのラーメン屋、行ったんだ。「天下一品」。天一。あの、ドロッドロのスープね。スープってぇか、あれもう“飲めるセメント”だね。レンゲ立てたら抜けねぇ。あれ、建設現場に持ってったら壁塗れるよ。ま、味はね、変わってなかった。あれがすごいんだ。味はそのまんま、客は減ってるって、逆ドラえもんのポケットみてぇなもんで。
でね、行ったら貼り紙がしてあってね、「6月末で閉店します」って。びっくりしたよ。いや、あたしゃね、勝手に店が消えるなんて、吉原の花魁でもやらねぇよ。天下一品が「静かなる夜逃げ」。これで東京の10店舗、パッと消える。去年もだよ? 二年連続でこれやってんの。まるで“ラーメン界の甲子園常連校”みてぇな成績で。
「どうしてだろう」ってみんな言うけど、そりゃアンタ、フランチャイズってやつだよ。あれね、ようは“ノリ弁当方式”なんだ。フランチャイズ本部が「のり」、店舗が「白米」。ご飯の上にただペロンと海苔を乗っけて、「ほら、これで一丁できあがり」って。でもね、炊き方悪かったら、弁当として成立しねぇ。
つまり、天一ってぇのは、本部が「この味を守れ!」って言って、店側が「人件費?仕入れ?うちの地代知らねぇの?」って文句言いながらやってんの。で、売り上げ下がっても、本部は「ロイヤリティはもらいますから」って涼しい顔してんだ。これはもう、ラーメンよりも“人間関係の煮込み”がドロドロしてんだよ。
ところがさ、天一ファンてのは、妙に熱い。SNSで「青春の味が……」とか言ってる。いやアンタ、去年もそんなこと言ってなかった? 「荻窪の天一が……」とか「渋谷の天一が……」って、毎年青春失ってたら、もう今ごろ魂だけが天一のどんぶりに浮いてるよ。
でもね、これが不思議なもんで、「あの味が戻ってきてくれ!」って言いながらも、みんな毎週行ってるわけじゃない。いざ閉店しますって言うと、「えっ!?行っておけばよかった」って。いや、間に合ってたよ。歩いて5分だったでしょ、あんた。ラーメンなんかより、後悔のスープが熱々だ。
しかも今はね、「家系」とか「二郎系」とか、「○○系」ばっかり。まるでラーメンが「一族経営」みてぇな顔してやってるけど、こちとら昭和の天一で育った人間は、あのスープの粘度が原点なんだよ。言ってみりゃ“ドロドロ第一世代”だね。
でもまあ、商売ってのは厳しいね。味が良くても、場所代に勝てない。お客の愛情があっても、家賃にはならない。SNSで泣いても、どんぶりは戻らない。そう考えると、ラーメンってのは「人生」そのものだ。スープをすすっても、時代の味は戻らない。
あたしもさ、最後にもう一杯、食べに行ったよ。池袋西口。相変わらず薄暗い店でね。厨房の中で、店員の兄ちゃんが「いらっしゃいませ」って言うけど、目が「また来たかよ」って言ってんの。それがいいんだよ。あれこそ“昭和のサービス精神”。気のない愛想で、心のこもったラーメンを出すってのがね。
で、帰り際、あたし思わず言っちまったよ。「また来るよ」って。そしたら兄ちゃんが「……閉店なんで」って。
……うん、そりゃそうだわな。人生も、ラーメン屋も、タイミングってもんがある。だから今日ここで言っておこう。ありがとう、天下一品。君のスープは、我が青春のセメントだ。
……ま、胃もたれはしてるけどね。
おあとがよろしいようで
2幕目
「まおみマレーシア行」
あたしの知り合いにね、筋金入りの“海外行きたい病”ってのがいましてね。まあ、いわば“逃避型ポジティブ”ってやつだ。なんでもかんでも、「日本の空気が合わない」「英語が喋れないとこの先ダメ」とか言って、気がついたら渋谷のカフェじゃなくて、クアラルンプールの屋台でナシレマ食ってるような、そういうタイプ。
で、そんな話がちょうど出てきたとこに、タレントの優木まおみさんが「マレーシアに移住します」って発表しましてね。しかも「8月から語学学校に通うために芸能活動を一時休止します」っていうんですよ。
