2013年10月、高齢者売春クラブが警視庁に摘発された。クラブの会員数男性1000名、女性350名、最高齢は88歳。まさに超高齢化社会の日本が抱える、老人の孤独死、介護問題、おひとりさま問題などの不安が反映された事件―――この事件をもとにした社会派群像劇『茶飲友達』が2023年2月に渋谷ユーロスペースほか全国順次公開となる。

 主人公、佐々木マナは高齢者専門のコールガール「茶飲友達(ティー・フレンド)」を設立。新聞の三行広告に「茶飲友達、募集。」と掲載し、集まってきた男性の元へ高齢女性を派遣するビジネスを始める。「ティー・フレンド」に在籍する通称“ティー・ガール”たちの中には、介護生活に疲れた女性、ギャンブルに依存した女性などさまざまな事情を抱える者がいた。 一方、マナのもとで「茶飲友達」を運営する若者たちもまた、出口の見えない社会の中で閉塞感を抱えて生きている。 そんなままならぬ若者や高齢者を束ねるマナは、彼らを「ファミリー」と呼び、擬似家族のような絆を育んでいくのだが……。

 高齢者の孤独に寄り添いながら自身も心に寂しさを抱え、ファミリー=“擬似家族”の中に居場所を求める主人公・マナを演じるのは、NHK連続テレビ小説『純と愛』『わろてんか』や映画『弥生、三月–君を愛した30年』、舞台『森 フォレ』、『湊横濱荒狗挽歌〜新粧、三人吉三。』、『陰陽師 生成り姫』、『ロビー・ヒーロー』、『レオポルトシュタット』など幅広く活躍する演技派女優、岡本玲。

 監督は、長編デビュー作『燦燦-さんさん-』がモントリオール世界映画祭2014年に正式招待、2021年公開の『ソワレ』のヒットが記憶に新しい外山文治。“擬似家族”と化した高齢者専用売春クラブの姿を通して、現代社会に横たわる閉塞感や、高齢者・若者どちらにも共通する「寂しさ」を人情味たっぷりに描き出す。

 また本作は、ENBUゼミナール「シネマプロジェクト」の記念すべき10作目となる作品。本プロジェクトは、社会現象にもなった上田慎一郎監督『カメラを止めるな!』をはじめ、今泉力哉監督作『退屈な日々にさようならを』、二ノ宮隆太郎監督作『お嬢ちゃん』など、ワークショップからキャスティングされた魅力的な俳優たちと共に、商業映画とは一線を画す刺激的な映画を世に届けてきた。本作のワークショップには応募総数677人の中から選ばれた33人のキャストが参加(その年齢差57歳!)。撮影前に行われたクラウドファンディングでは、制作応援サポーター767人、目標額をはるかに超える800万円超が集まるなど、すでにインディーズ映画ファンの間では注目を集めている。

■ストーリー
 佐々木マナ(29)をリーダーとする若者たちは、時代を先読みした高齢者専門のコールガール「茶飲友達(ティー・フレンド)」を設立。 新聞の三行広告に「茶飲友達、募集。」と掲載し、集まってきた男達のもとへ高齢女性を派遣し利益を得ていた。 マナは「世の中の保健室を作りたい。誰でも逃げ込める場所を」という思いから、一人でも多くの孤独な老人を救いたいと理想を掲げて、シニア世代の影の部分のセーフティネットの役割を担うようになっていく。

 「ティー・フレンド」には多くの働き手、通称「ティー・ガール」が在籍している。 介護生活に疲れた女性、ギャンブルに依存する女性、いつまでもチヤホヤされたい女性、最期を楽しんで終わりたいと願う女性……。 そんな海千山千のティー・ガールたちとの時間をさまざまな事情を抱えた男性顧客が買っていく。

 一方、「茶飲友達」を運営する若者達もまた、出口の見えない社会のなかで閉塞感を抱えて生きていた。親との絆を信じられない女性、両親の事業失敗をきっかけに挑戦することに臆病な男性、妊娠しても子どもが産めない環境に苦しむ女性。 そんなままならぬ若者や高齢者を、マナは一つに束ねて「ファミリー」と呼んで大事にしていく。

 ある日、一本の電話が鳴る。それは高齢者施設に住む老人から「茶飲友達が欲しい」という救いを求める連絡であった―――。

監督・脚本:外山文治(「ソワレ」「燦燦」「海辺の途中」「春なれや」「わさび」「此の岸のこと」)
キャスト:
岡本玲
磯西真喜 瀧マキ 岬ミレホ 長島悠子 百元夏繪 クイン加藤 海江田眞弓 楠部知子
海沼未羽 中山求一郎 アサヌマ理紗 鈴木武 佐野弘樹 光永聖 中村莉久 牧亮佑
渡辺哲

製作:ENBUゼミナール
2022年/シネマスコープ/5.1ch/135分
(C)2022茶飲友達フィルムパートナーズ 

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