「昨日の晩、鋼太郎さんが『蜷川さんは台本を持つのが嫌いな人だから、俺たち弔辞は読まずにいこう』と言ったのに、今日、鋼太郎さんが読んでいたので、僕も読ませていただきます。僕がこんなところに立って蜷川さんに何かを言うんだって。きっと『バカ小栗、お前に言われることなんて何もねーよ』と笑われちゃいますね。いろいろ考えたんですが、あまり堅苦しくても、くだけすぎても怒られそうなので、なんとなくいきます。
蜷川さん、どうします?予定していた僕との公演。嫌われて、俺も勝手に嫌って、仲直りしてもらって、やっと一緒にできると思っていたのに、あんなにしっかり握手もしたのに、約束したのに、悔しいです。蜷川さんと過ごさせて頂いた日々のことをたくさん思い出していました。なんででしょうね。輝かしい思い出の日々のはずなのに、怒られたことばっかりが出てきます。本当にお前みたいな不感症とは二度と仕事したくない。下手くそ。雰囲気。単細胞。変態。はぁー、君おじさんになったね、なんかデブじゃない?デブだよ、デブ。なぁ、りえちゃん、そう思わない?ピスタチオみたいな顔。あ、この最後のは竜也にいわれた言葉でした。もっとうまい文句もいろいろ言われたのですが、そのへんは右から左に流していたので忘れてしまいました。
先日、もう会うこともできなくなってしまった晩、いてもたってもいられなかった数人で集まり、蜷川さんとの思い出話に花を咲かせました。そのとき、『やっぱり僕らは蜷川幸雄という人間を中心にした、大きな劇団の一員だよね』という話になりました。本当にそう思います。なぜなら、それぞれが蜷川さんの優しさと気配りと、そのあとの思いやりを感じているからだと思います。僕をこの劇団に入れてくれて、『なんでみんな、小栗のかっこよさに気付かないんだろうな。大丈夫、絶対俺が伝えてやる』といって、見たこともない数々の景色に連れて行ってくれて、信じてくれて、ありがとうございました。
今、僕がこの場所にこうやって立っているのは、間違いなく蜷川さんの劇団の一員にしてもらったおかげです。まだ僕はちょっと若いので、会いにいくのは多分まだまだしばらくかかってしまうと思いますが、僕が会いにいくまでに、そっちで新しいハムレットの演出を考えておいて下さい。その日に、『だめになったな』といわれないように、僕は僕でこちらで苦しんでみようと思います。でも不安だから、時々でいいから、こっそり夢にでも叱りに来て下さい。待っています。休むのが嫌いな蜷川さんだったから、きっとゆっくりなんてしていないだろうけど、少しはゆっくり休んで下さい。僕の生意気をいつも受け止めてくれてありがとうございました。とことん踊らせてくれてありがとうございました。道を照らし続けてくれて、本当にありがとうございました。小栗旬」。

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