芸能活動休むって、それはまあいいけど、インストラクターとセラピストも休むってんだ。何屋だよこの人は。最終的にはなんだ? マレーシアで英語学んで、“マッサージのできるニュースキャスター”でもやるつもりかってんで。
しかも聞けばね、「母子留学」なんですって。パパは日本で仕事、ママは子供2人連れて異国の地。こりゃまるで、現代版『奥様は魔女』の出張版だね。「ダーリン、今日から私たちマレーシアだから♡」って、旦那さんもきっと帰宅してビックリよ。冷蔵庫の中には「ナシレマ」と「日本の味・納豆」の2択。
でもまおみさん、偉いのはそこから。「ずっとやりたかった英語の勉強をしたい」「語学学校に毎日通う」ってんですよ。で、8月から11月くらいまではお仕事休むって。これ、聞いたらね、あたしの知り合いの芸人がこう言ってましたよ。「俺もさ、8月から10月まで、パチンコ通うから営業休むわ」って。……いやそれお前、勉強じゃなくて依存だろ。
だけどさ、この“留学する芸能人”っていうのは、昔から一定数いるんです。ほら、突然ニューヨーク行っちゃう役者とか、バリで“精神修行”するモデルとか。言い訳は大体一緒。「自分探し」か「英語」。あのね、自分探すっていうけど、見つかった奴、見たことねえよ。帰ってきてだいたい、「とりあえずタレントやります」って。……最初と一緒じゃねえか。
で、優木まおみさん、「不安はあるけど、前向きにやっていきたい」っていう。そりゃあ不安もあるでしょうよ。あんた、芸能界っていうのは、“居続けることに意味がある”って業界でさ、ちょっとでも休んだら「え、あの人まだいたの?」ってなるんだから。復帰したときに司会者に「お久しぶりですね~」なんて言われてる時点で、もう負け戦よ。
でもね、本人は本気。語学学校にも毎日通うっていうんだから大したもんよ。あたしゃそこは応援する。芸能界ってのは、行ったきり戻らない人も多いけど、戻ってきても“新ネタ”があれば勝負になる。
問題は、帰ってきてどうなるか。バラエティ番組でね、「マレーシアって実は〇〇なんですよぉ~」なんて言っても、共演者が「へぇ~」しか言わない空気だったらもう終わり。今やテレビってのは、“リアクション芸”じゃないと映らないんだから。「マレーシアでは毎朝ナシレマ食べてました」って、それだけじゃ尺が持たねぇ。
でも、まおみさんの偉いところは、「学び直し」を公言してるってことだ。今どきの芸能人ってのはね、“新しい自分を見せたい”って思いはあるんだけど、何を学ぶかが曖昧。だからといって「ヨガ習ってきました!」だけじゃ、もう無理なの。ヨガなんて、若手芸人だってやってんだから。
それにしてもね、「ママと子供だけ移住」「パパは日本で仕事」って、よく決断したよ。これ、ちょっと昔なら「単身赴任」って言われてたのが、今じゃ「母子留学」って言い方になるんだ。言葉って便利だね。中身は“家庭内別居”に近いのに、聞こえはエレガント。
で、彼女の締めのコメントがまたいいんだ。「不安はあるけど、目の前のことに集中して頑張ろうと思います」。これ、現代人全員が刺される言葉だよ。不安のない奴なんていないんだから。だけどそこに「集中して楽しむ」って加えられるのが、プロの芸能人。あたしゃ思ったね、「あ、この人はただの“マレーシア逃避”じゃねえな」って。
で、今頃はきっと、荷造りしてんだろうね。段ボールに“水着”“辞書”“子供の上履き”、そして“勇気”を詰め込んでるわけだ。
ま、まおみさんが無事マレーシアから帰ってきたら、そのときはこう言ってやりたいね。
「おかえりなさい。英語、喋れなくてもいいですよ。あなたの言葉、ちゃんと届いてますから」
なんてね。
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